うつ病に「がんばれ」は本当に禁句なのか パターン化された対処法のつらさ




「鬱(病)の人にがんばれって言っちゃいけないんだっけ?」

そう言った人は軽く笑っていた。私は瞬時に、厚くて見えない壁を感じた。

 

■周囲からの大雑把な認識とのズレ

メンタルヘルスや精神疾患に関する情報は、昔と比べたらかなり得やすくなったのではないだろうか。

その理由としてはネット、SNSの存在が大きいだろう。当事者や関係者たちが積極的に情報を発信していくことで、これまで知らなかった人たちの目に触れやすくなり、「なかったことにされる」ことが、少しかもしれないが減っていると思っている。

その一方で、見た目ではわからないことの難しさから、誤解や大雑把な考え方・対処法ばかりが認知されている部分もある。冒頭に挙げた言葉が、例のひとつ。

うつ病であれ何であれ、特定の障害や疾患とっても人によって抱える悩みや状態は異なる。そのため、万人に共通する答えはごくごくわずかなのである。冒頭に書いたようなことをもし言われたら、端的に「人それぞれです」と返してやればいいが、ストレスまみれで余裕がない人にとっては、十分な打撃なる可能性はある。

言った本人はポンと出したつもりなのかもしれないが、精神的に疲弊している人にダメージを与えかねないような言葉を、私は「悪魔の呪文」と呼んでいる。

 

■「治るといいね」に激怒した

一時期、心身がボロボロになりながらもなんとか生きているなかで、いちばん苦しかったのは話し相手たちからくる「悪魔の呪文」であった。

自分なりに悩み、困り、「とにかく一人で抱えてはだめだ、誰かに話して打ち明けてみよう」としたが、相手から出てくる言葉の多くは…………詳しく述べると、書いている本人が苦しくなって文章が続かなくなる可能性があるので割愛するがとにかく、今の私なら笑い飛ばせるものばかりだが、昔の私にとってそれらを言われたときは崖から突き落とされるような感覚を味わったものだ。

特に非常にきつかったのが「治るといいね」という言葉だった。

とある悩みを打ち明けたところ「治るといいね」と返された。このとき何故だがわからないが「何むちゃくちゃなことを言ってるんだコイツは」と心の中で激怒し、ショックを受けたことを今でも覚えている。今振り返って考えると、何をもってして「治す」と言っているのかがわからなかった混乱が怒りやショックにつながったのだろうと。

「治す」って、なんなんだ。

「治す」って、特定の障害・疾患に掛かる前の状態になることか?

「治す」って、患ったことで食らった様々な影響を帳消しにすることか?

「治す」って、薬や治療に一切頼らなくなるようにすることか?

障害・疾患によっては、服薬や治療によって「抑える」ことはできる。しかし「治す」となると話は変わってくる。「治す」という意味では、私の持つしんどさはそれなりに面倒だ。

例えば私の抱えるアレルギーを「治す」なら、スギやヒノキに絶滅してもらわなければならない。しかし、この「治し方」は現実的だろうか?

同じことは精神の病にも言えて、「治す」ことは極めて難しい。

いずれかを我慢して、なんとか「抑えている」。それが私の選んだ答えだ。

 

■相手の話を聞いている姿勢が大切

「だったら、精神を病んでしまった人に何も言えないじゃないか!」と思う人もいるだろう。

だが、しんどさをそれなりに抱えた個人として言うと「別に何が正解とか、無理に何か言おうとしなくてもいい」という答えを提案したい。正確には「話を最後まで聞いてくれ。理解しなくていいから」といったところか。

このご時世、精神的につらい思いをしている人たちは少なくない。自分自身がそうでなくても、周囲にそういう人がいる、ということもあるだろう。辛い思いをしている人たちの話を聞いてみて、思わずびっくりして「何か言わなくては」と思うかもしれない。だがそんな必要はない。あなたと私が異なる人である限り、完全に理解することは不可能だからだ。

そして、正論は時に暴力となるからだ。

とにかくメンタルに関する話は口にすることが難しい。話すだけでもエネルギーを消耗する。話を聞いてもらえないことの苦しみが強い場合もあるだろう。少なくとも私には、言ったところで「悪魔の呪文」を唱えられてしまうかもしれない、という恐怖がある。

だからどうか、もしメンタルのことを相手が話したら「あなたの話を、自分はちゃんと聞いていますよ」という姿勢を見せてほしい。うんうん、とうなずく。それだけでも十分だ。専門的なことは医者や福祉の専門家がすればいい。話がひと段落して、もし相手が少しでも気持ちを落ち着かせたのなら、きっと悪魔の手から離れる力を持てるようになるかもしれない。

 


【投稿者】
えん あきら さん

【プロフィール】
唱えたら唐揚げが手に入る呪文を覚えたい、そんな一般人。
Twitter:@en_akira


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