福祉の仕事のやりがいと社会的意義 ~ある精神保健福祉士の場合~




はじめに

お世話になっております。統合失調症関連の記事を書かせていただいているヤマカワと申します。

突然ですが、メンがヘラっているときにネットを見ると「福祉」という言葉を見ることがありませんか? わかり手編集長もよく福祉について語っていらっしゃいますし、メンヘラ.jpでは自立支援医療についてなど、福祉制度についての記事もあります。

そんな風に、なんとなく見覚え聞き覚えのある「福祉」ですが、みなさんはどんなイメージをお持ちでしょうか? というか、そもそも福祉ってどんなもんなんでしょうか……。授業中先生に「じゃあ君、福祉とは何ですか?」と聞かれた時に答えられるでしょうか。正直、難しいですよね……。

ところで、私は今福祉関連の仕事をしています。そして多くの読者のみなさまと同じく、統合失調症を患っていたメンヘラでもあります。メンヘラになるまで福祉の「ふ」の字も知らなかったような私ですが、今ではこの業界でちょっとずつ働いております。今日はせっかくなので、みなさまに福祉の仕事について少し知って頂きたいと思い、書かせて頂きます。

 

福祉とは? その社会的意義について

1.つらい人を救う。

Wikipedia先生によると、こんな感じのようです。

福祉(ふくし、英: Welfare)とは、「しあわせ」や「ゆたかさ」を意味する言葉であり、すべての市民に最低限の幸福と社会的援助を提供するという理念を指す。(Wikipedia参照)

言われてみると気づくんですが、「福」も「祉」も「しあわせ」を意味する字です。「祉」はあまり馴染みのない字ですが、しめす偏(礻)は神とか祭りに関するもの、それが我々の身体に「止まる」ということで、「神の恵み。さいわい。」という意味のようです。(参考

実は上にちょっと書いた「福祉とは何か?」という質問、私が専門学校生の時に先生から振られた質問でもあります。結構おっかない先生だったのでびっくりしました。とっさに「人のしあわせ」と答えましたが、それで何となく納得して頂けました。ということで、多分福祉で大事なのは幸せなのかどうか、ということかと思います。

ただ、ここでいう幸せが「億万長者になって美女(美男)を従えてウハウハな生活をする」というものではなさそうなんですよね。上記の定義後半で「最低限の幸福」とか言うあたり、やっぱりあまりぜいたくな感じではなさそうです。

これは実際の仕事を振り返ってもそうですね。病院や支援機関で働く福祉屋さんの仕事は、だいたい以下のような感じかと思います。

・クライエントの相談に乗る
・クライエントの診察に同行、同席する
・クライエントが福祉サービスを受けるための計画を立てる
・デイケアや就労支援などのサービスや居場所の提供
・当事者の会のとりまとめ
・制度や支援機関についての普及・啓発、などなど。

もちろん他にも色々な仕事をしていますが、おおむねこんなところがメジャーかと思います。

どれも「普通の人がより幸せになる!」というよりは「つらい人をせめて普通くらいにする」というニュアンスのほうがしっくりくるものです。

 

2.色々な機関の調整役

また、福祉屋さんの特徴として「色んな人と関わることが多い」ということがあります。

たとえば、病院で働くソーシャルワーカーさん(MSWなんて呼ばれたりします)の場合。
もう10年単位とかで入院している高齢のクライエントが「退院したい……」とおっしゃったとします。でもそういうときって、お医者さんや看護師さんが「まだ難しい」と考えていることも多いのです。

そういうとき、クライエントの希望をお医者さんたちに伝えていったりするのも仕事の一つです。場合によっては自分より立場の強いお医者さんや看護師さんを強く説得することも、あるかもしれません。

いざ退院となれば、生活保護の手続きを手伝ったり、介護保険の認定調査に立ち会って調査担当の人にクライエントの普段の様子をお伝えしたり。退院後住む先を探したり。不動産屋さんやグループホームの方々と打ち合わせたり。就労を考えている場合であれば、クライエントが企業の面接を受ける時に一緒に行って隣でフォローしたりもするかもしれません。

こんな感じで、クライエントの希望をできるだけ叶えられるように頭を回転させ、頭を下げ、手足を使って動く仕事です。

 

3.政策に訴えかけたり、制度面で人を救う

もちろんメインはクライエントと関わっていくこと、周囲の人々と関わっていくことなんですが、人によっては法律とか、人権とか、そういうちょっと難しい舞台で活躍している人もいます。私の周りでこういうことをしてる人はあまりいませんが、教科書的には「マクロに働きかけるのも福祉の役割」のようです。「メンヘラを救うために支援する施設作る! そのための法律作る!」とかいう人がいれば、そういう人もこの辺に当てはまりますね。もちろんこういう舞台に立つ人は、かなり経験を積んだ歴戦の福祉屋さんです。私のようなペーペーにはまだまだ遠い世界、雲の上の人たちです。

 

福祉のやりがい

そんな福祉の業界で実際働いてみてどうか。ここからは私の感じた「福祉のやりがい」について書いていければなぁと思います。前職では全く畑違いのことをしていたのですが、自分自身メンがヘラったことをきっかけに福祉業界にジョブチェンジしました。今は結構やりがいを感じながら働けています。どんなところが楽しいか、というと。

1. 人と関わるのが楽しい。
2. 意外と頭を使うのが楽しい。
3. 周りが自分にとって「良い人」たちなので楽しい。
4. 自分の人生全てを有効活用できるのが楽しい。

と言ったところです。一つひとつ具体的に見てみたいと思います。

 

1.人と関わるのが楽しい。

就活で言う人も多いでしょう。人と関わるのが好きなので、営業を希望します! とかいうやつです。職場にもよりますが、恐らく営業よりは「深く狭い」関わり方になると思います。最初はめちゃくちゃ警戒してきたクライエントが、徐々に心を許してくれて、笑顔で挨拶してくれるときの嬉しさとか。ずっと人の輪に入れなかったクライエントが、他の人たちと一緒にレクしてたりコミュニケーションしてたりするの見た時の嬉しさとか。営業みたいな数値では表せない「自分にもたらされる感情」が、この仕事の最大の対価です。

 

2.意外と頭を使うのが楽しい。

福祉というとあんまり頭を使うイメージはないかもしれません。ですが、突き詰めると色々なことを勉強しなければならない、ということも分かってきました。

例えば生活保護や自立支援医療などの「福祉制度」や、クライエントとの信頼の築き方や関わり方などの「面接技法」について。それら「教科書で学んだこと」を、目の前で苦しんでいる人たちを救うために全力で駆使するんです。それでその人の生活が改善されて「あなたがいてくれて良かった」とか言われてみると、この感動は他の仕事じゃ得られないだろうな、と思います。綺麗にパズルはめてやって「やったぜ!」となる、みたいな。

あと、コミュ力は確実に磨かれますね。「コミュ力」と聞くと身構えるメンヘラさんが多いかもしれません。私もずっとコミュ障を自称しておりました。正直福祉職を志す時に「自分みたいなコミュ障にこんな仕事できるんかなぁ……?」と思う部分もありました。

でも、やり始めたらもうクライエントから逃げるわけには行かないわけで。色んな人と面と向かって深い話をする機会も多くあります。そうして経験を重ねていくと、不思議なものでクライエントが会話する時の傾向が何となく掴めたり、会話の行く先が少しずつ予想できたりするようになってきます。だんだん気分良く話してもらうやり方が分かってきたりもします。

慣れてくると、コミュニケーションの理論を実践できるので面白いですね。例えば色んな所で「イエスセット」っていう技法が紹介されています。相手にとにかく「はい」って言わせて気分良くさせる、みたいなやつです。知識として持ってるだけではあまり実感できなかったんですけど、実際やってみるとその効果とか、使う時のコツとか分かってきますね。同じ「はい」でも序盤は浅くゆっくり、後半になるほど深く速くする、とか自分なりに気づいたこともありますが、その辺はまた話す機会があれば、と思います。

 

3.周りが自分にとって「良い人」たちなので楽しい。

これは完全に私の個人的な話ですが。福祉業界にいる人は必ずしも「頭のいい」人たちではないかもしれません。実は今後この話もしたいと思うのですが、福祉を学ぶ大学や専門学校などは、基本的にあまり偏差値が高くありません。また、人手不足の事業所が多く、そこで働く人も玉石混交、という話を良く聞きます。

でも、その方が自分にとって楽なこともあるな、とも思うんですよね。

例えば私の場合、前職ではExcelを使うのは当たり前でした。みなさんカタカタとスピーディーに入力されていて仕事をさばいていて、新米の私は焦ったり辛くなったりしておりました。

でも今の職場では、

「なんか知らんけど1ページに印刷したいのに最後の一行だけ2ページ目になっちゃう! どうしたら良いの?」

と慌てる人がいたりもします。印刷に関する基本的な部分なんですが。
そこに「これはですね、改ページプレビューで調整してやると……」とマウスをポチポチします。自分にとって常識的な作業をちょっとしただけで

「すごい! 天才! あなたは神か!!」

とか言ってもらえます。どうも、神です。私は単純でちょろいので、こういうのがとてもうれしいです。

これは大企業とかの「優秀な人材が集まる職場」では得られない感覚だと思います。「できて当たり前」の中にいるより、「できるのがすごい」の中にいることの方が私には合ってるのかもしれません。

ちなみに言うと、例えばPCが少し苦手な同僚だったとしても、私が全く知らない地元のおいしいお店の話やバラエティに出てる芸人の話で盛り上がってクライエントから強い信頼を持っていたりとか、私にはできないような「ここはもっとしっかりしねぇとだめだよ!」「大丈夫! おまえは最高だ!」などエネルギッシュな支援をしている人だったりとか。多様な基準で尊敬できる人たちと過ごせています。

 

4.自分の人生全てを有効活用できるのが楽しい。

これも結構個人的な話になるかもしれませんが、福祉の仕事は自分が人生で積み上げてきたことが全て活かせる仕事、だと思っています。私の場合、分かりやすいところで言うと自分が統合失調症だった経験を元に、クライエントの苦しみを想像することができます(ちなみに、それが完璧という保証はどこにもありません)。ですが、その他にも例えば……

・大学の頃にした言葉関係の勉強が、クライエントの話す言葉を振り返る際に生きてくる。
・前職でパソコンを使っていた時の知識が活かされる。
・理不尽な思いをしながら働いた経験を働いたことがない若いクライエントに伝えられる。
・趣味で聞いた懐メロについて年配のクライエントと語り合える
・好きなアニメやゲームの話を若いクライエントと熱く語り合える

などなど、人生で自分がしてきた経験が全て活かされてくる、と感じています。

今までずっと「自分が人生をかけてするだけの価値がある仕事って何だろう」と思っていました。 就活中とか、前職で辛く働いているときも「この仕事、これから40年とかやっていくのかなぁ……」とか、「この仕事、本当に私が自分の人生の半分以上を注ぎ込んでやるものなのかな?」とか、青臭いことを考え続けたものでした。

今のところ、「福祉」の仕事は「自分が人生をかける価値がある」ものとなっています。もちろん「今のところ」ですが、これは自信を持って言えますね。

 

ここまでやりがいや社会的意義など、「福祉」の綺麗な面を綺麗に書いてきましたが、光があれば闇があります。というか、現実は闇の方が多いです。こんなマイルドな表現じゃ現場の人に怒られるかもしれません。突発的な修羅場を経験することもあるし、慢性的な根が深い問題に取り組まなければなりません。そうしたことはまた別の記事で書ければ、と思います。

それでは、最後までお読み頂きありがとうございました。また会う日まで。


【投稿者】
ヤマカワ さん

【プロフィール】
ことばとおんがくがすきなめんへらさん。
社会人一年目で統合が失調。そろそろ良くなって来たかな~というところで弟が自殺。
諸々乗り越えた今では精神保健福祉士として、メンがヘラってるみなさんと楽しく過ごしています。

Twitter:@ymkwlab
ブログ:http://ymkwlab.hatenablog.com/
Youtube:https://www.youtube.com/channel/UCv8OYVFH9Sg2MleK1uEHy-A


【募集】
メンヘラ.jpでは、体験談・エッセイなどの読者投稿を募集しています。
応募はこちらから


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)