恋人に理解してもらえない、FtXでノンセクシュアルな僕の葛藤




世間はGW。夕方、駅から自宅へ向かっていると、前方に高校生のカップルが歩いていました。二人は同じような白いTシャツを着て、つないだ手をぶんぶんと振りながら、ぴったりと身を寄せ合って歩いていました。夕焼け色に染まっていく二人の背中を見ながら、僕の呼吸はだんだんと浅くなっていったのです……。

こんにちは。かろと申します。のりみさんの記事(関連記事:「好きだけどセックスはできない」)を読ませて頂き、これは! と思ったので筆を取らせて頂きました。筆というか実際はPCのWordですが。

僕は多分FTX(体は女性で、性自認が女性でも男性でもない)で、バイセクシュアルのノンセクシュアルです。詳しくはのりみさんの記事をお読みください。とても丁寧に解説してくださっています。

自分に対してずっと違和感はあったのですが、そういう「分類」があると知ったのは最近のことです。それまでは、女の人は絶対に男の人を好きになるものだと(無理やり)思っていたし、異性を好きになったら子供を作って「家族を」やらなければならないのだと思っていました。

別に誰を好きになってもいいんだ。そもそも女として生きなくてもいいんだと知った時、僕はなんだか力が抜けて一人で笑ってしまいました。その話は長くなりそうだし、うまく書けそうにないのでまたどこかで出来たらいいなと思います。

今回は、ノンセクシャルってなんかもう面倒くさいんだ! でも周りにもし僕のような奴がいて、似たようなことを言われたら話を聴いてやってほしいんだ。という話をさせて頂きたいと思います。

 

僕には異性の恋人がいます。まだFTXだとかノンセクだとかいう存在を知らない頃にできました。本当に優しい人で、僕にはもうどうしようもないくらい勿体ない人です。

僕は「交際」において、ある大きなことについてズレた認識をもっていました。それは「性的なこと」についてです。これをお読みになっている方は「は?」とお思いになっているかもしれません。

「何言ってんの? 付き合うって言ったらイチャイチャするもんでしょ。馬鹿じゃないの」

はい。全くもってその通りでございます。しかし、僕は性的なことに関しての欲求が全くなく、興味もなかったことから、「付き合うって何するんだ?」という状態から交際をスタートしてしまったのです。そもそも、好意を持ったのは僕の方でした。けれど、その先が僕には分からず、ただよく分からない好意を持て余すばかりでした。

そんな時、頭をよぎったのは少女漫画で読んだ女子生徒が男子に赤面しながら告白するシーンでした。

体育館裏で、顔面お花キラキラgirlは、イケメンplay boyに向かって言います。

「あ、あのっ……! ずっと好きでした。付き合ってください!!」

そうか、キタコレ。
妄想を終えた僕はそう思いました。そうだ、「好き」の先は「告白」で、「付き合う」だ。成程、成程と僕は納得してその通りに事を進めました。だってそうするように漫画には書いてあったもん。好意を持ったら付き合うんでしょ。と、「お付き合い」の意味も分からず、僕はフワフワした高揚感と勢いで突き進んでしまったのでした。

問題はすぐに起こりました。何より、スキンシップが辛いのです。手を繋がれれば背中に冷や汗をかき、抱きしめられれば全身に電流が走ったようなしびれが走り、とにもかくにも呼吸ができない。それでも僕は彼に嫌われたくないので、「男慣れしてないの」と言い続けました。彼は初心な表情を見せる僕を「かわいい」と言ってくれます。

そして僕は、自分が他人に性的欲求を抱けない人間なんじゃないかという答えに辿り着くのです。僕はとても狼狽えました。

だって、女の人は男の人とセックスをして子供を作らなきゃいけないんじゃないの。女として生まれた人は、スカートを履いて化粧をして「かわいい」って言われるのが嬉しいと思わなくてはいけないんじゃなかったの。

これが確かなら、僕はずっと周りに、自分に嘘をつき続けてきたことになってしまいます。「人に迷惑をかけるな」。それが家訓の我が家で、僕は良い子でいようとできるだけ頑張って来たつもりです。

それでも、よくよく考えた結果、僕は「嘘をついてきたこと」、つまり自分の性別違和について受け入れることにしました。だってもう自分の中で答えが出ちゃったんだもん。仕方ないよね。そして僕はまた散々悩んだ挙句、恋人に自分がFTXかもしれなくて……と打ち明けました。

彼は僕の話をきいて、言いました。

「何があったの。そんなの気の迷いだよ」

僕はやっぱり彼に嫌われたくなかったので、へんな話を長く聞かせてしまったことを謝り、「全部忘れてくれ」と言いました。男女が付き合っていて、スキンシップを全くしないというのは変な話なのだろうということは分かっていたからです。僕は、人前では「僕」とは言いません。正直なことを言えるのは、小さなツイッターのアカウントのみです。

人を好きにはなれるのに、性的な欲求を持てないというのは、とても半端で残酷だなあと思います。どうせなら、最初から全く人に興味を持たないか、そうでなければ少女漫画の女の子のように「好きな人に触ってもらえてうれしい」と思えるようになれれば良かったのに。

駅からの帰り道。僕はイチャつきながら歩くカップルの後ろ姿を見て、不思議でしょうがありませんでした。

どうしてあそこまで近い距離になれるのだろう。好きな人にも本心を伝えられないような、臆病者の僕には分かりません。僕は、彼の言う「気の迷い」を心にずっと抱えたまま、誰にも言わずに生きていくことでしょう。とりあえず今は、次に彼と会うのが怖いです。

もし、友人や家族から、セクシャルな相談をされたら、まずは話をきいてあげてください。軽そうに見えても、本当は何日も何日も眠れずに、そのことしか考えられなくなっているくらいには悩んでいる筈です。毎日吐き気に襲われているお姉(兄)さんとの約束ダゾ☆


【投稿者】
かろ さん

【プロフィール】
人間不信の塊系大学生。枕元には必ず本があります。
Twitter:@larix_samezame


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1 件のコメント

  1. むじな 返信

    私はノンセクシャルでもないし性別への違和感もないので、きっと真にかろさんの辛さを理解することはできませんが、文章から複雑な状況への大変な苦悩を読み取ることが出来ました。
    しかしそれと同時に様々な事象が複雑に絡み合っているような印象も受けました。
    ご自身のことを打ち明けるのは大変勇気のいることだったと思います。
    やはりセクシャルマイノリティについての正しい理解はまだまだ広まっていないので、一度話して理解を得るのは難しいのかなと感じます。
    その後彼氏さんとはいかがですか。
    一緒にいて苦痛な人の側にいる必要はないと思いますよ。
    性欲がない場合、恋人とは心の繋がりがより大切になるのではないでしょうか。
    かろさんはこの文章を読む限りでは自尊心は低いですし、それゆえに人との深い関わりもあまりなさそうです。
    それはセクシャリティに起因するのかもしれませんが、ご自身で抱え込んで増幅していますよね。
    「こうでなくては」があなたを苦しめるなら、全部捨てていいんじゃないですか。
    自分が健全な精神を得るために必要なことをできるだけ単純に考えて、実行すると少し楽になれるかもしれないです。

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