アームカット跡を消すための手術を受けてみた




はじめまして。Tと申します。

私はTwitterをやっているのですが、自傷行為歴がある人が

『リストカット(アームカット)跡を手術で消したい』
『でもどのくらいお金かかるのかな?』
『レーザーとか切除とか色々あるみたいだけど、経験談が少ないからよく分からない……』

とかツイートしてるのをよく見かけるんですよね。

そこで、『アームカット跡を消したいと思って手術を受けてみた』当事者として、みなさんに情報を共有してみようと考えました。

話の内容上、アームカット含む痛そうな描写があるかもしれませんので、そういうのが駄目な人は読まない方がよろしいかと……

 

わたしが自傷行為の存在を知ったのは中学2年の時でした。
ちょっぴり病んでいた先輩が、「ほかの子には内緒ね」と言って見せてきたのです。

左腕の肘よりちょっと手首寄り、つまり前腕の前の方(?)に、うすーいカミソリ傷がありました。躊躇い傷みたいな。私はその時まだ病んでいなかったので、普通に『痛そうだなあ』と思っただけでした。

時は流れ、私は大学生になりました。

病んだ経緯についてはPTSD気味な部分もあるので割愛しますが、精神科で鬱病の診断を受けた私は、慣れない大学生活という事もあり滅茶苦茶な精神状態でした。

高いビルを見ると『何階から飛び降りたら死ねるかな、外階段はあるかな、簡単に忍び込めるかな』と考えてみたり、通販サイトでひたすらロープや練炭を検索(するだけで買わない)したり、自殺に関する本やサイトを読み漁ったり。

でもなんだかいつも苦しくて、つらくて、悲しくて、大学の講義も満足に受けられなかったりする自分を罰したくて、消えてしまいたくて、仕方ありませんでした。
(ちなみにこの時に通っていた精神科はヤブ医者で、強い薬を大量に処方するだけの所でした)

そんな時、中学2年の時の記憶が蘇ってしまったのです。

ちょっと陰がある感じの先輩が、

『こうすればつらさから逃れられるの……(暗黒微笑)』

みたいな感じの事を言っていたな、と。

今思えば本当に馬鹿です。それでも、苦しかった過去の自分はそれしかすがるものがなかったので仕方ありません。あんまり切れ味の良くないカミソリをそっと前腕に当てました。刃がちょっと冷たい。少し力を入れて、引いてみました。赤い線が引かれて、ぷつぷつと血の玉が浮かびましたが、痛みは大したことありませんでした。

でも、何故か心がちょっとだけ軽くなった気がしました。

自傷行為なんかしていると『かまって欲しいだけ』と言われることがほとんどですが、私はそういう人たちだけではないのかな、と思っています。『心のつらさを体の痛みに転嫁する』みたいな、なにかそういう精神状態があるのかなと。難しいことはよく分からないので省きます。

自傷行為はエスカレートします。

はじめは安全ガード(刃についたザラザラみたいなやつ)のついたカミソリしか手元にないのでそれで切りますが、痛みに慣れたり、『この傷、すぐ治っちゃうし、大したことなくね?』と感じてしまうと次の刃物を求めます。

普通の細めのカッター、ちょっと太いカッター、裁ち鋏、実家の包丁(切れ味悪い)……

最終的に辿り着いてしまったのは安全ガードがついていない安物のカミソリでした。

5本1パックとかで売っているやつです。

正直、安物だったので切れ味は全然良くないだろうと思っていたので、いつもよりわりと強く力を込めてからグッと引きました。いつもとは、切った時の感触が全然違いました。音にすると「ズッ…………」って感じです。いつものは「シャッ」「サッ」って感じ。

はじめ、マンゴープリンが出てきた!と思いました。(マンゴープリン好きな人、ごめんなさい)
脂肪組織まで切ってしまったのです。ちょっとびっくりしているうちにマンゴープリンは朱に染まり、思い出したように血が溢れ出しました。慌てて当てたティッシュもあっという間に真っ赤になり、ぼたぼたと床に血が落ちます。やばいです。何がやばいかって、『これは自分じゃ治療できない!親にバレる!』です。

驚くべきことに(?)私は実家暮らしで親にバレないように腕を切っていました。バンドエイドやキズパワーパッドでどうにか出来る範囲なら良かったのですが、その傷は素人目に見ても素人がどうにか出来るものではありませんでした。仕方ないので、母親に言いました。母親は泣きました。病院に行って、縫合してもらいました。正直、切った時の痛みより麻酔の注射の方が痛かったです。

親を泣かせて死ぬほど後悔しても、大学生活がままならなくなり大学を辞めても、家で隠れて腕を切りました。刃物を隠されても見つけ出して切りました。中学の時の裁縫セットの裁ち鋏で切りました。何が何でも切りました。『腕を切りたい』というより、『腕を切らなければならない』気持ちになっていました。

引きこもりニート時代にレジのバイトを始めたものの、そんな精神状態では当然仕事は出来ず、店長に怒鳴られ、凹み、すっかり訳の分からなくなった私は手首を切りました。テレビドラマで手首を切って自殺している人がいたからです。

当然ですが死にません。

病院で縫合してもらっている時、医師が「ここは、生きたい人が来るところだから。」と言ったのが忘れられません。端的に言って絶望しました。もちろん自分にです。

ここから色々あったのですが、長くなりすぎたので割愛します。

22歳になった私は、専門学校に入学し直し、就職して自立したいと思っていました。

 

専門学校で学んでいた内容上、半袖をどうしても着なければいけない授業があり、そういう時は白いアームカバー(100均のやつ。肘用。)を着けて誤魔化していましたが、

『これ、今隠さなきゃいけないなら就職しても隠さないといけないな……』

と思い立ち、はじめて腕の傷を何とかしなければならない事実にぶち当たりました。

色々調べてみた結果、美容整形の分野で傷跡を消したり、薄くしたり、とにかく目立たなくする手術があることが分かりました。それは大まかに分けて3つの種類に分けられ、

①傷跡の範囲をレーザーで焼いて火傷跡みたいにするもの
②傷跡の範囲の皮膚を切り取って、その分の皮膚を太腿とか背中から持ってくるもの
③傷跡の範囲の皮膚を切り取って、腕の皮膚を両側から寄せて縫い合わせるもの

がありました。

外科的な処置についてはよく分からなかったのですが、①だと手術後も結局隠さなければいけないのかな?と思ったので無し、②だと腕が綺麗になっても体の他のところに皮膚を取った跡が残るので無し、消去法で③がいいかなという話になりました。

アームカットの傷を何とかしてくれる美容整形なんて、今まで調べたこともありませんでしたが、検索してみると刺青やタトゥーを消す手術と同じで意外と一般的だということを知りました。

もちろん、(自傷行為ではなく、事故や手術による傷跡は分かりませんが)健康保険は使えず全額自己負担となりますが、『腕の傷跡を消して社会復帰の足掛かりとしたい』みたいなことを力説して親にお金を借りることになりました。申し訳ない。

私は東京でそこそこ有名な病院を探し、そこでアームカットの跡を消す(消せると思っていた)手術を受けることになりました。医師のカウンセリングを受けて分かったことは、『傷跡を完全に無かったことには出来ない』ということでした。

当たり前ですが皮膚を切り取るわけですから、また新たな傷跡はどうしても残ってしまうし、アームカットで皮膚が硬くなった部分は取り除かないと見た目が変わらないことになるため深めに皮膚を切り取らなければならず、新たな傷跡は結構酷いものになるかもしれないと言われました。

それと、私は広範囲の傷跡部分を全部切り取ってその後周りの皮膚をぐっと寄せることで洗濯板のような凸凹が完全に無くなると思っていましたが、周りの皮膚の伸びしろ(いい言葉ですね?)にも限界があり、鬱病で体重が落ちていた私の腕の細さでは全部取りきるほど皮膚が足りないかもとのことでした。

それでも、私は手術を受けたいと言いました。

なぜかと言うと、ちょっとでも見た目が自傷ぽくなくなり、怪我とか事故の説明が出来るくらいの見た目になれば、長袖やアームカバーで隠さなくても良くなり……まあ簡単にいうと『まともな人間になれる』と信じ込んでいたのです。

この「まともな人間になれる」「まともな人間になりたい」という発想そのものが、まともな人間ではしないものですし、第一まともな人間になりたいってなんだよお前は妖怪人間なのかよというツッコミを今の私なら入れられますが、当時の私はそこまで健康な精神をしていませんでした。

もっと言うと、

●自分で腕を切る、自傷行為の傷を付ける→親が悲しむ
●前向きな理由で腕を手術(他人に傷つけてもらう)する→親が『子供が自立しようとしている!』と喜ぶ

みたいな、病んでいて計算高い思考があったことも否定できません。

そんな『合法的な自傷行為』みたいな考え方はあったにしろ、私はとにかく、変わりたかった。暗い部屋に閉じこもって、泣きながら死にたいと喚き散らし、親を困らせて、親が私の相手に疲れて居なくなった隙に、隠しておいたカミソリで腕を血まみれにするみたいな、そういうのもう、やめたかったんです。

斯くして私は手術を受けました。1度の手術では傷跡を少しずつしか取りきれず、3回くらい東京への手術遠征をしました。

 

アムカ跡修正手術の感想ダイジェスト

●金額がとても高額(手術→抜糸を3回繰り返すため)
●局所麻酔の注射が腕を切るより痛い。しかも何度も針を刺す
●いや本当に痛い。看護師さんに左腕を押さえつけられても自分の意思に反してビクビク腕が痙攣してしまう。
●麻酔の注射をしても手術はわりと痛い
●でも皮膚を切る痛みには慣れてるから意外と耐えられる
●……あれ、これもしかして麻酔効いてない?
●注射の方が痛いから麻酔が効いてるフリをして黙って皮膚を切られる(音がグロい。肉をぐちぐちする音)
●手術後は左腕を三角巾で吊って新幹線に乗るので骨折した人みたいになる(骨折したことはない)
●局所麻酔が切れてからが本番だった
●めちゃくちゃ痛い
●抜糸するまでは重いもの持てないので不便
●でも持つ
●めちゃくちゃ痛い
●抜糸(五分)のために新幹線代出して東京行くの正直だるい
●地元の病院で抜糸してもらっちゃダメですかね
●ダメです、経過観察です
●はい
●せっかく痛くなくなってきたけどまだ傷跡取りきれてないから次の手術受ける時の何とも言えない気持ち
●また骨折した人みたいになって新幹線乗って帰る
●とりあえず痛い

まとめると以上のような感じです。

そして、手術も経過観察も終わった現在ですが、

_人人人人人人人人人人人人人人人_
>手術受けなくて良かったのでは?<
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄

この一言に尽きます。

理由は色々ありますが、

●費用対効果(掛かるお金に対して、そんなに腕が綺麗になるとは言えない)
●傷が広範囲(or腕が細い)だと、どうせ取り切れないので手術してもしなくても隠さなくてはならないのは一緒
●最終的に傷跡がどうなるかは、やってみないと分からないし、数年経たないと傷跡の色も生々しいので長期的に見ていかなければならない
●そもそも外科手術にリスクが伴うことを避けられない(ケロイド体質、傷口が化膿しやすい人など。)
●手術を受けなかったとしても、自傷の傷跡も年数経過で薄くなることもあるのでむしろそっちを待った方がいいと思う
●美容整形全般に言えることだが、主治医の腕次第で完成形が大幅に異なる
●首都圏以外の病院ではあまりやっていない

というのが個人的な見解です。
もちろん手術を受けることによるメリットはあります。

●傷の範囲が広くない(or腕の皮膚に余裕がある)なら、傷跡が全部取り切れるので、完全に骨折などの傷跡と言って誤魔化せるかも
●自傷の傷跡を見たくないときに手っ取り早く物理的に取り除けるかも
●腕の自傷跡が無くなれば、もう二度と自傷行為をしない!という決意を新たにできるかも
●つまり:気持ちの問題

まあ、このような感じだと思います。気持ちの問題っていう部分が大きいような気がします。

以上で私の体験談は終了です。

今まで述べたことは私の個人的な感じ方や、あくまで私の場合に限定したことが多くあるので、全ての自称傷に悩む方に言えることではありません。医療行為について専門家ではないので詳しいことは分かりませんし、病院によってはもっと色々な処置法があるのかもしれません。

私の場合は『高い金出して手術を受けなくても良かったな……』という残念な結果に終わりましたが、もちろん傷の程度や受ける処置法によっては『手術して良かった!』と感じる方もいらっしゃるのかも知れません。

とにかく、自傷跡を目立たなくする手術を受けてみたいな……と考えているのなら、自分でよくよく考えた上で、精神科の主治医や美容整形の専門医にじっくり話を聞いてから決めましょう。費用も高額です。おまけに手術を受けた後は、当然ですが元に戻せません。

 

最後に、今現在自傷行為をやめられない方がこの記事を読んでくださっているのなら、老婆心ながら言わせてください。

あなたは腕を切ることも、切らないことも選べるのです。今切らないと心が死んでしまう、自殺してしまう、と思う程つらいこともあるでしょう。死なないために切っている人もいるでしょう。

それでも、あなたの身体はあなたのものです。あなたが腕や手首を傷つけることができるように、腕や手首を守ることだってもちろんできるのです。

今、暗いトンネルの最中にいるようで、未来が見えなくて、自分を罰したくて、生きていたくなくて、消えてしまいたい。そんな気持ちから逃れるためにカミソリを腕に当てる。そういう時期も、長い人生ですから、人によってはあったりするでしょう。

ですが、どうにかこうにか、無様に泣きわめきながらも生きていけるようになる時が、いつか来るかもしれません。可能性はゼロではないのです。社会に出たい。家から出たい。部屋から出たい。とにかく、あなたが一歩進みたい気持ちになった時に、自傷跡はほとんど足枷にしかなりません。

『自分で自分に傷をつけるくらい苦しみ、死んでしまわないようにもがきにもがいて、それでも生きてきた』ことを、腕や手首の傷跡から理解してくれる大人が、医療従事者以外で果たしてどれだけ今の日本には居るのでしょうか。私は24年生きてきて、そんな人に2、3人くらいしか出会ったことはありません。おそらく企業の採用担当者にはいないのではと思います。多分。

いつか来るかもしれない、トンネルから抜け出せる日に、かけてみてもいいんじゃないですか。どんなに無様でもいいから、歯を食いしばって自傷をやめてみませんか。心だけでなく、身体もボロボロになってしまってはあなたがあまりにも報われません。

色々な自傷のやめ方、気持ちのそらし方などをネットで検索して知ることができます。あなたはあなた自身のために、変わることが出来るかもしれません。

暗いトンネル云々みたいな綺麗事はしょせん綺麗事でしかありませんが、私は綺麗事が通用するような世界になったらいいなと思います。

以上、かつては腕をザクザクにしていた人からの、体験談(+α)でした。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

最後にかつて私が亡くした大切な人の真似をして終わりたいと思います。

それでは、お粗末!


【投稿者】
T さん

【プロフィール】
1992年生まれ。大学受験や震災など諸々のストレスでうつ病になり、大学を中退する。その後、色々あって今年の春から社会人。未だ暗中模索。


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