義務化された「ストレスチェック制度」の実施状況について、日本を代表する超大企業30社に電話取材してみた


eyecatch


2015年12月1日より、労働者のメンタルヘルス状況を把握し、社内環境を整えるための「ストレスチェック制度」が動き出しています。

ストレスチェック制度は50名以上の労働者を抱える事業者にはもれなく課せられた義務となっていますが、実際の実施状況についてはなかなか情報が出回っていません。
このたびメンヘラ.jpでは、義務化されたストレスチェックの実施状況について、TOPIX Core30の企業全てに電話取材を行いました。

 

日経TOPIX Core30企業に電凸してみた

今回の電話取材対象となった企業は”TOPIX Core30″と呼ばれる企業で、東京証券取引所の市場第一部全銘柄のうち、時価総額・流動性の特に高い30銘柄となっている企業です。事実上、国内における時価総額ベスト30の企業とも言えます。

要するにストレスチェックを実施していないとおかしい、日本を代表する大企業30社です。

電話取材では以下の質問(最大6問)をさせていただきました。

1. 労働者に対しストレスチェックを実施しましたか?
2. (1がYESの場合)ストレスチェックの実施時期はいつでしたか?
3. (1がYESの場合)ストレスチェックの受検は任意ですが、御社の労働者は何%が受検しましたか?
4. (1がYESの場合)ストレスチェックの結果、「高ストレス者」に該当した労働者は全受検者中の何%でしたか?
5. (1がYESの場合)「高ストレス者」に該当した受検者のうち、面接指導を希望した受検者は何%でしたか?
6. (1がYESの場合)医師による面接指導の他に、高ストレス者に向けて行った施策などはありますか?

 

30社中22社が取材拒否。電話を切ろうとする企業も

さて、電話取材の結果ですが、なんと全30社のうち22社が無回答でした。
そのうち受付で断られてしまったのが11社。受付を突破し担当部署(人事部等)に回していただいたにも関わらず取材拒否されてしまったのが11社でした。中には概要を話した瞬間に苛立ちをあらわにし、電話を切ろうとする担当者さんもいらっしゃいました。

義務化されているから実施しているのが当たり前なのに、「労働者に対しストレスチェックを実施しましたか?」の1問すら回答できないというのには一体どんな理由があるのでしょうか?
今回取材拒否されてしまった企業の「回答できない理由」を、社名と一緒に公開します。

受付を突破できなかった11企業(順不同)

■武田薬品工業
無回答の理由:内容に関わらずアンケートには回答不可。

■ソニー
無回答の理由:内容に関わらずアンケートには回答不可。

■日産自動車
無回答の理由:内容に関わらずアンケートには回答不可。

■東日本旅客鉄道(JR東日本)
無回答の理由:内容に関わらずアンケートには回答不可。

■東海旅客鉄道(JR東海)
無回答の理由:担当部署に電話をつなぐシステムがない。

■セブン&アイ・ホールディングス
無回答の理由:担当者不在。(いつ頃戻られますか?)分からない。

■三菱商事
無回答の理由:担当者不在。(いつ頃戻られますか?)分からない。

■三井不動産
無回答の理由:担当者不在。(いつ頃戻られますか?)分からない。

■三菱UFJフィナンシャル・グループ
無回答の理由:三菱UFJフィナンシャル・グループは持株会社なので各社(三菱東京UFJ銀行)等に任せている。
(→グループの代表企業である三菱東京UFJ銀行につないでもらうが……)担当部署の担当者の名前が分からないと電話をつなぐことができない。

■みずほフィナンシャルグループ
無回答の理由:担当部署に「そのようなアンケートには回答不可」と言われた。

■日本電信電話(NTT)
無回答の理由:担当部署がない。

受付は突破できたが取材拒否されてしまった11企業

■アステラス製薬
無回答の理由:公的機関以外からのアンケートには回答できない。

■信越化学工業
無回答の理由:電話でのアンケートには回答できない。(メールは?)メールも不可。

■三井住友フィナンシャルグループ
無回答の理由:折り返し連絡する→2週間連絡なしのため無回答と判断

■キーエンス
無回答の理由:必要であれば折り返す→2週間連絡なしのため無回答と判断

■キヤノン
無回答の理由:上司の許可が降りれば折り返し連絡する→2週間連絡なしのため無回答と判断

■東京海上ホールディングス
無回答の理由:担当者不在。(いつ頃戻られますか?)分からない。

■三菱地所
無回答の理由:担当者不在。(いつ頃戻られますか?)分からない。

■NTTドコモ
無回答の理由:担当者不在。(いつ頃戻られますか?)分からない。

■ソフトバンクグループ
無回答の理由:そのようなアンケートには回答できないと部署内で判断した。

■本田技研工業(ホンダ)
無回答の理由:そのようなアンケートには回答できないと部署内で判断した。

■トヨタ自動車
無回答の理由:メンヘラ.jpの概要やアンケート内容を部署に伝えて折り返す
→(折り返し電話にて)内容を検討した結果、回答できないと判断した。

 

もちろんしっかりストレスチェックを実施している企業もある

このように散々な結果だった電凸でしたが、以上の22社以外の8社からは回答をいただくことができました。日本を代表する大企業のストレスチェック実施状況はどのようになっているのでしょうか?
※回答いただいた企業はいずれも匿名希望のため、社名は伏せて発表します。

Q1. 労働者に対しストレスチェックを実施しましたか?
A1. はい(8社)
→この質問に答えてくれただけでも感謝しなければならない状況でした……。

Q2. ストレスチェックの実施時期はいつでしたか?
A2. 昨夏(2社)、昨年9月(1社)、昨年10月(1社)、昨年11月(1社)、通年(1社)、無回答(1社)
→回答いただけた企業では、実施時期は昨夏~昨秋にかけて集中していました。「通年」と回答した企業は子会社や孫会社も含めて1年かけてストレスチェックを実施しているとのことでした。

Q3. ストレスチェックの受検は任意ですが、御社の労働者は何%が受検しましたか?
A3. A社:98%。B社:92%。
→Q3以降を回答していただけたのは2社のみでした。9割以上の受検というとストレスチェックが浸透しているように見えますが、大企業なので絶対数でいうと未受検者の数もそれなりに多いはず……。任意受検とはいえ、お互いのために100%の受検を目指したいですね。

Q4. ストレスチェックの結果、「高ストレス者」に該当した労働者は全受検者中の何%でしたか?
A4. A社:7%。B社:9%。
→A社・B社ともに全体の1割弱が高ストレス者と認定されたそうです。1割弱と言っても、TOPIX Core30の企業は労働者数の母数が多いので、数百人単位で高ストレス者が社内に存在することになります。
ただ、高ストレス者がいること自体は決して「恥ずかしい」「隠さなければならない」ことではなく、「今回A社の方が高ストレス者の割合が少なかったから、B社よりもA社の方が良い会社だ」という単純な指標にもなり得ません。大切なのは高ストレス者が自身のメンタルヘルス状態を自覚して対策を行ったり、事業者がデータを活用して社内の環境を改善していくことです。ストレスチェックの基本は素直な気持ちを回答してもらうことです。高ストレス者が多いデータを残したくないからと言って、労働者にストレスがないかのように回答することを求めることは絶対にしないようにしましょう。

Q5. 「高ストレス者」に該当した受検者のうち、面接指導を希望した受検者は何%でしたか?
A5. A社:6%(高ストレス者中の86%) 。B社:無回答
→A社から回答を得ることができました。
高ストレス者と認定された労働者が医師の面接指導を受けるのは任意で、高ストレス者自身が申し出をする必要があります。高ストレス者の労働者にとっては、これをハードルに感じる方もいらっしゃるかもしれません。
A社では高ストレス者中の86%が面接指導の申し出を行ったそうです。これは個人的な予想よりも高い数値でした。A社の労働者のメンタルヘルスへの意識の高さと、申し出がしやすい風土が伺えます。
B社は電話取材をした時期にちょうど面接指導を行っていたそうです。まだ統計データが出ていなかったのかもしれません。

Q6. 医師による面接指導の他に、高ストレス者に向けて行った施策などはありますか?
A6. A社:常日頃の面談を行っている。ストレスチェックは制度義務化以前からも実施している
→A社はストレスチェックが義務化された2015年12月以前からもストレスチェックを実施しており、日々の面談も重視しているとのことです。
(好例として社名を公表したいと申し出たところお断りされてしまいました、残念!)
突然の電凸にもかかわらず、A社の担当者の方はすらすらと質問にお答えくださいました。自社のストレスチェックの実施状況を把握している人物が社内にいるとそれだけで安心できますね。これが日本の50名以上の労働者を抱える全ての企業の当たり前の姿になれば良いなと思います。

 

まとめ

以上、日本を代表する大企業30社のストレスチェック実施状況アンケート調査結果でした!

実施の有無のみですら回答いただけなかった企業が2/3を超えてしまったのは非常に残念なことではありますが、義務化前からストレスチェックに取り組んでいる企業もきちんとあるという結果になりました。大企業のストレスチェック実施状況が垣間見れる結果となったのではないでしょうか?

繰り返しになりますが、ストレスチェックは50名以上の労働者を抱える企業に課せられた義務です。まだ実施していない企業は必ず実施を!この制度を機に、職場のメンタルヘルス対策についての知見がより広まっていくことを願っています。

 

【ストレスチェック制度についての簡単なまとめはこちらから】
職場のメンタルヘルス対策の新たな試み「ストレスチェック制度」とは 〜実施の目的・流れ・仕組み等まとめ〜


【募集】
メンヘラ.jpでは、体験談・エッセイなどの読者投稿を募集しています。
応募はこちらから


1 件のコメント

  1. 匿名希望 返信

    産業保健分野に携わる者です。
    おそらく未回答の企業もすべてストレスチェックを実施していると思います。
    ここに挙げられている企業のなかには、制度が施行される前からすでに同様の仕組みでメンタルヘルスケアに取り組み、成果をあげているところもあります。
    産業保健分野の専門誌や学会等で企業の事例は数多く紹介されているのですが、一般的な認知度は低く、光の当たりにくい分野です。
    現場レベルでは頑張っているので、今後もこうしたテーマの認知度を高めてもらえるとありがたいです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)