毒親ブームの背景には何があるのか 「毒親」増加の原因を考える




毒親とは?

少し前からメンヘラの間では「毒親」という言葉がブームになってます。

この毒親という言葉の元となったのは2001年にスーザン・フォワードが記した「TOXIC PARENTS(日本語出版で『毒になる親』)」という本です。

スーザン・フォワードは、カール・グスタフ・ユングが提唱した「子供を飲み込み支配する母…グレートマザー」の概念を、自身のカウンセラーとしての経験を基に、子供を不安/怒り/義務感/罪悪感等の「毒」を用いて支配する「毒親」という概念に再構築しました。

今のネットではメンヘラを中心に毒親という言葉は「子供に対して心理的and/or物理的に抑圧をかけてきたり、暴力を振るう酷い親」という意味合いで使われているかと思います。(本記事で「毒親」という言葉は左記の定義で扱います)

またその毒親ぶりもインフレ化の一途を辿っており「親の異常な情熱の元、虐待のような教育や訓練を受けていた」「親が夢や友達を持つことを許さなかった」等と、HUNTER×HUNTERのキルアみたいな事を言いだすメンヘラも少なくありません。

このような「毒親」が、何故今になって騒がれ始めたのでしょうか?

概念が言語化されたから?
構ってちゃんが深刻ぶるのに使ってるだけ?
自分の人生の失敗を親に求めたいから?
実はゾルディック家が日本中に存在するから?

それらを考えていきたいと思います。

 

児童虐待事情から見る毒親

平成27年の厚生労働省の資料(1)によれば、全国の児童相談所に寄せられる児童虐待報告は年々増加傾向にあり、平成2年には1101件であった相談は平成27年には103260件にまで増えてます。


(グラフ:NPO法人 児童虐待防止全国ネットワークより)

ただしこの相談件数は「社会的関心の広がり」による影響や、平成12年に児童虐待防止法で児童虐待に「心理的虐待」が含まれるようになったことも大きく、この資料を見て「昔より今のほうが毒親が増えてる」と言い切ることは出来ません。

しかしながら、平成18年には全体の17%の割合であった心理的虐待は、平成27年において全体の47%を占めるようになっており、平成27年において身体的虐待が27%、ネグレトが23%、性的虐待が1%なことを踏まえると、現代の毒親事情として「毒親の約半数は心理的虐待を行う親であり、そして心理的虐待を行う親は年々増えている」と言い切ることが出来ます。

(身体的虐待・ネグレト・性的虐待のいずれも相談件数は増加してますが、平成18年から27年における相談件数の増加率は身体1.8倍、ネグレト1.5倍、性的1.2倍に対し、心理は7.5倍です)

そして、この資料において注目すべきは児童虐待の相談件数増加要因として「児童が同居する家庭における配偶者に対する暴力がある事案 」が挙げられていることです。

コレをかみ砕いて言うと「児童の家庭で繰り広げられる親→配偶者、もしくは配偶者→親への暴力行為による直接的暴行ではないが、児童の精神に著しいマイナスを及ぼす虐待行為が増えている」ということになります。

こういった虐待は「面前DV」と言い、児童の心理的虐待の7割を占めて(2)います。

平成27年において身体的暴力が全虐待の27%であることを考えると、27(身体的虐待)+47(心理的虐待)×0.7(心理的虐待に占める面前DV)=59.9…毒親の6割がDVを振るうタイプということなります。

では、こうした「DV」はどういった家庭で起きやすいのか?またDVは増えているのか?と言いますと、静岡市(3)小山市(4)によれば概ね

「子どもと子育て家庭を取り巻く環境は、少子高齢化や核家族化、地域のつながりの希薄化など変化しており、子育て家庭が孤立化し、親の子育てに対する不安感や負担感の増加している」

というような説明で語られています。

簡単に言えば「人間関係に乏しい親は精神的安定が得られず児童虐待する可能性が高い」ということになるかと思います。

実際に厚労省(5)も児童の保護者が虐待に走る要因を

「根強い母親役割の強要や経済不況等の世相の影響、あるいは少子化、核家族化の影響からくる未経験や未熟さ、さらに世代間伝承等その背景は多岐にわたる。それらのストレスのはけ口を、家族内の弱者である子どもに向けるしかない状況で、外れた歯車を一人ではどうにもできずにもがいているのである」

と分析し、児童虐待の要因として「貧困」、そして「人間関係の乏しさ」をあげています。

しかし、こういった説を裏付けるデータはあるのでしょうか?

上記の説を検証してみます。

 

孤立しメンヘラ化する親

人間関係の乏しさが母親に及ぼす影響として「産前/産後鬱」がよく指摘されています。

例えば2013年カラチ大学(6)の研究では「共同家族の女性は、核家族の女性よりもうつ病が有意に少なかった」(比率は共同家族15:核家族9)という結果が出ています。

これは出産and育児経験者が身近にいない為、自身と子どもの体調やメンタルに過度な怖れを抱いてしまうことが原因とされています。

また核家族は、家庭に人が数人しかいないが故に「関係性が暴走」する危険性もあり、1997年に行われたスイスのカップルにおける調査(7)によれば、やはり周りに人間がいないカップルほど「関係性が緊張し」ストレスを溜めやすいという結果が出ています。

そして厚労省(8)も虐待要因のリスクとして

・マタニティーブルーズや産後うつ病等精神的に不安定な状況
・育児に対する不安やストレス(保護者が未熟等)

を挙げており、核家族ないし人間関係の乏しさが母親のメンタルに悪影響を与えるとすれば、ソレは児童虐待リスクと間接的に結びついていると表現出来ると思えます。

では、日本において核家族や地域コミュニティの崩壊は進んでいるのでしょうか?
進んでいるのであれば、ソレと比例して毒親が増えてるというデータはあるでしょうか?

次はソレらを検討してみます。

 

日本の地域社会の移り変わりと毒親

晩婚化に高齢化、それに伴う社会認識の変化により核家族は増えている…という話をよく聞きますが、実は核家族世帯の割合自体はそこまで増えてません。

厚生労働省による平成25年の国民生活基礎調査(9)によれば1975年における核家族は世帯全体の58.7%、2013年における核家族は世帯全体の60.1%です。

しかしながら、日本には核家族とは別に「人間関係の乏しさ」を推し進めるモノがあります。
それが「地域コミュニティの崩壊」です。

内閣府(10)が2005年に厚労省(11)と共同して調査したところによれば、1973年には隣近所と「なにかにつけ相談したり、助け合えるようなつきあい」をしてる方は全体の34.5%でしたが、2003年には19.6%まで減少しています。

また内閣府は地域ボランティアの参加者減少、賃貸住宅による居住年数の減少及びソレに伴う隣近所との関係断絶、そして就業者のサラリーマン化等のデータから「地域社会の希薄化」が急速に進行してることを指摘しています。

ざっくり言えば「自分はこの地域にいるだけ。特に人間関係を構築しようと思わない」という方が増えているということです。

これらの傾向を顧みるに「人間関係において家族が占める割合」は確実に上がっているはずです。

何故なら家族以外の人付き合いが乏しい方が増えてるのですから、蓋然的に家族が持つ関係性のウェイトは当然重くなっていると考えられます。

そして人間関係における家族のウェイトが重くなったからこそ、親がどうであるか?の重要性があがり「毒親が~」と騒ぐ方も増えたのだと、自分は推測しています。

 

核家族と児童虐待

社会福祉法人子どもの虐待防止センターでは、2000年に首都圏に住む500人の未就学児を持つ女性に虐待及び虐待傾向があるかどうかの調査を行いました。(12)

その結果、核家族では児童虐待率が9.1%、虐待傾向群が31.2%に対し、祖父や祖母と同居世帯では児童虐待率が8.4%、虐待傾向群が27.4%というデータが出ました。
(また4世代以上同居家族では、なんと児童虐待及び児童虐待傾向群が0%という結果が出ていますし、これは2世帯の調査結果ですので、なんとも…)

一方核家族の問題としては「人間関係の乏しさ」以外にも、経済的困窮を招きやすい…という面もあり、事実、上記の調査によれば年収600万円以上の世帯の児童虐待率は全て7%を切りますが、500万円代は12.5%、400万円代は12%、300万円代は20%、300万円未満は25%という数字が出てます。

2016年の厚労省調査(13)によれば児童のいる世帯の所得中央値は627万円ですが、三世代世帯の所得中央値は800~850万円、夫婦と児童の世帯の所得中央値は600~650万円、母子世帯の所得中央値は200~250万円であり、当然ですが一般的に世帯内での稼ぎ手or年金受給者がいるほど世帯所得は上がる傾向があります。

また2000年に行われた内閣府の児童相談所への聞き取り調査(14)では、児童相談員があげた虐待に繋がると思う家庭の状況として一位に「経済的困難」があげられており、虐待の要因としてはかなり大きなリスクであると言えます。(因みに2位が周囲からの孤立です)

 

毒親ブームに対する考察

実際に児童虐待が増えているか?に関して児童相談所の相談件数は増加しているとはいえ、「社会的関心の高まり」「児童虐待の定義拡大」により「今まで見過ごされてきたモノ」の可視化が進んだ影響が大きく、一概に結論は出せません。

しかしながら、地域の無縁社会化は確実に進んでおり、そういった環境下においては親がストレスを溜めやすく、いわゆる毒親に変貌してしまう可能性が高いと言えます。

これを裏付けられるかは分かりませんが参考までに述べると、厚労省(1)によれば1000人あたりの児童虐待相談対応件数のランキングは多い順に、大阪府、奈良県、神奈川県…と都市部が続いており、逆にワーストは少ない順に、鳥取県、鹿児島県、山口県…と田舎が続きます。

以上の事から私は、毒親と騒ぐメンヘラが増えた原因を「社会的関心の高まり」と「人間関係の乏しさから、人間関係における家族のウェイトが増し、親がどういう人間であるか?が重要になった。そしてそのような家庭では児童虐待が起こりやすい傾向にあるから」と推測します。

これらの現象を総括する言葉として「毒親」が使われ、今のブームに至ったのではないか?ということです。

そして三世代世帯家庭であり、自然豊かなところに家があり、暗殺業で高い世帯所得を得ているゾルディック家は、むしろ虐待が起きづらい環境である…と結論して、この記事を終わります。

 

オマケ:毒親のジェンダーバイアス

Twitter等を見て「毒親騒いでるのは女性ばっかやんけ!」という感想を抱いたことはないでしょうか?

平成12年の裁判所と厚労省の共同調査(15)によると、虐待を受けた児童の男女比は男子45%、女子55%ですが、平成20年(16)には男女比が男子54.4%、女子45.6%と逆転しています。

特に児童虐待における男女比に有意な偏りは見られず、毒親被害者が女性ばかりという印象は単なるジェンダーバイアスです。


【執筆者】
脱税レイヤ-風呂屋さん

【プロフィール】
脱税がバレて風俗堕ちしたコスプレイヤーの裏アカウントです。表でまだ活動はしています。追徴課税本税返済、延滞税完納まで350万ぐらい。

twittter : @557dg4


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1 件のコメント

  1. あかり 返信

    データに基づいた説得力のある記事をありがとうございます。素晴らしいです。
    子育て中の人間関係が密室的にならないようにするにはどうすればいいか等、考えさせられました。

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