精神障害者の厳しい就職事情 民間企業に就職できるのはわずか「1.7%」




今から約2年後の2018年4月1日から、精神障害者の雇用が義務化されます。制度の施行を前に、現在の精神障害者の雇用はどうなっているのか調べてみました。

調査の結果、精神障害者の雇用状況にまつわるあまりにも厳しい現実が見えてきます。

今回は、

・国の定める「精神障害者」とは何か
・精神障害者はどれくらいいるのか

といった基本的な部分から

・雇用されている精神障害者はどれくらいいるのか
・現状の問題点

までの「精神障害者雇用の現在」についてお話しします。

メンタルヘルスにお悩みの皆様だけでなく、健常者の方々にも是非読んでいただきたいです。

 

■「精神障害者」とは

そもそも「精神障害者」とはどのような人たちを指すのでしょうか。

厚生労働省による「精神障害者保健福祉手帳」の対象者の定義がわかりやすいので、以下に引用します(強調は筆者によるものです)。

>>何らかの精神疾患(てんかん、発達障害などを含みます)により、長期にわたり日常生活又は社会生活への制約がある方を対象としています。対象となるのは全ての精神疾患で、次のようなものが含まれます。

* 統合失調症
* うつ病、そううつ病などの気分障害
* てんかん
* 薬物やアルコールによる急性中毒又はその依存症
* 高次脳機能障害
* 発達障害(自閉症、学習障害、注意欠陥多動性障害等)
* その他の精神疾患(ストレス関連障害等)

引用:http://www.mhlw.go.jp/kokoro/support/3_06notebook.html

以上です。

精神障害者は、これら全ての精神疾患(てんかん、発達障害などを含む)のうちのどれか或いは複数を持っている人が対象ですから、かなりの幅をもった集団であると言えます。

 

■精神障害者ってどれくらいいるの?

それでは、精神障害者はどれくらいいるのでしょうか。

内閣府が発表している『平成28年版 障害者白書』によれば、精神障害者は392万4千人います。

1000人当たり31人とのことですから、もっと小規模に考えると100人に3人、33人に1人。そう考えると、「クラスに1人は精神障害者」といった感じの説明だとわかりやすいかもしれません。

ただし、素朴に考えれば、行政の調査でも捕捉しきれない潜在的な精神障害者が一定数以上いるとみるのが妥当です。メンヘラの誰もが障害者手帳を持っているわけではありませんし、重い症状を持っているにもかかわらず医療の現場に結びつかない人たちもいます。

ですから、精神障害者は私たちが思うよりも、ずっとたくさんいる、最低でもクラスに1人以上くらいの割合で存在していると考えられます。

 

また、外来の(=入院中ではない)精神障害者で、20歳以上65歳未満の人は202.3万人います。20歳から65歳未満といえば、健常者であれば成人していてどこかに勤めている人が多い年齢層ですよね(もちろん、入院中ではないからといって皆が皆働けるわけではありません)。

精神障害者といえども、福祉の金銭的支えが不可欠な人から、通院や薬の服用を続けつつ働くことができる人まで様々です。金銭的に自立したいと考えている精神障害者も当然存在します。症状による制約や現行の雇用制度による制約さえなければ働けるのに、と思う人も多いでしょう。

 

■民間企業で雇用されている精神障害者はほんのひとつまみ

それでは実際、いま民間企業で雇用されている精神障害者はどれくらいいるのでしょうか。

平成28年の統計がまだ出ていませんので、平成27年の障害者雇用統計を見てみましょう(http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000105446.html 障害者雇用 統計 H27)。

障害者雇用統計によれば、民間で雇用されている精神障害者は34,637人です。

この数字、どう思いますか?

ここで、外来の(=入院中ではない)精神障害者で20歳〜65歳未満の人が202.3万人であることを思い出してみます。

この202.3万人の中に働ける人がどれほどいるかは未知数ですが、とにかく

・20歳〜65歳未満で入院中ではない精神障害者が202.3万人で、
・民間企業で雇用されている精神障害者は3万4637人

と、なっています。

当然、20歳未満から働き始めている・65歳以上でも働いている精神障害者もいるでしょう。また、現在雇用されているものの、会社には精神疾患等を申告していない、申告できないという人もいます。

ですからあくまでざっくりとした数字になりますが、

入院中ではない精神障害者のうち、1.7%以下しか民間企業で雇用されていない

というのが現在の状況です。

人類が皆労働すべきとは思いません。働けない事情があったり、働きたくない事情があったりします。主体的に労働をやめる人もいますし、雇用されなくても家事などの労働を毎日している人もいます。それは大前提です。

だとしても、1.7%以下ですから、100人に1人、多くても2人程度です。入院中の人も含めると、精神障害者の中でも一握りどころか、ひとつまみの人しか働けていないのが現状です。

総務省統計局によれば、国全体の2016年10月の雇用者数は5793万人です(http://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/tsuki/)。その中で精神障害者の雇用者数はわずか3万5千人弱、1500人に1人の割合であることを考えると、精神障害者が社会参画しにくい状況にあることがわかります。

これでも、精神障害者の雇用率は年々増えています。

一方で、精神障害者の法定雇用率を満たしていない企業は65.3%と半数を超えています。その中で障害者を一人も雇用していない企業は59.4%もあります。

まだまだ、精神障害者の社会参画は進んでいるとは言いづらいようです。

 

■現状の何が問題なの?

環境さえ整っていれば十分に働けるはずの精神障害者が、様々な要因のために働けないのだとしたら、そこには問題がいくつか生じると思います。

まず、経済的な問題です。
働けるかどうかは、収入の有無に直結します。これは精神障害者本人にとっては大問題です。実際、精神障害者の多くは極めて苦しい経済状況で暮らしていることが多いです。生活保護・障害基礎年金などに頼ってなんとか生活している方も多くいます。

経済的に自立して安定する人が増えれば、その分だけ福祉に必要な公費は減ります。精神障害者の中にも、環境さえ整っていれば経済的に自立したいと考える人が多く存在するのです。精神障害者が働きやすい環境を作ることは、国全体の利益の面でも大きく寄与するはずです。

 

さらに言えば、精神障害者雇用の問題は「一度転んだら二度と起き上がれない」社会の根幹でもあります。

もし明日、自分が精神疾患によって働けなくなったら。十分に休養した後、今の社会でまた働けそうですか?1.7%に入る自信がありますか?

現在健常者である人も、いつ精神障害者になるかわかりません。不慮の事故に遭ったり、犯罪に巻き込まれたり、過酷な労働環境・生活環境に置かれたりして、どんな人でも精神疾患に罹る可能性があります。

「自己管理ができていればそんな風にはならない」といった自己責任論は、医学的に間違っているだけでなく、自分自身や身近な人、家族や大切な人をも追い詰める考え方です。本当に本当に嫌な言い方ですが「明日は我が身」と思っていた方がよっぽど建設的です。

障害者も健常者も社会の構成員です。400万人いる精神障害者を「なかったこと」にはできません。どんな人でも、どんな自分になっても、せめて職を得て、人並みに暮らす機会は与えられるべきです。

その第一歩としてようやく精神障害者雇用の義務化が始まります。

次回は、精神障害者雇用義務化とは具体的にどのような制度なのかについて、当事者側・企業側双方の視点から書いていきます。

 

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【執筆者】
090 さん

【プロフィール】
会社員時代の自殺が未遂に終わり、いろんな意味で「サービスで生きてる」無職。生きてる以上、楽にやっていきたい。少しでも死にたい人のお役に立てればと思います。
Twitter:@oqo_me_shi

 


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3 件のコメント

  1. 返信

    精神障害者雇用働いているのが34,637人であり、そうでない一般就労の方は統計に含まれていないという見解で正しいでしょうか?

  2. 返信

    そもそも障害者雇用促進法において、企業に対して、雇用する労働者の2%に相当する障害者を雇用することを義務付けています(障害者雇用率制度)。
    厚労省「平成27年度民間企業における障害者の雇用状況」を見てみると、
    実雇用率が精神障害者が1.95%、知的障害者が1.88%、身体障害者が1.85%で精神障害者が
    一番多いのです。
    ですのでこの「わずか」という表現は2%を増やせという事でしょうか。
    この記事の文面のままだと「精神障害者で民間企業で働けるのは1.7%」と本当に思ってしまいます。
    一般就労で働いている方の方が多いのではないのでしょうか。

    • 返信

      あ>
      精神でクローズで働くことは、内定を勝ち取っても、ほぼ不可能です。
      障害者雇用枠で働き始めても、これだけ離職率が高いのですから。

      それに、精神障害当事者の方々の話を伺うと、「オープンで内定を勝ち取れるのは、採用人数30から50人で一人」だということです。

      2%を増やせという事でしょうか?>
      YES。その通りです。今、離職理由の最も多い理由が、精神障害 なので。

      数値ではなく、「実情」を知り、忖度を行いなさい。

      それが、社会的認知への最たる道です。

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