福祉の仕事のつらさと課題 ~ある精神保健福祉士の場合~


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お世話になっております。統合失調症の福祉屋さん、ヤマカワです。

前回の記事では福祉のやりがいや社会的意義など、ポジティブな面を書いてきました。

この記事では、福祉のネガティブな面にも光を当てたいと思います。何事もそうだと思うのですが、基本的にポジティブなことよりはネガティブなことの方が目につくものです。挙げ始めればきりがいないですが、思いつくものを幾つかピックアップしてみました。

 

福祉のつらさ

1.社会からの理解が乏しい
2.低賃金、低偏差値
3.ストレスフルな仕事
4.人が定着しない
5.成果が分かりにくい、説得力が弱い
6.支援の質が様々
7.支援者が病んでる

 

1.社会からの理解が乏しい

何となくイメージできると思うのですが、そもそも「福祉ってどんなことしてるの?」と知らない人の方が多いのが現状です。いわゆる「健常者」という多数派の人々は福祉と関わる機会がほとんどないでしょう。「何かの辛さとか、問題があって初めて福祉を知る」という人が多いように思います。私自身、体調を崩してデイケアのお世話になることがなければ「精神保健福祉士」なんて知る由もなかったわけですし、「健常者」として生きている(または生きてきた)人のどれだけが「自立支援医療」についてご存知か、たぶんあまり期待できないでしょうね。

ということで、あまり認知されていない仕事なので色々困る局面にも出くわします。例えば親戚とかに「お前今何の仕事してる?」と聞かれたとき。うまく説明するのも難しく、とりあえず「ふ、福祉の仕事です……」みたいな感じで話します。正直、ちょっと気まずいんですよね。その場は「ふぅん……」みたいなリアクションでありつつも、「そんなよく分かんない仕事じゃなくて、もっと別の仕事ができそうなもんだけどなぁ」とかも言われたこともありました。

そして、社会一般についてどころか、職場の中でも「あの人何してる人なの?」と思われることもあります。例えば病院。便利屋だと思われて事務仕事任されたり、一日中病院掃除させられたり、なんて人の話も聞いたことがあります。加えて病院というところはヒエラルキーがしっかりしているものです。頂点には医師がいて、もうこれには逆らいようがないですね。看護師はボリューム層で、ここに嫌われたら仕事が進まないですし、そもそも居づらいと思います。一応社会福祉士、精神保健福祉士も国家資格なんですが、医師、看護師、薬剤師、作業療法士、等々を前にすると無力に等しいですね。そこに福祉職内での軋轢なんかもあったりすると、職場の居心地はなかなか悲惨な状態になるんじゃないかと思います。

 

2.低賃金、低偏差値

「福祉の仕事が理解されていない!」と叫んでおいて難ですが、給与面については主に悪い意味でイメージ通りです。安いです。もっと欲しい。

平均年収.jp」様によると、福祉系の全体的な総合平均年収は、250万。とのことでした。平成27年度(2015年)の全体での平均年収が420万円とのことなので、その差は170万円。私達の仕事って、そんなに価値が無いのかなぁ。

また、大学受験的な意味で言うと、福祉関係の学部の偏差値は、決して高くはありません。福祉関係の学部の偏差値をまとめたページによると、もっとも高くても59。一番低いところだと35なんてところもあります。福祉関係でもっとも高い偏差値は、恐らくどこの医学部の偏差値よりも下でしょう。こういうところとか、職種間のヒエラルキーに作用している気がなんとなくしています。

 

3.ストレスフルな仕事

ここも一般的なイメージと近い部分かもしれません。特に生活保護や精神科病院で困難ケースにぶつかると身も心も潰されがちです。メンがヘラっている皆さんには想像しやすいと思うのですが、「もう自分たちではどうにもならない」とか、「殺すか死ぬかしかない」とか、そういう切羽詰まった状態にならないと、人はなかなか福祉につながらないものです。一見あまり問題が見えないクライエントでも、聞いていくとドロドロしたものが湧き出してくる、というのはよくあります。そういうのと日々向かい合い、何件ものケースを並行して担当することが求められます。妄想で興奮しているクライエントに包丁を喉元まで向けられたワーカーさんの話も聞いたことがあります。修羅場との遭遇率は、他職種より高いかもしれませんね。

「そこでも何とかがんばろう!」と思ってがんばる熱血的なワーカーさんもいますが、周囲の環境によっては消耗するだけになってしまうのが現実です。みんな同じような辛さの中で仕事をしています。どんなに経験豊富、実力のある支援者でも、一人の人間です。クライエントからひどい言葉を向けられれば多少なりとも傷付きますし、「こんなにがんばって支援してるのにどうして分かってもらえないんだろう……」と無力感に苛まれます。支援者自身が気をつけなければいけないこととして「バーンアウト」という状態があります。いわゆる「燃え尽き症候群」。一生懸命がんばってきたのに報われなくて、働けなくなってしまう状態。本当に明日は我が身なので、私も結構気を遣っています。

私はまだ経験がないんですが、担当してるクライエントに自殺されたら立ち直るのは難しいだろうな、と思っています。境遇も境遇なので。「福祉の仕事してる限り、クライエントが死ぬのは避けられないよ」という先輩の言葉に、気を引き締めなければならないと、いつも思っています。

 

4.人が定着しない

さて、ここは福祉業界に特徴的なことなんですが、割と転職が多い印象です。結構すぐみんな転職します。「考え方が違う」と三日で辞める人もいたり、「仕事についていけない……」と泣きながら去る人もいたりします。私も先輩に「一年いたらベテランだな(笑)」と冗談を言われたことがあります。

付け加えると、福祉は狭い業界です。他の支援機関の人々とつながるのが仕事みたいなもんです。なので悪い噂は瞬く間に広がりますね。それは人についてもそうですし、職場についてもそうです。どこどこの誰はダメだ、どこどこの支援期間は当てにならん……などなど。そしてそれでも「人手が足りない」ので転職できる、みたいな。「有資格者」というのは何だかんだで求められますね。色々深い部分が見えるような気がしています。

場合によっては、これでクライエントに大きな負荷をかけてしまうことがあります。今までの担当さんはとても良くしてくれたのに、新しい人は全然話を聞いてくれない……結果として引きこもってしまったなんていうケースも耳にしますね。異動が避けられない職場もあるとは言え、支援者とクライエントが地道に積み上げた来た「信頼」はそう簡単に「引き継げる」ものではありません。

 

5.成果が分かりにくい、説得力が弱い

この辺は私が働いてみた感想ですが、福祉の仕事は成果が分かりにくいように思います。

営業のように売上が数値化されるわけじゃない。
製造のように物ができていくことが見えるわけじゃない。
成果を可視化しにくいのは、この仕事の特徴かと思っています。

「今までずっと引きこもっていた人が、自分の意見を言えるようになってきたんです!」と、支援者としてはとても感動する成果だったとしても、他の人に説明すると「はぁ……」って感じで、うまく受け取ってもらえないこともあります。「でもその人、別に普通の人に比べればまだまだ全然無口じゃん?」とか突っ込まれて返事ができなくなりそうです。可視化しにくいゆえに、説得力も劣りますね。判断基準も人によるので、なかなかうまく共有しにくい気がします。

 

6.支援の質が様々

これはもう言葉通りです。

この業界に限りませんが「熱意を持ってしっかりやっている人」「適当に業務をさばいている人」など、モチベーションや能力は様々です。ちなみに「熱意はあるけど能力がない人」「適当に見えるけど実はしっかりしている人」などもいて現実は厄介です。

ただ、個人的な感覚では「支援者の力量」って、接していれば分かってくるような気がします。どう思ってこの仕事をしているか、どういう知識を持っていてそれをどう使っているか、クライエントのことをどれだけ考えているのか、などなど。人を見るのが福祉の仕事なので、職業病みたいなものですが。一緒に働く人に対しても分析的に捉えてしまう部分はありますね。そして、それは自分も同業者に分析されているということでもあって。逃げも隠れもできないな、と思います。

 

7.支援者が病んでる

6.に含めても良かったんですが、敢えて別枠にしました。感情や体調のコントロールが苦手だったり、実際に疾患を持っていて服薬中だったりする支援者も、いることがあります。私自身、統合失調症になったからこの業界にきたわけで。顕著な症状はないにせよ、今でも精神的に不安定になることはあります。

また、ここで言う「病み」は必ずしも疾患を意味しません。「やっぱり障がい者は……」と言ってしまうような偏見も、健全ではないと個人的には思います。注文の多いクライエント、人によってはクレーマー化するクライエントに対し「そんなんだから社会適応できないんだよ」「やっぱり障がいだよねぇ、ご本人は気づいてないけど」と思ってしまうこと。これは私にもあります。良くないと思いつつも、気をつけていつつも、どうしてもネガティブな感情が頭をよぎることがある。こうした自分を真摯に批判していくことが必要です。ですが、それをやりすぎると消耗して自分が潰れて本物の「病み」になる。難しいです。

 

Ⅱ 今後の課題

さて、福祉の仕事の辛さをほんの少しだけお伝えしましたが、これもまだまだ氷山の一角。現場で戦っている福祉屋さんたちに語らせだしたら本当に尽きることはないと思いますが、こうした辛い現状を変えるにはどうしたら良いのか。私なりに考えてみたものを書いてみたいと思います。

1.支援者自身の生活の安定
2.支援者の資質向上
3.福祉についての普及啓発

 

1.支援者自身の生活の安定

「まず支援者自身が幸せでないと、クライエントを幸せにできない」というのが個人的な見解です。

「自分の生活を犠牲にしてでも人のために……」というのは長持ちしません。人のために働くというのは素晴らしいことです。それが支援者のやりがいになっていることは間違いありません。ですが先にも述べたように支援者だって人間なのです。感情的になることもあるし、金を貰わなきゃ生活できないんです。そういう部分を覆い隠して「クライエントの幸せのために!」とがんばることには違和感を覚えます。陥ってしまいそうな病みを小さいうちに見つけて対峙して退治して。自分をできるだけ安定させてクライエントに向き合いたい、と思います。

 

2.支援者の資質向上

自分を整えられたら、色んな考え方を身に付けたり、関わり方や障害特性なんかを勉強することが必要かと思います。福祉には様々な考え方があります。関係者なら「生活モデル」「ストレングス」とか、勉強したことがあると思いますが、そういうのを実践を通して身につけることが大切でしょう。

クライエントの特徴を把握する上で障害特性を知る必要もありますし、それをどう引き出すか、受け入れていただくかを考えるためには面接技法も磨かなければならないでしょう。

自分が知った情報を同僚や上司、他の支援者に伝えるためには報連相の仕方とか書類の書き方も習熟したいところです。このあたりは業界を問わず、色々なところで言われることと同じです。

こういう「より良い支援」のために「資質向上」を目指すことは、永遠の課題だと思います

 

3.福祉についての普及啓発

そもそも福祉についての知識って、ほとんど知られていないと思います。よく「福祉が必要な人に、福祉の情報が届かない」と言われますが、本当にそのとおりだと思います。信じていた夫に裏切られてシングルマザーになってしまった女性が、誰にも相談できずに辛い思いをしている。福祉につながれば様々な支援ができたのに。そういうケースは多いでしょう。

必要な支援が、必要な人に届くように工夫していくことはこれからも必要でしょう。私がこういう風に記事を書いているのも「ちょっとでも福祉について知ってもらえれば」「ちょっと福祉について調べてみようかな、と思ってもらえれば」という気持ちがあるからです。

 

Ⅲ 最後に

まだまだ経験の浅いぺーぺーの福祉屋ですが、最後に思うことを。

私としては、業界に課題があることをそんなに悲観しておりません。

もともと人が抱えている問題を解決するのが福祉だと思っています。誰もこういう言い方をしないんですが、カッコつければ「非常に高度なコンサルティング業務」とも呼べると思います。

使えるものは何でも使う心持ちです。制度やサービスはもちろん、話題としてのポップカルチャーやニュース。問題整理のためビジネスの世界で磨き上げられてきたフレームワーク。次から次へと出て来る問題を、自分が取りうる全てを使って楽しみながら解決していく。これもまた一つの魅力かもしれません。

そして、「まだまだ良くしていく余地がたくさんある」ということは、時として希望でもあります。「福祉の世界は良くも悪くも未成熟」と誰かが言っていました。これは私の職場の場合ですが、自分の裁量が割と大きく、やりたいことが割とやりやすいです。「いっちょやったるか!」と腕を振るいたくなります。

いずれ福祉を頑張って幸せな人を増やして。
福祉について多くの人に知ってもらって。
なんなら給料とかももうちょっと増えて。
いずれ親戚に「私は福祉の仕事をしています」とドヤ顔で言えるようにしたい。

とまで考えるのは私によくある妄想ですが、そういう心持ちで働いています。

というわけで、今日も出勤してきます。

それでは、最後までお読み頂きありがとうございました。
また会う日まで。


【投稿者】
ヤマカワ さん

【プロフィール】
ことばとおんがくがすきなめんへらさん。
社会人一年目で統合が失調。そろそろ良くなって来たかな~というところで弟が自殺。
諸々乗り越えた今では精神保健福祉士として、メンがヘラってるみなさんと楽しく過ごしています。

Twitter:@ymkwlab
ブログ:http://ymkwlab.hatenablog.com/
Youtube:https://www.youtube.com/channel/UCv8OYVFH9Sg2MleK1uEHy-A


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