「理想の娘」を求める完璧主義な母親に、ADHDを理解してもらえない




12歳の頃、黒柳徹子さんの著作を読んだときに思った。

「私、発達障害か、それに近い何かでは?」

だって一学級に1人の割合でいるって書いてあるし。集団行動ができない、そもそも列にまっすぐ並べない、読書をしていると周りの音がきこえなくなるほどのめりこむ、忘れ物と失くし物が多い、話をきかずに怒られる… 勉強はできるのに通知表はいつも悪い。母親に媚びることを覚え、親子二人三脚で臨んだ中学受験でそれなりの結果を出すまでは、毎日母親に怒られてばかり。もし自分の失敗が自分の努力不足のせいだけではないとすれば…そういう期待感が当時あった。

母親に言った。その後も話題に出したことはあったが、黙殺された。まあ娘の脳がポンコツだとわかってかわいそうなのは本人より親だよね。気持ちわかるよ。

「どうやら私は求められてた娘ではないようだぞ」と気が付いたのは6歳の頃。「自分に似た、優しくて女の子らしい」子供を期待していたのに、現実の娘はどんどん粗雑に不注意に育っていくのは完璧主義の母には堪えがたかったと思う。

向き合ってもらえない感も昔からあった。そもそも母親には若い頃つらい家庭環境に耐えたという自負があり、何不自由なく育てた娘がつらさを訴えるのはただの“甘え”に見えたようだ。

「あんたの悩みなんて大したことない」「(失敗なんて)みんなする。あんたは直す気がないだけ」と言われて育った。言われると実際そんな気もしてくる。本当のことなんてわからない中で、母親は正しいことを言っているように見えた。

母親も自己肯定感が低い。そのせいか自分に非があっても、発言に一貫性がなくてもあまり謝らない(と言うと“お前の被害妄想だ”と怒られると思うが)。怒られ、謝り続けた自己肯定感の低い私もいつしか弁がたつようになって、母親を謝らせたい娘に育ったのだが、その話はまた別の機会に。

 

大学の相談機関でIQテストを受けようと思い立ったのは、社会に出る期限が迫ってきてなにかできないことがあるたびに「ADHD“気味”だから」と言い訳する自分に“ADHDではなくすべてお前の怠慢”という事実をつきつけてぶん殴りたい気持ちがあったからだ。

それにもう親への配慮などどうでもよかった。就職したら家を出て、自分のペースで生活するという夢を見ながら、家庭内で(できる限り)協調的に振る舞ってきたのに、「結婚するまで実家から出さない」と言われた。もううんざりだった。やむをえない事態になってIQテストを受けに行ってる最中だと母親に言ったら「またその話か」という顔をされた。しつこくて申し訳ない、これで最後だからと心の内で謝罪した。

結果は限りなくクロ。言語理解と処理速度がかなり高く、耳から入った情報の処理と社会的な文脈を読む力が全国平均を若干下回る。2つの能力差が大きく、日常生活に支障が出るレベルだと。確かに指示をすぐ忘れるし、新しいミシンが居間に置かれたときも母親に言われるまで視界に入っているはずなのに認識できなかった。「みんなそういうことあるよ」と言われてきたが、もうその“みんな”に苦しめられずに済みそうなのは救いだった。自分の得意なこともわかったし、うまく折り合いつけてこう。私ははじめ前向きだった。

一瞬だけ脱線させてほしいが、うつ病の人に「頑張って」は良くないと言われる(必ずしもそうではないのだと主張する記事をこちらのサイトで読んだ)が、ADHDが判明した人に「普通にしてたらいいんじゃない?」とか「気にするな」と言うのも結構当事者としてはやめてほしいことなのでは?と今回思った。

自分は友達と接するときボロが出ないようにかなり頑張っている。その誤魔化しは普段一緒にいる必要がなく、一緒にいるかどうかも自由に選択できるからこそ機能している。実際ゼミやら、サークルやら、バイトやら、継続的に“ちゃんと”してなくてはいけない環境に置かれた自分はひどいものだ。

今ふって湧いて出た問題ではなく、15年以上悩んで耐えきれなくなって検査に行ったので、「気にするな」と言われても全否定された気分になった。他の方の意見も聞きたいけれど、少なくとも私にはしんどかった。励ましてくれてるのはわかるので言いにくいけれど、そう言ってくれた友達と顔を合わせるのが今は怖い。

 

ここで話題を戻して、事の顛末を。

家族には関わってほしくなかったが、母親には結果だけ伝えた。先に全体的なIQは高いこと。その後能力の差が大きく、ADHDに引っかかること。苦手なことがあるのは努力や性格が100%原因なのではなくて脳の癖の影響もない訳ではないらしい、とも(努力不足なことは認めます)。

そして母親の返答を聞いて、私は自分の見立ての甘さを思い知ることになる。

「聞いて忘れるというより、あんたは聞く気がないだけでしょ?」「だって暗記系の問題がクイズ番組に出たってあんた苦手だからってやらなかったじゃない。そういうの取り組んでたら変わったんじゃないの?」「話の輪に入る気ないでしょ?」

違う、努力で数値は変わるがどうにもならないレベルの話をするためのIQテストなのだと言ったら、もっと否定されそうで怖かった。間抜けな私の理屈から言うと、“娘は発達障害ではない”という母親の見立ては間違っていた上にその主張を長年押し付けてきたのは悪いことだし、一言謝ってもらえるのは当然だった。でも違った。私の期待は大きすぎた。

最後に笑顔で聞かれた。

「それであんたは納得したの?」

私は関係ありませんよ、という顔だった。曖昧に笑って誤魔化した。

母親には関わってほしくないと思ってたのだからこれで満足、のはずだ。とりあえずスムーズではないだろうが頑張って社会人になるつもり。

親と関わらずに一人で生きていけるように頑張ろう、と最近は思っている。

 


【投稿者】
凪さん さん

【プロフィール】
メンタル乱高下しがちな典型的”使えない東大生”


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