恨み続けた父親の死。残ったもの。




親が離婚した。あれは確か、5歳のときだったと思う。

僕の記憶に残っているのは、顔も身体もアザだらけになった母の姿と、2人で祖母の家に逃げたことと、母と父が「この子はうちで暮らす!」って僕を引っ張りあっているところ(…ああ、押し付けられたんじゃなくてよかった。これだけは救いかもしれない)。

僕は暴力を振るう父が大嫌いだった。

母を傷つける父が許せなかった。

離婚してから何度か引っ越したのに、どこで知ったのか突然訪ねてきたりした。たぶん、ヨリを戻したかったんだと思う。父が来る度にピリピリした空気が流れていた。苦しかった。

母が出かけていて1人のときに来たらどうしよう、学校の帰りに待ち伏せてて連れてかれたらどうしよう、そんな恐怖が常に付きまとっていた。

学校で父親がいないことを言うと「ごめんね」って謝られるのがすごく嫌だった。

毎日毎日、父を恨んでいた。

 

母の再婚

10歳のときに母が再婚して、弟が産まれた。引っ越した。それから父が来ることはなかったけど、時々不安に襲われた。

もしまた居場所を突き止められたら。再婚のことを知ったら。子どもがいることを知ったら。暴れるだろうか…

そんなことを考えながら、10年以上が経った、去年の春。親戚から連絡がきた。

 

突然の父の死

「○○さん(父)が死んだ。孤独死だった。お通夜だけでも来ないか。最後だから。」と。

母は、怒っていたかな。不安定になって、数日寝込んでしまった。

僕は、死んでもなお母を苦しめる父をまた、恨んだ。…ちょっとだけ、悲しんだ。

その後1人で昔のアルバムを探した。あんまり記憶がないんだけど、見なきゃいけない気がした。

そこで見たもの、それは赤ん坊の僕を愛おしそうに見つめる父、優しい顔で抱っこする父、一緒に笑顔で遊んでいる父、仲良く手を繋いでいる父。

…こんなの、僕の記憶にない。悲しくなってきた。

もしかしたら僕は愛されていたんじゃないか。

恨み続けた僕に残ったのは、虚しさと、一生知ることのできない疑問。

もしあの世があるなら。もし会えるなら。そのときは訊いてみようと思う。

「僕のこと、愛していましたか?」


【投稿者】
彼方 さん

【プロフィール】
22歳シングルマザー

Twitter : @sat0a1

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1 件のコメント

  1. みけ 返信

    私の父も暴力を振るうタイプで、両親は離婚しました。小さい頃の記憶だと愛されてたと思っていましたが、暴力を振るわれたので、過去の記憶は間違いなのかなと思っていました。でも父が変わってしまっただけで、過去の記憶も正しいのかなと思います。

    今どうしているのかわかりませんが、私もいつか確かめることができたら、聞いてみたいです。

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