“子ども”という名のアクセサリー ~洗脳と脅迫による中学受験~




「公立の中学に通う子はバカばっかり。」
「公立の中学に行ったら絶対にいじめられる。」
「公立の先生は頭が悪いし育ちも悪い。」

「そんな学校、行きたくないでしょ?だから今は頑張って勉強しなさい。」

毎日毎日、洗脳するかのように子どもに同じ台詞を吐く親。
これが中学受験をさせる親の実態です。

中学受験は、最近では小学3・4年生からスタートするのが一般的。早い人だと小学1年生から塾に通い始めます。低学年のうちは週2程度ですが、6年生になると週5・6回、帰宅は22時過ぎ。授業がない日もテストがあったりで、遊ぶ暇はなくなります。

でも、実はこれ、ほとんどが子ども自ら望んで塾に通っているんです。

「もう勉強は嫌だ!!受験なんてしない!!」と泣いている子に、落ちついたトーンで、「そっか。しんどかったんだね。じゃあ、塾やめて、受験もやめる?」と聞いてみても、みんな「……やっぱり頑張る。」って言うんです。不思議ですよね。

「絶対に公立中学には行きたくない。」という気持ちが大きいのでしょう。親の洗脳がうまくはたらいているわけです。

私自身、中学受験を経験しており、今も中学受験関連で仕事をしているので、中学受験自体には“賛成派”です。実際に中学から私立の中学に行き、育ちの良い生粋のお嬢様たちに囲まれ、高校受験もなく、のんびりほんわり育つことが出来、とても楽しい6年間を過ごしました。心の底から「この中学に入学して良かった。」と思っています。

塾での思い出も楽しいものばかりで、今もなお、当時の塾友達とは連絡を取り合う仲です。

「親の洗脳は、正解だったな。」とさえ思えます。

しかしこれは、私が無事に合格出来たからこそ。

講師業を始め、そこで私は初めて、中学受験をキッカケに、闇に落ちていく子どもたちの存在を知ることになるのです。

 

ある年の中学受験統一試験日。

試験が終わり、受験生全員が自宅に帰っているであろう時間。もしくは午後からの別の学校の試験を受けに行く時間である、14時過ぎ。「息子がまだ帰らない。」と、あるお母様から連絡を受けました。

試験当日の朝、会場までついていこうとする母親を、「友達と一緒に行くから、ついてこんといて。」と制止し、「帰りも友達と帰るから迎えにこんといてな。」と、何度も何度も言いながら家を出発した男の子。

反抗期ですしね。ここまではよくある話。

毎日の塾通いで電車に乗ることにも慣れているため、お母様も特に心配はせず、「はいはい。頑張ってね。」と送り出したそうです。

帰宅予定時間は13時頃。お昼ごはんを持たせていないので、お腹を空かせて真っ直ぐ帰ってくると思っていたようです。しかし、予定時間を1時間経過しても帰ってくる様子がない。携帯電話も通じない。また、一緒に帰ると言っていたお友達の家に連絡しても、「テストが終わったら走ってひとりで帰ってしまった。」と言っていたそうで、「これはおかしい…。」と、講師の私に連絡したとのことでした。

結果その子は、18時頃、遠く離れた、その子の親戚の家の最寄り駅のホームで発見されました。発見者は、親戚の方。試験が終わってから逃げ出した理由は、「テストが全然出来なかったから。」だそうです。

その子の家庭では、通常の中学受験家庭と同じように「公立は悪。」という洗脳が行われていましたが、それに加え、「私立に行ってくれたら自慢の息子になるけど、公立に行くことになってしまったら最悪。自慢出来ない。」「公立に行くなんて“恥”。」「公立に行くなら、もううちの子じゃない。」というような、かなり暴力的な言葉を日常的に浴びせているご家庭でした。

私もその現場に遭遇したことが何度かあったので、声を荒げるお母様を「まぁまぁ…。」となだめ、後で、その子に「気にしなくていいよ。」「すべり止めもあるからね。」「公立出身でも総理大臣になったり出来るんだよ。」と、母親の言葉の呪縛から少しでも解放されるよう、必ず声がけをするようにしていました。

しかし、やはり母親の言葉は重く、その子は見えない鎖で縛り付けられていたのでしょう。発見された当初、その子は、自分が母親の自慢の息子ではなくなることに絶望し、絶対に家には帰りたくない、帰れない……と泣いていたそうです。

受験結果は予想が的中し、不合格。

失踪した日からしばらく親戚の家にいたようで、その後のすべり止めの学校の受験も放棄。なので、その後は公立に通うことになったはずですが、この騒動を境にお母様と連絡が取れなくなったため、詳細はわかりません。

あくまで噂ベースの話ですが、すべり止めも受けなかったことにお母様が激昂。家族関係が悪化し、地元の公立中学に通うも、すぐに不登校になったと聞いています。

私は、中学受験そのものは否定しません。

背景に親の洗脳があるとはいえ、その洗脳も100%間違っているわけではないと思うからです。

実際に、私立の中学の先生方はとても優秀な方が多く、授業スタイルもとても工夫されいます。例えば英語であれば、会話を重視する学校や、海外での語学研修が必須になっている学校などもあり、高校受験に向けての詰め込み型授業とは全く異なる授業内容を自由に行えるのも、私立の特徴です。

また、高校受験がないというのは、中学から高校生にかけて、自分の趣味や将来やりたいことなどを見つけていく多感な時期に、受験勉強に追われずに済む…というメリットもあります。そして、これは講師として指導していて思うのですが、同じことを小学5・6年生と中学1・2年生に教えるのであれば、断然、小学生の方が飲み込みが早いのです。記憶のスピードも、小学生の方が早い。つまり、勉強効率がいいのです。

中学受験勉強は、基本的に詰め込み型。しかし、詰め込んだらちゃんと詰まってくれる時期に詰めることは、決して悪いことではないと、私は思います。

しかし、これらの受験が、親のエゴで行われているのであれば、話は別。

洗脳までは良いでしょう。そもそも教育というものは、洗脳の一種だと言っても過言ではありません。外発的動機づけから、内発的動機づけへ、うまく移行させるための手段でもあります。

洗脳により、子どもが負けん気を出し、「頑張るぞ!」と思って受験に臨むのであれば、そこから先の受験勉強は、子どもの意志です。周りに負けたくないから、どうしても行きたい学校があるから、受験勉強をしているのです。

でも「この学校に入れなければ無価値。」「合格しなければ、自慢の息子じゃない。」という、親からの脅迫によって勉強している子は、合格出来なければ、その先は地獄。

公になっているケースは少ないですが、自殺者も出ています。

 

多くの人は、「中学受験そのものが親のために行われている」と誤解していると思いますが、それは違います。大半のケースは、親の洗脳を受けてはいるものの、その先は自らの意思で勉強をしています。万が一不合格になっても、子どもを励まし、うまく乗り越えているご家庭が殆どです。

しかし残念ながら中学受験の世界では、体感ではありますが、30人に1人ぐらいの割合で、子どもを“モノ”として扱う親がいます。実際は、もっと多いかもしれません。

子どもが合格すれば、自分の手柄。子どもが不合格になれば、それ以降は人間扱いをしない。そんなことを平気でする親が、30人に1人はいるのです。

子どもという名のアクセサリーを身につけ、それらを自慢することでしか生きていくことが出来ない母親。講師のひとりとして、こういった一部の人たちによって、中学受験業界全体の印象が悪くなることを、とても残念に思います。


【執筆者】
みずゆきりんの中の人 さん

【プロフィール】
みずゆきりんの中の人です。

「中の人?」と思われた方のために、また、そもそもみずゆきりんをご存知でない方のために、簡単に自己紹介を。

現在、Twitterを中心に各方面でちょこちょこ文章を書かせて頂いている“みずゆきりん”は、中の人が別で存在する“架空の人物”です。と言っても、完全に空想世界の人間というわけではなく、中の人の十数年前の姿と今の姿を、足して2で割ったようなキャラクター…といった感じ。“大学生”という設定も、設定であり、かつ実際に中の人も大学生だったりします。再入学ですけどね。

中の人は現在、大学生、兼、講師として、のらりくらりと生きています。
文章もちょこちょこ書いていますが、あくまで本業は、講師業です。

こちらのメンヘラJPでは、講師業としての色を強く出していきたいと思っているので、あくまでも中の人ということで文章を書かせて頂こうと思います。
よろしくお願い致します。


【募集】
メンヘラ.jpでは、体験談・エッセイなどの読者投稿を募集しています。
応募はこちらから


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)