回避性恋愛論

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本稿は読者投稿コーナーに応募してくれた方からの原稿です。


回避性人格障害、というのを聞いた事があるでしょうか。今回は、それと恋愛の話。

 

■回避性人格障害について

回避性パーソナリティ障害という表現をする場合や、表記上では英称を略してAPDと略す事もあります。今回は以下APDと表記させていただきます。

APDについて簡単に説明をしておきましょう。

APDとは、他人と何らかの関わりを持つ対人関係や社会活動を回避しようとする特徴を持つ性格行動パターンを指します。他人に自尊心を傷つけられるかもしれないという強烈な不安を常に抱えており、自分に対しては評価が低く、他人に対しては警戒心が強いのが特徴です。

そのため、他人や社会と関わりたいという欲求を持ちながらも、自分が否定・拒絶されるかもしれないと思って不安になり、対人関係を避ける行動を取ります。APDの人は自分に好意を持っていることが確信できる人としか付き合おうとしないので、必然的に社交関係の幅が狭くなってしまいます。

ぶっちゃけ、診断が難しい障害です。日本人には増えていると言われます。

メンタルヘルスに広く言えることでもあるかもしれませんが、明確な基準はなく、医師やカウンセラーとの対話程度しか判断要素がありません。

治療法としても、カウンセリングなどが中心の対症的なものです。不安症や鬱傾向などが併発して見られる場合には鬱病と同様の投薬を行うこともあります。

 

私の場合も、鬱症状から心療内科へ赴いた際に、「APD傾向かも」と言われて知りました。

そう言われるまでは、自己否定的な思考なのは性格の問題だと思っていたので、それに診断名が付きうるものだとは目からウロコでした。

後から調べたら当てはまる部分は多かったです。友達が作れない(表面上は取り繕えてもプライベートな付き合いができない、連絡先はあまり使わなければ全部消去)、進学や就職も上を目指そうとしない(いざ受かっても理由を捏ね回してワンランク下を選んだ)、話題にされるのが怖い(写真とかもできるだけ残したくない)、両親と関係が良くなかった、などなど。

現在は治療として抗鬱剤を飲んでいますが、APDも鬱も比較的軽度なのでなんとか学生をしていられる状態です。

 

■回避性人格障害と恋愛

APD持ちが真っ当に恋愛をするのは、なかなか困難です。

なんてったって、自分が大嫌いで、それなのにめっちゃ大事だから。

好きな人に告白するなんて、相手に迷惑だし振られたら自分が傷つく。誰かに告白されても、自分なんかより素敵な人がいるのにうまくいくわけがないと思う。つまり恋愛が始まらないのですね。もし恋人関係になったとしても、信頼できないと判断した場合、すぐに関係を絶つ可能性も大きいです。

恋愛ができない。なら恋愛しないでおくしかない。

はずなのだけれど。

やっかいな事に承認欲求はいっちょまえに備えているのです。本当は愛されたい。恋愛というのは『認められる』カタチとしては非常にわかりやすいものだから、欲しくなってしまうんだと思います。

 

ここからは私の恋愛体験談も話してみましょうか。

21歳の春。私は死にたいという気持ちをぼんやり抱えながら過ごしていました。今思えばこのあたりから鬱の兆候は出ているのですが、当時は病院には行くほど深刻ではありませんでした。

学校帰りに駅をうろついていた私は声をかけられます。

「かわいいスカートだね!!!」

ナンパでした。死にたいを抱えながら、死ねよと思ったのを覚えています。

その男は非常にしつこく、鬱の出始めで無気力な私は相手の話を聞き流していましたが、やがてLINEの連絡先を交換だけしてくれたら帰らせてくれると言うので流れでふるふるしました。あとでブロックすればいいと思っていました。

ブロックしようと思っていた矢先、「今日はありがとう、話聞いてくれて嬉しかった」「本当かわいい。めっちゃ好み」「また会いたい」と私に好意的なメッセージがぽんぽんきたのです。ナンパだから、所詮体目当てだということは理解していましたし、気弱だと判断したからぐいぐい迫ったのかと推察しますが、あからさまに褒めていただける体験がなかったので衝撃的でした。

よく知らない人間にちやほやされるというのは大変に甘美でした。特にAPD持ちの私にとっては、都合のいい甘さだったんです。

よく知らない人間だから、嫌われようが恥をかこうがダメだと思ったら関係を断てばいいのです。LINEの登録名は苗字のみだったので、こちらの素性はフルネームすら知られていませんでした。

回避の道を確実に残した上で、承認欲求を満たす機会を得た私は、端的にいうと数日後にはそいつとヤりました。

そいつとはしばらく関係が続きました。いちゃいちゃもしてましたが、まぁ体からの関係なのでやがて終わりました。終わってからの方が問題でした。

 

私はちやほやされる甘美さから抜け出せず、出会い系サイトで偽名を用いて遊ぶようになりました。そこは若い女だというだけで可愛がられる素敵な世界でした。個人的には出会い系はメンヘラ率高いと思っていますが、まぁその辺は、立ったまま寝る様の記事でも読んでください。

さて。あれ?恋愛体験とかぬかしておきながらこれは恋愛じゃないだろ、と思ったあなたが正解です。裏切りましたすみません。

先にも言った通り、APD持ちには真っ当な恋愛は困難だったんです。恋愛はお互いを尊重して支え合える関係のはずが、この場合は承認欲求と下心のぶつけ合いでしかありません。恋愛体験談ではないので訂正しよう、恋愛ごっこ体験談です。もっと直接に言えば異性体験ですかね。

 

■回避性人格障害者がお付き合いを目指して考えたこと

ではAPDな人は恋愛ができないのでしょうか?

私的にはそんなことないと思っています、そう思いたいです。

APDの治療法として一般に言われるのは、カウンセリングや周囲の他人と継続的に関係を持ちながら、少しずつ自己肯定感を高めていく手法です。他人と接することが苦手なので、他人と関わろうとするのに時間がかかりますが、行動に移せた自分を認めてあげることで自信が持てるようになるようです。コミュニケーションを図る場面において、自分の行動を意識的に振り返って評価する必要があります。

これを踏まえれば、ひどい恋愛ごっこを経て良かったと思うことが一つだけあります。それは、新しい関係の中で他人と触れ合う機会を得られていたことです。

ナンパという形でこそありましたが、他人と関わる機会は私の人間関係観を刺激しました。その中で、自分はなんか歪んでるのかもと認識できたことが進歩だったと思います。

また、後から思えばですが、他人に触れてしかも否定されなかったという視点で見れば、成功体験を積んだとも取れるような気がします。まぁでも出会い系を使いすぎるのはお勧めしませんよ。やりすぎると人間不信を進行させます。私がそうでした。

また、状況にもよるのですが、APDについて相手に理解してもらうことが助けになる場合もあります。自分はちょっと人を信頼するのに時間がかかるタイプだと伝えておく程度でもいいのではないかと思います。

 

そして、最後に言いたいこと。

『人格障害』なんて言い方をすると大げさに聞こえますが、性格の特徴だって思えばいいんだな~というのが自覚してしばらくつきあったAPDへの印象です。精神障害だ…って思うと余計落ち込んだりイライラしたりしますし、自分は特殊だと思いこんでしまうのは良くないです。メンヘラかまってちゃんが爆誕しかねません。

恋愛論を話すつもりが、結局コミュニケーション論になっているだって?恋愛ってコミュニケーションの最たるものだと私は思っているから、これでいいんですよ!

みんな幸せになろう。ここまで読んでくれてありがとうございました。


【投稿者】
有藤 さん

【プロフィール】
かろうじて大学生、軽度メンヘラ。デザインを勉強中です。




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