リストカットをやめるきっかけになった友人の一言

体験談 リストカット 自傷行為

メンヘラ全員が全員そうではないのだろうけど、自傷行為をしている・もしくは過去にやっていたメンヘラは多い気がしている。わたしは“やっていた”側に属する。

最後にやったのがいつだったのか覚えてないが、少なくとも4〜5年は前だ。もっと前にやめたような気がするが、正確な記録がないので曖昧で申し訳ない。ただ確実に言えるのは、「死にたいと思うことは未だに時々あるが、もう一度自傷をしたいとは全く思わない」ということ。

 

完全に自傷依存していたわたし


初めて自傷行為をしたのは小学校5年生だったと記憶している。何年前にやめたのかは記憶に残っていないのに、始めた年はきっちりと覚えている。老化現象のひとつとして、最近のことはあやふやなのに幼い頃のことはしっかり覚えているという現象があるようだから、まあ自分のもそういうものなんだろう。わたしは今年34歳です。

リストカッターだとかリストカット症候群なんてものが流行ったのが、確かわたしが高校生くらいの時だった筈なので(今思えば何てブームだ)、小5のわたしが何に影響されて自傷を始めたのかは定かでない。毎日毎日、曽祖母から説教を喰らっていたストレスとか、母親が自分を置いて男の家へ逃げてしまったとか、まあそんな所だろう。

当時は手首を切ると即死だと思っていたので、最初は手の甲だった。そのうち手首も切るようになるのだが、そこから自傷をやめるようになるまでの20年近くの間で、腕、首、胸、腹、二の腕の脇に近い部分(動脈があると聞いてやった気がする)を切りつけた。

最初はきっと母親に注目してもらいたいとか復讐したいとかで始めたのだろうけど、途中から何で切りたいのか分からなくなった。「もうやめたい、今度こそやめるぞ」と心に決めても、そのために刃物を封印しても、感情が昂ぶると再びめちゃくちゃに切ってしまう。

多分切ることで何らかの快感を得ていて、それに依存してしまっていたのだろう。病院に行って薬を処方されても、学校を卒業して社会人になっても、わたしの自傷癖は治らなかった。正確に言うと、人目につきやすい手首等を切る事はやめたが、通常なかなか人目にさらすことのない部位を切るようになった。

 

誰の言葉でも止まらなかったのに、たった一人の言葉で止まった


自傷をやめるまでの20年近くの間で、当然それを止める人はいた。親だったり恋人だったり友人だったり。しかし申し訳ないことに、誰の言葉も届かなかった。

成人してからは「自分は自傷依存症になってしまっているので、もう治らないんです」と思い込んでいた。回数は減っているし、10代の頃より傷は薄くつけるようにしてるし、別にいいんじゃないかとも思っていた。「親が悲しむよ」と言われても、当時のわたしは親を悲しませたくて後悔させたくてしょうがなかったので、やめる理由がない。

恋人に「俺が悲しい」と言われても一緒。彼氏の言うことに納得がいかなくて、だけど捨てられるのが怖くて不満をはっきり言えなくて、無意識の復讐として自傷をしていたのだから。そしてきっと心のどこかで、「こんな危なっかしい自分を捨てないよね?」と思っていた。

いつだったか忘れたが、「おばあちゃんになっても手首を切っている人はいない」というパワーワードに出会って、きっとそうだろうなと思えた。少しずつ少しずつ、なだらかな下り坂を降りていくみたいに、きっとわたしは自傷をやめていくのだろう。なので今は時々ちょこちょこと傷をつけても仕方ないじゃん、そのうちやめるから許してよ、と誰にともなく言い訳をしていた。
そんな折に、とある友人に出会った。確か24〜5歳くらいの頃だ。共通の友人を介して仲良くなったのだが、普通に生活してたら仲良くならなかっただろうなーという女の子。年齢はわたしのひとつ下だったが、既に子どもが2人いた。

とにかく彼女はわたしと正反対で、めちゃくちゃ明るかった。初めてちゃんと遊んだ時、30時間ほぼぶっ続けでしゃべり続けたことを今でも忘れない。こんなに明るいのにマジかよと思うくらい、彼女はかなり暗い過去を持っていた。徹夜でお互いの暗い過去をしゃべり倒して、その時に自傷の話もしたのだと思う。

彼女は言った。

「いいことじゃないんだろうけど、死ななきゃいいんじゃない?」

と。初めてそんなことを言われたので、びっくりして「え?」と聞き返したと思う。

「だって巴ちゃんは自分を傷つけたら死にたい気持ちがおさまるんでしょ。本当に死ぬくらいなら、体傷つけておさまる方がいいじゃん。死なないんなら、その方がいいよ」

彼女にとっては、わたしが自分で自分の体を傷つけることより、わたしがこの世からいなくなることの方が大問題のようだった。折角こんなに面白い人と友達になれたんだから死んでもらっちゃ困る、と笑っていた。

「こんなこと言うのって、あたし冷たいかな? 体傷つけていいよって言ってるようなもんだもんね。そういう訳じゃないし、やめられるようになるといいなーとは思うけど……どうしてもやってしまうんなら、いいと思う! 死ぬよりマシだと思う! ごめん、そうとしか思えない!」

謝る彼女に対して、わたしは「いいよ、大丈夫だよ」と答えた。長年抱えていた何かが、ストンと落ちていったような感じがした。「あっそうか。そうなんだ。」ストーーン。

そしてそれから自分でも驚くほどぴたりと、自傷をやめた。

 

最終的に、心の底から「2度とやらない」と思えた


実を言うと友人の一言でそれっきり完全にやめられた訳ではなく、その数年後に1回だけ再発した。当時付き合っていた男に腹が立ち、その勢いで切った気がする。お腹に薄い傷が少しついた。

「自傷やめられた!」と大喜びで過ごしていた時期のことだったので、彼女に再発したことを言うのはかなりためらわれた。それでも意を決して言うと、彼女はこれでもかと言うくらい分かりやすく落胆した。

「死ぬくらいだったら切ればいいじゃんって言ったけど、やっぱりいざ切ったって言われるとつらいねー」と苦笑いしていた。

「あたし、『自分の一言で巴ちゃんが助かってくれたんだ!』って、実はめちゃくちゃ喜んでたんだと思う。正直言うと、今ものすごくショック。でも、やっちゃったものはしょうがない」

そして「やっぱり死ななくて良かった」と言われた。その途端、猛烈に申し訳なくなってめちゃくちゃ謝った。彼女に謝ってどうなることでもなかったけど。

正直、切った後に「やってしまった…あの子はどう思うだろう」って瞬時に顔が思い浮かんだ。けれど、ここまで落ち込んだ悲しい顔をするとは、思ってなかった。「しょうがないよ」って、もっと笑ってくれると思っていた。アホだ。

たかがついこの間好きになった男にひどい扱いを受けたくらいで、彼女との信頼関係をぶち壊すなんてアホだと思った。信頼関係、なんて文字にするとめちゃくちゃ薄っぺらいけど、他にどう表現していいか言葉が思いつかない。とにかく自分は最低でどうしようもないアホだと思った。彼よりこの友人の方が大事だと思った。

「もう絶対に、2度とやらない。わたしがどんな話をしても引かずに受け入れて、いつも明るく笑ってくれるこの子に、2度とこんな悲しい顔をさせてはいけない。絶対にやらない」

そう固く誓ってから今の歳になるまで、言葉の通り一度も自傷をしていない。泥酔してワイングラスを持ったまま頭から派手に転び、割れたワイングラスが刺さって右手首に傷が残ったりもしたが、「自分で自分を傷つけたい」と思い立ったことは一度もない。ちなみに泥酔するほど酒を飲むのもしなくなった。それも自傷に近いなと思ったから。

この友人とはもう1年近く会っていない。最後に会ったのは彼女が腎盂炎で入院して、暇さ加減に耐えきれず連絡してきた時か。仲良くなり始めてから数年間は、週5〜6で遊んでいたのに。
けどわたしは今でも、彼女がめちゃくちゃピンチの時にすぐ駆けつけたいと思ってるし、いざ会ったら「昨日も会ったよね」みたいな顔して話すんだろうなと思う。他人からは「二人は親友だよね」と言われたりするが、わたしも彼女も親友という言葉が嫌いだ。正反対の人生を送ってきた二人なのに、価値観が妙に近い。

この話で自傷をしている人がやめられたり救われたりはしないんだろうけど、「依存症にまで陥ったのにやめられた人もいるんだなあ」ってことを、なんとなーく心の片隅に置いてもらえればいいなと思う。わたしは友人のお陰でやめられたけど、いま自傷に苦しんでいるあなたが何をきっかけにしてやめられるかは分からない。

ただ、やめた人間がやめられない人間に対して厳しく当たるのが嫌いだ。かつて煙草を吸っていた人が、自分が吸うのをやめた途端に愛煙家を糾弾するように。

もしも直接声をかけられるなら、かつての彼女と同じことを言うだろう。

「死ぬよりマシだよ」

「いつか、やめられるようになるといいね」

なんとか、生きていかれますように。わたしもあなたも。
ごきげんよう、さようなら。


【投稿者】
巴 さん

【プロフィール】
境界性人格障害歴20年くらい。
悩みながらのんびり生きてます。

・Twitter : @palicosp
・Blog : ぱりことば。

 


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4件のコメント

まゆ 返信

はじめまして、私も学生の時にリスカまでは行きませんが、爪で傷つけたり、手や頭を柱にぶつけたり、カッターやハサミを押し当てたり、死にたい消えたいと思っている時期が長く、ありました。

私が止められたきっかけは当時付き合っていた人の隣で、不安になってハサミを押し当ててしまった時に、ダメだよとは言わずに「いいよ、気が済むまでやって。見ててあげるから」と言われてからです。

今まで、止めたり責めたりする人ばかりの中で、いいよと言われたことで私はしなくなりました。

ふと思い出したのでコメント失礼します。

返信

まゆさん

初めまして。
まさか自分の投稿にコメントを頂けるとは思っておらず、こんなに時間が経ってから気づいてしまいました。
ありがとうございます。

多分、自傷を止めたり責めたりされることを「自身を否定された」と感じてしまい、よけい自傷が暴走する脳のしくみがあるのではないかと思っています。

だから「いいよ」って言われると、内容はともあれ肯定されたことの嬉しさが先に来て、
「やらなくていいや」になるのでしょうかね…。
ただのあまのじゃくと言われればそれまでですが 笑

ともあれ、お互いやめられるキッカケに出会えて良かったですね。
この返信をみていただけるか分かりませんが、コメントありがとうございました!

あい 返信

初めまして。
つい先程初めてリストカットしてしまった者です。
精神科に通っているのですが、鬱がもう治りかけたと思った頃に、また悪化して苦しいのに誰にも言えなくて、友人にも隠していて。
体調を崩して職場から早退する途中で薬局に入り、カミソリを買いました。もう死んでもいい。でも死ぬのは怖い。そう思いながら。
いっぱい切ってから、ふと他の人はどうしてやってしまうのだろうと調べたところ、ここに辿り着きました。
読みながらも読んでからも胸がいっぱいで涙が止まりません。まだうまく自分でも消化しきれないのですが、ありがとうございます。
こうして体験を読ませていただけたことで、勝手ではありますが救われた気がしています。友人にも家族にも言えない分の言ってほしい言葉をもらいました。
支離滅裂になりましたが、突然のコメント、失礼しました。
本当にありがとうございます。

返信

初めまして。
私は中学生なのですが、友達が八人ほどリストカットをしています。ほとんどはカッターなのですが、そのうち一人は先日、「カミソリで切って、裂けた」と言っていました。毎日いろいろな人と話しているうちに、どんどんリストカットをしている人が増えています。どうしたらやめてくれるのだろうと、調べていてここを見つけました。この体験談を聞いてとても参考になりました。私も、ただ「やめろ」と言うだけじゃなくて、彼女たちを肯定して向き合っていこうと思います。
勝手にすみません。ありがとうございました。

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