「当事者研究」とは – 当事者研究の進め方、おもしろさ –




初めまして、日和下駄と言います。普段は大学生をやったり、演劇をやったりしています。よろしくお願いします。

皆さんは「当事者研究」という言葉を聞いたことがありますか? 最近はケアの分野や思想の分野でもポツポツと注目を集めているので、聞いたことのある方もいるかもしれません。簡単に説明します。

当事者研究とは、精神障害持つ人たちに向けて就労支援や生活支援などを行う北海道の「浦河べてるの家」で始まった、「精神障害を持つ当事者が自分たちの抱える問題の研究」する活動のことを言います。

具体的活動としては、本家本元べてるの家ではある人の抱える問題に対して複数人でチームを編成し、話し合いながら文字や絵などを用いて問題を明確にしながら研究を進め、最後はその成果を何らかの形で発表するという流れを取っていているようです。ですが、特段方法がカチリと決まっているわけではなく、それぞれの団体に応じて自分達なりの方法で研究を進めています。絶対的な方法が存在しないこと、これもまた当事者研究の特徴です。都内にも、団体はいくつか存在し、池袋で当事者研究等を行う「べてぶくろ」、発達障害者向けの当事者研究を行う「おとえもじて」などが有名です。

僕は2年ほど前に友人に誘われて当事者研究を行う会(当事者研究会)に月1回ほどのペースで1年ほど参加しました。その会の中で当事者研究を行なったわけですが、そこでの活動は自分の中の「生きづらさ」と何とかうまくやっていく方法として面白いなと感じました。今回の文章は、そんな僕の感じた面白さを基に、当事者研究を紹介することが目的です。この文章を読むことで、生きづらさを抱える人たちが、「こういう方法もあるのか」と感じてもらえると良いなぁと思います。

 

当事者研究会ってどんな感じ?

まずは、上での辞書的な当事者研究の説明ではイメージがつきづらいと思うので、実際に当事者研究がどのように行われるのかを、僕の参加した当事者研究会での経験を基に書いて行きたいと思います。なお、当事者研究及び当事者研究会には決まった形はないので、僕の参加した団体以外では別の形で行われているとも多いです。なので、あくまで一例として読んでもらえると良いと思います。

僕の参加していた当事者研究会は「東大誰でも当事者研究サークル」で行われていたものですです。その会は「生きづらさ」という少し大きな問題を抱えている人たちに向けて開催されるため、精神障害を抱えている人から抱えていない人まで、様々な人が集まるのが特色でした。

会では多くの場合テーマが決まっていました。例えば、「自分に自信を持つこと/謙虚であること」や「周りからどう見られているのかを意識すること」などです。コミュケーションに関するものが多い印象でした。

会は広めの会議室のようなところで行われます。参加人数は場合によってまちまちですが、4名以上集まらない場合は開催されないため、最低4名、最大は20名弱になることもありました。席は円上に並んでいることが多いです。時間はだいたい2時間くらいです。

まず初めは、司会者がレジュメを配り、約束事と全体の流れを確認することから始まります。約束事は「無理をしない」とか「相手に意見を押し付けない」みたいな感じです。その後。自己紹介が始まります。自己紹介ではだいたい、呼んでほしい名前(本名でなくても良い)とその日の体調を話します。そこまで終わったらいよいよ「研究」に入ります。

最初はその日のテーマに関して考えたことを順番に一人ずつ語って生きます。パスもオッケーです。そして、それがぞれが言ったことを白板にメモしていきます。

一周し終わったらお互いに話す時間です。質問や共感やここが違うなど色々話します。多くの場合、知らない人同士のためなかなか話が切り出し辛いので、司会者が質問することが多かったです。

そうこうする内に、それぞれの話が深まっていき、詳細になっていきます。そして、司会者もそれを図式化したり、概念を紹介したりします。そんなわけで白板があらかた埋まり、初めは大きかったテーマから、集まった人たちの中での具体的な問題が見えてきたあたりで、前半が終わり、休憩になります。ここまでで1時間くらいです。

10分ほど休憩の間は、気になる人に声をかけたり、ご飯を食べたりトイレに行ったりします。その後いよいよ後半戦です。後半は浮かび上がってきた具体的な問題についてさらに深めて話します。それもまた白板に書かれていきます。そして45分くらいたつと「まとめ」に入ります。

まとめといっても一人づつが自分についての「発見」と、一番面白かった発言を話していくという程度のものです。全員が話し終わったら、アンケートが配られ、紙に5段階評価で今回の会の出来栄えを書きます。下の方には自由記入欄があり、そこには次回以降やりたいテーマを書くこともできます。それらが集め終わったら会議は終わりです。だいたい終わった後に、ファミレスにご飯を食べにいきます。

 

当事者研究の面白さ

というわけで、僕の参加していた「誰でも当事者研究サークル」ではこのように会が進みます。この会では当日話し、自分の問題を掘り下げていく形で行われますが、がっつり研究してきて、学会のように研究発表する団体もあるようです。いろいろですね。

さて、こんな形の当事者研究会に参加してきたわけですが、次にこの会に参加して感じた面白さを書いていきます。それは3点あります。以下順に説明していきます。

⑴自分のことを話すことができる

僕は周りに自分の話をすることがあります。すると、「自分の話をするな!」と怒られます。すると、自分の話はいつでもどこでもして良いわけではないことがわかります。

けれども、自分にとって自分の問題というのはやはり生きていく上で大事な問題ですし、どうしても自分では抱えきれなくなって吐き出したい衝動があります。そんな時、当事者研究会は良い場です。なぜなら、そこは自分のことを話すことが推奨されますし、それを話したり聞くために皆は集まっているからです。

これは案外ありそうでない場所だなぁと思います。また、知らない人が多いのも良いです。例えば、親しい友人や恋人に出来ない相談はもちろんあります。しかし、近しいからこそ話せないことも同様に存在するでしょう。そのような時、その日出会った人たちや、悩みを共有することが目的の人たちと話すことは意義があると感じます。

それとは別に、自己理解が深まるということも魅力です。普段私たちは言葉で考えていますが、自分の話をしないためか、自分を語る語彙をあまり持っていないように感じます。それが当事者研究で自分の話を求められた際に如実に現れます。比喩的に言えば、自分の解像度が低いのです。自分について話すことは、自分の解像度を上げることにもつながります。これも当事者研究の魅力の一つです。

 

⑵他の人の話を聞くことができる

また、他の人の話を聞くことも魅力的です。僕は実際当事者研究を通じて「人間っていいなぁ」と思うようになりました。その理由はやはり人間は一人一人違うのだということを再度認識するからです。

普段、⑴で述べたように私たちは自分の話をする機会はそれほど多いわけではありません。とすれば、他の人の話を聞くことも少ないでしょう。そのような時、他の人は自分が見えている限りの「他の人」として認識しがちです。ですが、私が考える限りでの他の人に過ぎません。ですので、いざ他の人の話を聞くと驚きます。自分が思いもよらないような方法、思考で生きているからです。

その体験はとても刺激的で、面白いものでした。また、自分と異なる彼らを認識することによって、自分の存在も明瞭になります。それがまた、自分の話をすることにつながります。なぜなら自分の発言もまた、彼らにとっては思いもよらぬものと想定できるからです。この、他の人の話を聞いて自分のことを話すことが循環すること、これは良くできたシステムだなぁと感じます。

⑶「私の言葉」を作り共有することができる

ところで、当事者時研究において自分の話をするのには一つ目的があります。それは必ずしも「治癒」や「治療」ではありません。当事者研究の目的、それは自分の抱える問題を「解釈」する「私の言葉」を生み出すことです。順に説明します。

まず、何か問題が生じるとします。すると大体、それがなぜ生まれたのか、どうしたら解決するのかを考えると思います。この「問題を説明づける作業」を、ここでは「解釈」と呼びます。

その時、自分だけではどうにも整理しきれない問題もあると思います。そこで一般的に用いられるのが、既存の言葉を用いることです。それは例えば病名だったり、心理学用語だったりするでしょう。ここで、一旦は自分の中で整理することができて落ち着くわけですが、その後何と無く違和感を感じることもあります。なぜなら、そのような言葉は、自分だけのために存在するわけではないからです。

例えば、自分の抱える問題を「なまけもの」と説明するとします。ですが、実際の自分は何もかもができないわけでなく、例えば勉強はできないけど、お出かけはできる、といった形で、具体的な問題を抱えているとします。その時「なまけもの」という説明はあまりに意味がぼんやりとしていて、自分の抱えている問題を正確に表していないように感じます。

そんな時、そんな自分を楽しいことしかできない特徴から、「あそびもの」と解釈したとします。するとそれはもちろん自分のために自分で生み出した言葉になります。そのような自分の実感に即した言葉は、「私の言葉」として自分の問題について考えていく上で有用に働くことでしょう。

当事者研究は、上で述べたような「問題」を「私の言葉」で「解釈」するという流れによって成り立っています。そして、それを複数人で行うわけですが、そのメリットは二つあります。

一つは、自分以外の視点が介入することで、一人では見えない部分が見えてくることです。これは、⑵でも少し述べたことですが、わかりやすい例を挙げると、夜に一人で自分のアイデンティティについて考えて同じところをぐるぐる回る感覚から抜け出せる可能性があるということです。

そして二つ目、これが重要なのですが、それぞれの「私の言葉」を皆で共有することで、それは「私たちの言葉」に変わっていくのです。

この良い点はいくつかあります。まずは解釈の言葉として他の人の言葉が使える点です。⑵で他の人との違いから自分が浮き彫りになると書きましたが、しかしその上で抱えている問題の間で類似関係を見出すことはできます。

また、当事者研究会では僕の所属していた「東大誰でも当事者研究サークル」がそうであったように、あるキーワードで人々が集まります。そのことにより、問題どうしの類似関係が見出しやすくなる状況にもあります。

そして、ここでは言葉を例に挙げていますが、他の例えば問題との付き合い方なども参考にすることができます。ですので、より大きく言えば、皆で共有できる集合知が生まれることになります。

また、別の側面として、私の言葉をコミュニケーションの中で用いることで、解釈の妥当性が上がることです。もちろん一人でも、確信を得ることができないとは言いません。しかし、多くの場合、他の人に「それいいね!」などと言われることで、解釈の妥当性が増していきます。僕の感じた、当事者研究の面白さは以上になります。

 

メンヘラ.jpを通じて当事者研究会をやりたい

さて、ここまで「当事者研究」の一連の流れについて書いてきました。読んでみるとそれほど珍しいことをやっているわけではありません。

しかし、そのような一見すると当たり前のことが物珍しく感じるのは、日常ではそのようなことが排除されがちなのだなと思います。

また、ここまで良い点ばかり挙げてきましたが、人間が関わる以上うまくいかない点もあります。例えば、会を継続していくことで生まれる空気感により、言えること/言えないことが生まれていくことや、話が苦手な人はプレッシャーを感じてしまうこと、そのような問題を受けても個人が尊重されるためルールなどは作りづらいことです。まあ、やはり良い面は悪い面にもなりうるので、表裏一体ということでしょう。

ところで、実はここまで隠していましたが、この文章の目的は実はもう一つあります。それはメンヘラ.jpを通じて当事者研究会をやりたいので、人を集めたいという目的です。

実は僕の参加していた東大だれでも当事者研究サークルは活動中止中にあります。ですので、現在当事者研究を行なえていないのですが、なんとなくやりたい気持ちがあり、どうせなら自分で会をやってみたいなという思いが生まれました。

そんなわけで、今回の記事の第一の目的は当事者研究の紹介ですが、そこから実際にやってみたいという方に「あの~、僕もやりたいんですがどうですか?」という第二の目的があるというわけです。ちょっと興味あるな~みたいな方、下の方に連絡先が載っているのでご連絡していただけると嬉しいです。

・・・

と、ここまで書いてわかり手氏に見せたところ、「やりましょう!」となったのでやることになりました。以下詳細です。

 

メンヘラ当事者研究会第一回 〜「生きづらさ」ってどんな感じ?〜

日時:7月29日(土) 13:00〜16:00
場所:神奈川県横浜市神奈川区鶴屋町3丁目28-3松原ダイヤモンドマンション202
※階段で2階に上がっていただき、真ん中の部屋です。鍵は開いておりますので、そのままドアを開けて御入室ください。
会費:1000円
※会費は場所代、準備費、今後の活動資金に用いられます。

初回のテーマは『「生きづらさ」ってどんな感じ?』です。

自分自身生きている中で「生きづらさ」を感じることがありますが、考えてみるとそれがどのような感覚( 身体的かもしれませんし、精神的かもしれません)なのかは今まで自覚的でなかったように思います。

みなさんとはなして、各々の「生きづらさ」がどのようなものなのかが僅かなりとも気づける場になると良いと思っています。

「生きづらさ」についてこれまで考えて来た、生きづらさのプロの方の参加も大歓迎です。生きづらさについて教えてください。

また、当会は遅刻、ドタキャン、途中抜け等自由ですのでお気軽にご参加ください。

ご参加される方は下記の参加フォームでご登録していただけると嬉しいです。よろしくお願いいたします。

http://twipla.jp/events/268944

場所取りをチンタラしていたら、手間取ってしまい来週になってしまいました。ギリギリの告知となりましたが、ご参加いただけると嬉しいです。

この中で会費に関してはどうしようかという話があり考えたのですが、継続的に活動していくことを考えるといただくべきではないか、という意見に落ち着いたため、いただく事になりました。ご容赦ください。

また、場所に関しては今回は横浜ですが、次回以降は別の場所にする可能性も濃厚です。そこらへんは皆様の反応を反映させて変えていこうと思っているので、「ここでやったほうががいいんじゃない?」などありましたらお気軽にお申し付けください。

皆様とお話できることを楽しみにしております。

とまあ、ダイレクトマーケティングをしたところで今回の記事が終わります。当事者研究の面白さが少しでも伝わっていれば幸いです。ありがとうございました。

参考資料
『当事者研究の研究』
『べてるの家の当事者研究』
東大誰でも当事者研究会
当事者研究ネットワーク


【投稿者】
日和下駄 さん

【プロフィール】
普段は大学生をやったり、演劇をやったりしています。

twitter : @getateg


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