突然「今から死ぬ」と連絡が来たら 友人の自殺を止めた3つの行動




初めまして、つかさと申します。
鬱だったりレズビアンだったり首吊ったりFtXだったり32歳にして転職回数が9回もあったりと、話のネタに困らない程度にはいろいろな属性や経験を持っています。

私自身も15年くらい前から元気にメンヘライフを送っている身ですが、今回は表題の通り、私自身の話ではありません。

自殺を志した知人(以下Aとします)と壮大なかくれんぼをした、というか、させられたお話です。数年前のことなので少しうろ覚えな所もありますが、ご容赦ください。

 

◆Aからの「これから死のうと思う」という電話

ちょうど私と彼女(同棲相手)が新居に引っ越して新生活を始めようとしていたある日、Aから電話がかかってきました。口調は割と元気だったように思います。

A「久しぶりー、元気しとるー?実はさぁ、もう死のうと思うんだよね」
私「待って」

楽しい気持ちは春の青空の向こうへ全て消し飛びました。

Aは、元々色々とアレな人だったんですが、この件の数年前に、訳もなく全身が激痛に苛まれるという不治の難病にかかってしまい、その辺りから、急激に心が闇に染まっていました。

実はAとは少なくとも私からすればそんなに深い付き合いではないのですが、自殺したがる理由には心当たりがありすぎますので、さすがに聞き流して適当にあしらうのはマズいと判断。ひとまず、Aの言い分を好きなように話してもらう事にしました。その結果、

「死に場所は今から最適な所を探す」
「準備のために買い物をする」
「詳しい場所を言ったら探しに来るからそれは秘密だ」
「場所を決めたらそこで切腹をするつもりである」

などの手がかりをゲット。もうこの時点で私の豆腐メンタルの限界値はMAXを振り切りかけています。

しかし、そういう事であれば、今すぐ衝動的に死ぬことはなさそうです。なので、私自身の心と頭の整理のために、一旦「引っ越し中だからちょっと待ってね、またすぐかけるから」と伝えて電話を切りました。

 

◆自殺を止めるための3つの行動

そこからの私の思考と行動は、我ながら割と賢かったと思います。アタマにも火事場の馬鹿力的なものってあるのかもしれません。異様に冷静でした。

まずはAと共通の知人でもある私の彼女に、今聞いた事をありのままに話して、

①何をゴールにするか
②自分たちにできる行動の限界はどこか
③他に協力を仰ぐべき人

これらをすごい速さで話し合いました。最初にこれをきちんと決めておいたことで、後が幾分か楽になったように思います。あくまでも「幾分か」ですが……

①、然るべき人or機関にAを引き渡すことをゴールとする。
→「死ぬのを思い留まらせる」にしなかったのは、我々はAの人生に責任を負ってあげられる立場ではないからです。

②、もし市内までAが戻って来れば直接会いに行って説得と言う名の時間稼ぎをする、それより遠ければ電話のみに留める。それが自分たちにできる限界。
→自分たちの負担を減らすと共に、Aを市内まで呼び戻すという小目標もできました。

③、Aの母親と警察に協力を仰ぐ。
→純粋に、Aを保護してもらうのに一番適してると考えたからです。偶然Aの母親の連絡先を知っていたのは幸運でした。すぐそれぞれに電話。

ここから、Aと私たちの長いかくれんぼが始まります。

 

A母は何も知らずに旅行中だった上に、Aとは出発前に喧嘩していて連絡がつかないとの事だったため、私がAとの接点になって情報を引き出す役回りになりました。数時間にわたり、電話をかけたり切られたりしながら断続的にさりげな~く会話を続け、心を開かせ少しずつ周りの様子やら何やらを喋らせて、ようやく大まかな居場所の見当がついたのがお昼過ぎ。

確か、なんでわざわざ切腹がいいんだとか、街中じゃできなくない?どこでどうやってするんだよ、とか、そんな話から聞き出したんじゃなかったかと思います、居場所。あと服装とかも確か同じ流れで聞きました。死に装束ならさぞ気合い入れとんやろな、みたいな。

移動時間がやたら長いなと思ったらなんと隣の県にいたので、隣県の警察にも通報。さらに細切れで会話を続けては情報を警察に投げるのを繰り返し、少しずつ警察官をAの所へ誘導して、なんとかAと警察官を電車内で接触させることに成功しました。

これでかくれんぼも終了かと胸を撫で下ろしていたところ、すぐに警察から電話が。

「Aさんですかって聞いても違うって仰るんですよね、絶対この人で合ってると思うんですが、違うと言われてしまうとどうしようもない」

携帯折るかと思いました。でも警察の言うことは尤もなので、責めることはできません。そうこうしているうちに、Aたちが乗った電車は隣県を出てしまい、Aと接触してくれた警察官も管轄外になるからとのことで離脱、振り出しに戻ってしまいました。

Aが今にも腹を割こうとしてたとかならともかく、ただ普通に電車に乗って移動しているだけでは、強引に拘束する訳にはいかないのだそうです。国民の自由や権利を守るためとは言え、歯痒いですね。お巡りさんも歯痒そうでした。

その後も、警察を呼ばれてヘソを曲げたAをなだめすかしながら「良い場所が見つかるまでとりあえずホテルかどこかで落ち着いてはどうか」「そこまで死にたいなら止めはしないが最期に顔くらい見せてくれよ」などという形で説得。何とか我々が住む市内のホテルへ誘導することに成功しました。この頃にはもう、外は真っ暗。確かもう20時近かったと思います。

先に私と彼女がホテルに着き、Aと雑談しながら時間稼ぎをしている間に、A母も到着。きっと二人とも色々つらくて限界を超えてたんでしょうね、お互い顔見た瞬間に号泣&絶叫し始めました。

この時点で、私たちが当初立てていた「然るべき人にAを引き渡す」という目標は達成です。私たちは、泣きじゃくる二人を置いて、黙って部屋を出ました(二人で話ができそうなら私たちは何も言わずに立ち去ることは、事前にA母へ了承を取っておきました)。

 

そして、その日の深夜。

Aは、自宅近くの公衆トイレに閉じ籠り、宣言していた通り、切腹を果たしました。

翌日にAの母親から聞いたところによると、Aが「後で自宅に帰るから少し一人にしてくれ」と言うのでA母は先に帰宅したと。Aも一度自宅近くまで帰っては来たが、家には戻らず近所の公衆トイレの個室に閉じ籠って、母親に「やっぱり死ぬ」と連絡。通報を受けて駆けつけた警察やA母の説得も虚しく、バッサリお腹を切り裂いたそうです。

幸い、発見が早かったため、奇跡的に一命は取り留めました。
私が警察に、ホテルで別れた所までの経過報告をしており、Aの情報(自宅の場所など)も伝えていたので、自宅付近の警察にも情報が共有されていたのだそうで。母親からの通報があった時にすぐ緊急度が高いと判断され、即座に探してもらえたのが良かったようです。

切腹の直前には既に警察が現場に到着しており、扉越しの会話の声に異常を感じた時点で、すぐに警察官がドアをぶち破って踏み込んでくれたのでした。

その後Aは、あれだけ派手にやったのに死ななかったという事実と向き合って何か考えたらしく、「生かされた命なんだからもう少し生きてみよう」という姿勢に変わりました。今も難病は抱えたままですし、逆にポジティブが突き抜けてしまって変なセミナーにハマッたりしてるので危なっかしくはありますが、ひとまず自殺を図ったりなどはすることなく、元気に生きています。

 

◆私が学んだ3つのこと

この件から私が学んだことは3つ。

①衝動的に動かないこと
②あくまでも自分にできる最大限のことをする
③相手が何と言おうと警察には頼るべき

 

まず「①衝動的に動かないこと」

こういう時に連絡が来るというのは、頼られているのと同義だと私は考えています。最後に頼られた存在である自分がテンパッたら終わりです。

また、テンパッて自分が出来るラインを越えてまで踏み込もうとすると、中途半端で投げ出すことになったり、最悪、自分の身や精神にまで危険が及んだりしかねません。

どれだけ状況が切迫していようとも、自分が考えを整理する時間を取ったり、冷静に状況を把握できる人に相談するなどして、何か行動する時には落ち着いた状態でいることを心がけなければいけないと思いました。

 

次、「②あくまでも自分にできる最大限のことをする」

A母に引き渡すのに丸一日かけた訳ですが、結局Aは当初の予定通り切腹してしまいました。運良く助かりましたが、逆に言えば、運が悪ければAは死んでいたんですよね。直前まで私と連絡を取るという形で、助けを求めてたにも関わらず。その事実は、私の心に大きな傷を残しました。

でも、こればっかりは、どうしようもないのかもしれません。止める人がどれだけ頑張っても、死ぬ人は死んでしまう。「どうしても死んで欲しくなかったらどうしたらいいのか」の答えは、この件からは見つかりませんでした。

死にたい人の事情は色々ですけど、大抵は人間が一人で背負いきれない事を背負ってるから死にたがる訳です。私も死にたくなる人なので気持ちはすごく分かります。そんな大きなことを、他人である自分がいきなり代わりに背負ってあげられるはずがないです。それは、家族でも同じこと。家族だって別個の人間ですから。

死なないで欲しいと祈ることはいくらでも出来ます。でも、他人の人生をまるごと救ったり背負ったりできるなんて考えは烏滸がましいことこの上ないと、私はどうしても思ってしまいます。

死にたい人が抱えている物の重さや命の重さをあまりに意識してしまうと、かえってその人の死を止めようとする自分の言動を、不適切なものにしかねません。だって、そのくらい重いことだから。真っ向から向き合おうとしたら頭おかしくなります。

だから、こんな時には敢えて、「この人の命が懸かっている」「この人が生きるか死ぬかは自分次第だ」などと大それた事は考えず、淡々と自分にできる最大限をこなす姿勢に徹する方がいいのかもしれないな、と感じました。相手のためにも、自分のためにもです。

 

最後、「③相手が何と言おうと警察には頼るべき」

第三者から見て危ないと思えば、必ず通報するべきです。必ずだ。絶対。すぐに。

Aが命拾いしたのは、私たちが通報していなかった地元の警察にもきちんと県警から情報が回っていて、最優先に対処してもらえたお陰です。捕獲作戦の時にはいまいち頼りないように感じた警察ですが(事実捕獲できなかったし)、あのやり取りを早くからしていた事にこそ意味があったのです。

私たちが思ってる以上に、警察の皆さんは市民の命を守るために頑張ってくれます。メンヘラの相手をするのだって嫌がらずにやってくれます。法律に縛られている所はあるけれど、法律の許す限りの事はしてくれました。警察の組織力をナメてはいけません。信じましょう。

何より、「今私が何をするべきか」を指示してくれる第三者が一時的にでもいた事はとても心強かったし、警察と電話をする時間は、私自身が冷静になれる良い機会にもなっていました。

 

長くなりましたが、この話は以上です。

できれば、死にたくなる人も、死にたいと聞かされて奔走する人も、いない世の中になればいいなぁと思います。すごく難しいですけど。

 

【関連記事】
・プロが教える自殺対策 身近な「死にたい」にどう向き合うか
・友人の死から考える自殺対策と、死にたい人に寄り添う人たちへ
・差し迫った自殺を止めるため「警察に連絡する」という選択肢


【投稿者】
つかさ さん

【プロフィール】
他愛ない会話にも異常なエネルギーを消費するタイプの隠れコミュ障レズ。ACの気もあり、鬱は標準装備。
Twitter:@tks55kk


【募集】
メンヘラ.jpでは、体験談・エッセイなどの読者投稿を募集しています。
応募はこちらから


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)