好きだけどセックスはできない




はじめまして、普段は読者としていろいろと吸収させていただいています、のりみと申します。

以前おまえさんが「アセクシュアル」についての記事を投稿されており、わたしは鼻息を荒くしながら読ませていただいたのですが、今回はノンセクシュアルでバイセクシュアルであるわたしの体験談についてお話させていただきたいと思い投稿させていただきました。

おまえさんの記事をお読みいただければわかると思うのですが、バイセクシュアルというのはLGBTのBにあたり、男性・女性どちらも恋愛対象である性的指向のことです。実際、わたしの初恋(7歳くらいだった気がします)は習い事の先生で、女の人でした。幼稚園生が「先生と結婚する!」というような子どもらしいものでしたが、わたしにとってはあれが初めての恋でした。

そしてノンセクシュアルについてです。誤解されやすいのですが、アセクシュアルはそもそも人間に対して恋愛感情そのものを抱かないひとたちのことを言います。それに対しノンセクシュアルは、恋愛感情はあるが性的欲求を持たないひとたちのことを言います。

これから重たい恋愛の話をしていきますが、その前に軽く自分がバイセクシュアル、そしてノンセクシュアルだと気付いた経緯について軽くお話しさせていただこうと思います。

 

■もしかしてわたしはバイセクシュアル?

前述の通り初恋は女の人だったのですが、わたしはそれを無意識のうちに「このひとは自分と同じ女の人だから、これは恋ではない」と思い、それがまっとうな恋愛であるということから目を背けていました。と言っても悩んでいたというわけではなく、その頃はそのひとに対して抱いている自分の気持ちが恋愛であるという認識がなかったというだけです。今になって振り返って何が恐ろしいかというと、7歳の女の子にも「恋愛は異性同士でするもの」という意識が刷り込まれていたということです。社会には「恋愛は異性とすること」という固定概念がはびこっているのです。

公立の小学校から私立の女子校に進んだわたしは、そこで本格的に自分の恋愛対象にはどうやら女性が入っているらしいということを認識します。そして不思議なことに、自分が女の子を好きになるという事実は、生まれたときからずっと決まっていたのだと思えるほど、すっとわたしの中で溶けて納得できたのです。それ以来高校を卒業するまで、女の子以外は好きになりませんでした。まあこれは女子校に通っているという環境上しかたないことでしたが、つまりわたしは18歳になるまで、自分がレズビアンであると思っていたということです。

高校を卒業し、無事に大学に入学したわたしは、大学の授業で出会った男の子と仲良くなり、やがて恋仲(?)になります。この子が後述の離れられなくなった男の子なのですが、その子のことを好きだと認識した時、「あれ、わたし男の子も好きになれるんじゃん」ということにハッとさせられました。この子を好きになった経緯は今までと違っていたのですが、それはまた後に述べることにします。

 

■もしかしてわたしはノンセクシュアル?

わたしはわりと(群れるのが当たり前、みんな同じような服を着て同じようなスカートを履いてスタバのカップを持っているような)女の子と仲良くできないタイプ(女子校出身が何を言ってるんだ)で、大学でも男の子とばかり一緒にいます。当然男の子だらけの中にいると飛び交う下ネタにもよく遭遇します。わたしは全然気にしないし、むしろその下ネタの中に入って話もできるタイプなので、あたりまえにそういう行為も関係も平気なんだと思っていました。

ところがどっこい、大学に入ってから恋仲になりかけた例の男の子と付き合う付き合わないの関係性になった時、彼に「付き合うってことは俺とセックスしてもいいってことなんだよね?」と聞かれ(このタイミングでこれを聞いてくるってわりとクズなんじゃないかと今になればわかります)、恐ろしく戸惑ってしまったのです。性知識も下ネタもそこそこ頭の中に入っていましたし、自分の中にも少しの性欲は存在していましたが、それらはわたしとは別世界のこととして処理されていたので、「自分」がだれかとそういうことをするという頭が全くなかったのです。

その男の子とはそれからいろいろなことが起こっていくのですがそれは後に記すとして、わたしは両性愛者で非性愛者であるという自分の基軸がこうしてできあがっていたのです。両性愛者であると認識した時はあまり悩まず、わりとすっと受け入れられたのですが、ノンセクシュアルだと気付いた時はほんとうに悩みました。相手がいたからこそ悩みが生まれていたのですが、あの時期はつらかったです。

 

■忘れられない恋情の話

前置きが長くなりましたが、本題に入っていこうと思います。

前述の通り、女子校を卒業したわたしは、「自分はレズビアンである」という認識を持ちながら大学へと進学しました。もともと人間嫌いで友達の少ないわたしは、大学でも友達を作る気持ちがあまりなく、さらにオリエンテーション期間に体調を崩して休むという失態を犯してしまい、結果的にほんとうにお友達ができませんでした。女子ってグループができるのがほんとうに早いんですよね。女子校に6年間通っていたので、その辺のことはよく理解していました。

そのためわたしはひとり、もしくは男子数名の中に混ざって大学生活をスタートさせることとなりました。結果的には今それでとても楽しいので満足ですが、当時はわりと不安が大きかったのを覚えています。

その男の子に出会ったのは、学科関係なく実施される授業でのことでした。前回欠席したために座席指定の授業であるにも関わらず座る場所がわからず、おまけに宿題もわからなかった彼は、たまたま教室にはわたししかいなかったため、わたしに話しかけてきたのです。その授業の帰りに連絡先を聞かれ、まあ連絡先くらいならいいかと交換しました。地方出身で一人暮らしをしているという彼とは話していくうちに趣味がそこそこ合うということがわかり、次第に連絡を取る頻度が増えていきました。わたしが既読無視をして話が終わっても、気づけば彼からのラインを受信している、あるいはその逆、こういう関係が続きました。「そういえば今日連絡取ってないなあ、連絡するか」という感覚がお互いあったのだと思っていました。

だんだんと授業内でもグループのようなものができてきて、わたしと彼、それから女の子ひとりと男の子ひとりの4人で仲良くするようになり、さらにわたしと彼の距離は近くなり、夏になる頃には、あたりまえに毎日ラインをするようになっていました。

仲良くなっていくに従っていろいろな話をするようになりました。夜中に連絡を取り合うことが多かったこともあり、過去の恋愛や下ネタといった話もするようになりました。彼とそういう話をするのは別に嫌ではなかったし、この時はまだ自分がノンセクシュアルであるということを認識していなかったので、彼の過去の恋愛の話などを聞いて、その中で、彼が過去に恋愛でひどく傷ついたことがあるということを聞きました。初めて付き合った女の子に結果的にいじめられるような感じになり、自然消滅したのだそうです。

その話を聞いてから、じゃあわたしも秘密をひとつ教えようと言って、彼に自分のセクシュアリティをカミングアウトしました。彼は「俺もたまに自分がバイなんじゃないかって思うことあるから、差別とか偏見とかないよ」と受け入れてくれ、それからは好きな女の子のタイプなども、何の気も使わずに話せるようになりました。

彼とは週1の授業で顔を合わせる以外特別会ったりすることはなかったのですが、毎日ラインで会話をして、週に1度の授業で会って少し話す、という関係でした。

それからしばらく時が経って、わたしは彼の顔をうまく記憶できていないということに気がつきました。思い出そうとしても、全体の雰囲気や似ている俳優の顔しか浮かばず、ちゃんとした彼の顔を思い浮かべることができなくなってしまっていたのです。次の授業で会えば覚えるだろうと思っても、じゃあねと手を振った5秒後にはもう思い出せなくなってしまっている。

インターネットで検索したところ、「好きな人と話すときは常に瞳孔が開いているため、眩しくて顔をうまく記憶できない」という結果にたどり着きました。それと同時に、綺麗なもの、素敵なものを目にした時に「彼がここにいたら何を思うだろう」と考えるようになりました。好きなのかもしれないと考える時間もなく、好きだと気付いた瞬間にはその事実が強烈にわたしの感情の全てを揺さぶっていたのです

 

■ノンセクシュアルである私の葛藤

そうと気付いてからそう時間が経っていないうちに、わたしは頭の中にある「彼が好きだ」という気持ちを本人に伝えました。彼も驚かずに聞いてくれ、受け入れてくれたのかと思うような、でも拒否されているのかもしれないと思うような、曖昧な時間がしばらく続きました。それから、前述の「付き合うってことは俺とセックスしてもいいってことなんだよね?」という質問がなされたのです。わたしは言葉につまり、そうして自分がノンセクシュアルであることに気がつき、彼にそのままそっくりその結論を伝えたのです。今思えばその結論を伝えたことがいちばんの間違いでした。

夏の暑い日に、わたしは初めて彼の家に遊びに行きました。自認識がレズビアンであったわたしは、男一人暮らしの部屋に一人で行くと言うことの危うさをよくわかっておらず、それを後に彼から怒られるまで普通のことだと思っていました。それから、夏休みはほとんど毎日彼の家に行き、一緒に買い物に行ったり一緒にゲームをしたり一緒にご飯を作ったりしました。抱きしめられて一緒に昼寝をしたりする時間が、わたしにとって幸せな時間でした。

ところが、彼と一緒にいて困ったことがありました。わたしがノンセクシュアルであるということです。彼は自分のことをわたしの彼氏だと何度か言ってくれていたし、もちろん彼は(童貞でしたが)セックスをしたがっていたでしょう、何度かそういう空気になったこともありました。その度ごめんねと謝るわたしに、愛想を尽かしても当然です、しかしその当時もう止められないほど彼のことが好きだったわたしにはそれがとてもつらかった、でも身体を許すことは身を切られるほどつらい、わたしにはどうしたらいいのかわからなかったのです。

それから、彼の家に通うにつれて、わたしと彼の感情の比重には大きな差があるということにも気づいてしまったのです。彼はわたしのことなんて別に好きではない。わたしが部屋にいても関係なくゲームをし、友達とスカイプで会話をし、わたしの存在は(もともとそうだったのかもしれないけれど)だんだん小さなものになっていきました。仲良くなるまでは媚びを売るけど、仲良くなってしまってからは必要な時にだけ連絡を取る、彼のそのスタンスに納得がいかなかったわたしは何度かそのことで彼と言い争いをし、しかしその度にわたしが折れました。わたしはほんとうに彼のことが好きで、自分が多少哀しくても彼のそばにいたいという気持ちが働いてしまったためです。

それからは転落していくばかりでした。会うたびに哀しくてもう死のうと思うほどボロボロに傷つくくせに、しばらくするとその痛みを忘れてまた会いに行ってしまう、そういう悪循環の始まりでした。帰り道、彼の家の最寄り駅のだれもいないホームで、毎回声を上げて泣いていました。そしていちばんの問題は、彼がわたしのノンセクシュアルという指向を「性経験、性知識のないウブな女の子」だと誤解していたということです。

本番が無理なら前戯だけでも、と、わたしに触れる以外の方法で様々な性的知識(実践含む)を伝授したのです。もちろんこれは わたしの同意の上で です。わたしはどうしようもない女なので、これを断れば捨てられる、これを断れば嫌われてしまう、という恐怖がどうしても拭えませんでした。彼は一度も無理強いはしていません、逃げられないような環境を作ったこともありませんでした、全てはわたしの意志の弱さの問題でした。わたしは彼に嫌われないために、恐怖と嫌悪感をもちながら、それでも行動をしてしまったのです。

その結果、わたしはだめになりました。どんどんだめになっていくわたしを心配した友達によって彼と無理やり切り離され、もう会えないようにと連絡先も消し、彼と同じ授業にも出なくなりました。彼を失くした代わりに、わたしの手には持て余すほどの眠気と虚無感、そして寂寥感が与えられました。朝が来ても起きられない、とにかく寂しくて仕方がないのに誰にも会いたくない、授業にも行かれない、たまに授業、また週2日のバイトには行けても、帰って来ればその間の記憶がすべて消えている、気丈に振る舞えていたのかさえ覚えていない。そんな生活を1ヶ月と少し過ごしました。

大学の男友達と話したり、高校時代の友達と会ったりすることで徐々に回復しましたが、今でも時々、2週間に1度くらいのペースでそれがぶり返すことがあります。彼がわたしに残したものは大きく、今もそんなものを引きずっています。わたしはこれから先、男女かかわらずだれかと恋愛関係を築くことができるのでしょうか、もうしばらく誰とも恋仲にはなりたくないと、そんなことを毎日思います。彼との話はまだ詳しく話そうと思えばあるのですが、長くなってしまうのでまた別の機会に。

 

つらつらと体験談を書かせていただきました。ここまで読んでくださった方、ありがとうございます、心から愛と感謝を。

ひとつの恋愛が(わたしの中では終わってないし、彼の中では始まってすらないけれど)形式上、終わりました。ずっと寝てばかりいた時期から回復し、少し冷静になって頭も冷え、それまでどこかにあった感情の昂りが治まってきてゆっくり考えられるようになってから、私自身のことではなくて彼のことについて想いをはせてみることができました。彼はわたしに対して恋愛感情を抱いていたわかったけれど、彼は彼で寂しかったんだろうと思ったのです。寂しかったから、特に大切でもないわたしのことを引き寄せたのだろうな、と。でも、彼にとってわたしは絶対に必要な存在というわけではなかったから、わたしが連絡を絶った時も追いかけてこようとはしなかったのだと思うのです。

これから先、どのくらいの時間をかければ彼のことを忘れられるのか、正直まだまだ見通しも経っていないし、もしかしたらもうずっと忘れられず、奇襲をかけるようにしてやってくる虚無感たちとこれからも付き合わなければいけないのかもしれません、わたしはそれでも生きていかなければならないし、彼がわたしを必要としていないということと同様、わたしも彼を必要とせずに生きて行可なければならないのです。

拙い文章でしたが、今どうしようもない恋愛の最中にいるあなたの心に少しでも響く言葉であれば幸いです。いつかちゃんと幸せになれるといいね、あなたも、わたしも。


【投稿者】
のりみ さん

【プロフィール】
19歳 大学生。苦痛から逃れるためならどんなことでもしてしまう系。人生の中で大切にしているものは「言葉」です。
twitter : https://twitter.com/_____sorry_


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