散々な結果に終わった家出を、4年後「やりなおし」してみた話

体験談 粉々粉子 家出

さかのぼること四年前、中学生の私は突発的に家出をしたことがあります。

そして絶対に家に戻らないぞという決心から最小限のお金だけを持って飛び出した結果、自分の倍以上の年齢の男性の家に匿われ、ギリギリセクハラ紛いのことをされて、手渡された二枚の千円札を当てに次の日の夕方に帰りました。

犬に噛まれたようなものとして特にトラウマになることなく処理していたこの出来事を鮮明に思い出してしまったのは、私が極限までイライラしていたからでしょうか。

前籍校を辞めたのちに単位制の高校に編入し、かつての友人より一年遅れて大学受験に差し掛かった私の心はささくれていました。

 

そうだ、また家出をしよう、夜の街を謳歌しよう、と思い立つまでには、実にくだらない経緯があります。というのも私は最初献血をしようと突然思い立ち、家族が帰るよりも先に衝動的に家を飛び出したのです。明らかに最近存在を知った南条あやの影響です。しかしながら思い立った時すでに時刻は夕方の四時半。さらにそこから準備やら移動やらで時間を食い、一時間後、私はシャッターの降りた献血ルームの前で呆然と立ち尽くしていました。

どっとやるせなさが押し寄せてきて、いっそ消えてしまいたいと強く感じたと同時に、私の内側にとある衝動が湧き上がってきました。そうだ、今日は家に帰らないぞ。

齢十八である私は未だ扶養の身で、さして厳しいものではありませんが、一応門限も定められています。完全にヤケからの行動でしたが、この時私の脳裏には前述の四年前の、中学生の時の家出の記憶が浮かんでいました。お金もなく、深夜に自分の身を匿うことができる場所もない十四歳の自分。今では漫画喫茶もカラオケも深夜帯の利用を受け入れてくれます。

そこからは有頂天でした。まだ空は明るかったので、私は店が閉まるまでウィンドウショッピングをして、坂口安吾の白痴を買い、食事も軽く済ませ、来たるべき夜に備えました。休日の街は人で溢れていました。

そして時刻は夜の八時半を回り、私はこの時初めてカラオケの深夜のフリータイムの受付が深夜十一時からだということを知りました。約二時間半暇ができたことに狼狽し一度は帰宅することも考えましたが、近くに漫画喫茶を発見するとほっと胸を撫で下ろしました。その間ド〇ールでカプチーノを飲んだのですが、思いのほか早く飲み干してしまい、十分も滞在しませんでした。

漫画喫茶では登録不要のオープンシートの三時間パックを利用しました。六百円ほどしかかからないことが衝撃的で、定期利用を検討しました。相席の可能性を説明されたものの、私の前の席には誰も来ないまま、十時五十分には店を出ました。

さて、時刻は十一時をまわり、そろそろ帰りの電車がなくなる頃かなぁと思いつつ、私の足は駅とは逆方向に向かっていました。路面店のシャッターがほとんど閉まっていたり、昼間は混雑しているファーストフード店が空いているにもかかわらず、人はまだたくさんいました。まるで知らない世界を歩いているような奇妙な気分になりました。

そしていよいよ待ちに待った深夜のカラオケフリータイムです。私は無類のカラオケ好きで、この日もつい二日前に友人と散々歌ってきたばかりにもかかわらず心が踊りました。受付を済ませた後ほどなくして三階の部屋に通され、気分は私・オンステージです。睡魔を振り切り無理やりテンションをぶち上げ、約二時間半ノンストップで歌い続け、ケラケラ一人で笑っていました。

個人的に一番夜の街を感じられたのもカラオケでした。とりわけ隣の部屋の男女グループはテンションが高く、やたらと歌が上手い男性の声がはっきりと聞こえてきました。あの鐘を鳴らすのはあなたを堂々と歌い上げる様は見事でした。

時々小休止を挟みつつも、退室するまでの六時間、私はひたすら歌い続けました。途中BGM機能を利用してクラシック鑑賞と洒落こみながらも、先の隣の部屋から聞こえてくる曲に便乗して煽るような真似をしたり、仮眠をとる予定をブッチして歌い明かしました。

そうして気付けば時刻は五時十分。五時半の始発で帰るつもりの私はフラフラになりながらカラオケ店を後にしました。早朝だというのにまばらに人を確認できました。私はとにかく眠くて眠くて仕方がなく、とまったエスカレーターをそのまま登ったりしていました。

そんな早朝の駅前で出会った、ベンチで眠っていた三人の男性にはどのような事情があるのでしょうか。一人は大きなリュックサックを抱えていて、残りの二人は社会人らしい格好をしていました。駅も街と同様に、早朝にもかかわらず人の姿がありました。

始発電車に揺られている間にも、停車駅にはすでに人が待機しており、電車に乗り込んできました。普段私が寝こけている間にも社会は回っているんだなぁとしみじみと考えていると、言いようのない不安に襲われ、ぼろぼろの状態で朝帰りをする自分を情けなく思いました。そんなこんなで私は帰宅し、シャワーを浴びて泥のように眠りました。昼過ぎに起床してからもしばらく頭痛が続きました。

同居している祖母と伯母は何も言ってきません。おそらく途中メッセージを送ってきた母に今日は帰らないと告げたのが伝わったのでしょう。一度やってみたいという動機だけで起こした行動でしたが、いざやってみるとそう大したことがないということに気が付きました。楽しかったには楽しかったですが、いたずらに体力とお金を消費してしたにほかなりません。

なにかとヤケを起こしがちな私ですが、これを機に少し地に足のついた考え方ができるようになればいいなと思っています。けれども普段目にすることのない夜の街の雰囲気に触れたことは、私にとっていい経験だったと信じたいです。


【執筆者】
粉々粉子 さん

【プロフィール】
アスペルガーの傾向がある自分を認めるもなかなか受け入れられずのたうちまわってます。


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