抜毛症になって20年。私の抜毛症対策と、抜毛症のお子様を持つお母様方へのお願い




三毛柄と申します。

私が抜毛症になったのは8歳になる前です。まつ毛と眉毛は平気ですが髪の毛を抜いてしまいます。同じ病気の方には希望を持たせることが出来なくて心苦しいのですが、治らないまま20年ほど経ちました。

隠しきれる程度に髪が伸びたことも数度あるのですが、一度抜毛が酷くなると10日もすれば帽子やウィッグなしでは外に出られない姿になります。酷い時期は髪のある部分より抜毛部分のほうが多いです。

昔、掲示板で相談に答えようとするも書き込み規制にあったことを『10年間抜毛症なJKが語るカツラのリアル』の記事を読んで思い出し、読者投稿に踏み切りました。

 

■抜毛症のお子様を持つお母様へ

私が返答しようとした相談は「抜毛症の子供がいます。私も髪を短くしたほうがいいのでしょうか?」というもので、詳細は忘れてしまいましたがもっと長い文章でした。

相談者の方が、その心境に至るほど追い詰められてしまっていることを何より痛ましく思います。同時に見当違いの心遣いにぞっとしました。ショック療法で子供が良くなれば、というものであったとしたら理解できました。子供への思いやりで髪を切ろうとしている善意に恐怖を感じました。

抜毛症のお子様をお持ちのお母様方にお願いしたいことがあります。

自分の髪を短く切るようなことはなさらないで下さい。

何も解決しませんし、子供だった私が悪い意味でショックを受けた親の行いのひとつが、母がショートヘアにしたことです。見ている親も辛く、周囲から親が責められ、自分の育て方が悪いのかと自己嫌悪に陥る、それらもたぶん知っています。ですが、一番困っているのは当事者である子供だということを忘れないで頂きたいです。

現時点での抜毛症の原因は、遺伝子の脆弱性であるだとか、脳の一部の異常だとか、そんな説すら出ています。小児精神科では強迫性神経障害であるとともに、チックの一種でもあると言われたそうです。

子供のまぶたが無意識に痙攣していたとして、本人の意思で治るでしょうか。ましてや親に対する反抗や嫌がらせだと思いますか。もし子供が病気で足が麻痺し、動かなくなったとしたらどうでしょうか。代われるなら代わりたい、自分の足を切ってこの子に与えられるものなら、と思うことはあるでしょう。

でもそれが出来ない以上、車椅子に乗って気持ちを分かち合うのではなく、車椅子を後ろから押してサポートしますよね。足の動かない子供をどう支えていくか、杖は必要か、これから車椅子で生活していくにはどうすればいいか、いつか歩けるようになる可能性はあるのか、そういうことを考えると思います。

抜毛症でも同じようにして下さい。精神の病気でも同じように考えて下さい。お願いします。

見知らぬ他人に聞く前に、子供に直接聞いて下さい。何をどう考えてこの結論に至ったか、全部話してもいいと思います。

「お母さんの髪、見ていて辛くない? お母さんだけ髪長いと気になっちゃう。ドライヤーかけていたら耳ざわり? 家族が美容室行ってきたら気分悪い?」

察して行動する前に、そんな風に本人に聞いてみて下さい。

子供が気を使って本心とは違うことを話しているのではないかと思うこともあるかもしれません。どうしても信じられないのであれば、親を思いやった嘘をつく理由を考えて下さい。子供だった私は、私のせいで・何も悪くないお母さんが・好きでもない・似合わない・見慣れない髪型にしてしまったことがとても悲しかったです。

もちろんこれは私個人の意見なので、全ての抜毛症の子供がこう考えているとは限りません。ですが抜毛症は外見に出る病気です。ただでさえ下がりやすい自尊感情を貶める可能性があることを思い込みでなさらないで下さい。

「二度と髪を抜かないという約束」もなさらないで下さい。インターネットで見ていても多くいらっしゃる印象です。子供でなくとも抜毛症患者はまずこの約束を守れません。

抜毛症患者が身につける必要があるのは、人前で髪を抜かない・極力触らないこと、自分で抜いた髪の始末をする習慣、それから髪の毛を食べないようにすることです。

もしストレスの原因が明らかなのであれば、それを解決する方法があるのか、無理なら少しでも距離を置く方法をお子様と一緒に考えて下さい。残念ながら親の言動が子供のストレスになっている可能性もあります。ですがそれは親の言動の一部であって、親自身ではありません。その違いをわかって頂きたいです。

私はアラサーになった今も、なぜ自分が髪を抜いてしまうのかはっきりと説明できません。親に怒られても泣かれても叩かれても治りませんでした。学校でいじめられても治りませんでした。抜毛が治まる時は、いつの間にか抜かなくなっていて髪が伸びている、という感覚です。本人の努力で治るものではないように思えます。

子供の罪悪感や自責感を強め無意味なストレスを与えるのは悪手で、二次障害を起こす可能性を高めます。悪い例として聞いて頂きたいのですが、私は二次障害が悪化して自殺を試み、その結果ICUに入りました。今もその後遺症が少し残っています。

親のストレスは子供にも伝わります。お子様だけではなく自分も精神的に追い詰められていること、もういっぱいいっぱいなことに気付いて下さい。思い悩み過ぎたせいで、視野が狭くなっている可能性が高いです。日々なかなか治らないお子様の病状にお心を砕いてらっしゃり、お疲れなのだと思います。

難しいこととは思いますが、なるべく悩まず、自分のこともお子様のことも責めず、心に余裕を持って朗らかにお過ごし下さい。それが出来たら苦労しないとも思うのですけれど、少しでも心がけたり思い出したりして頂ければ幸いです。

 

■私の抜毛症対策

以下、抜毛症は治らないものとして生活している私なりの方法です。

私は「治るもの・治さなければいけないもの」として頑張り続けて自滅したので、「治らないし頑張らない」という方向で前向きに対策を考えるようにしています。

 

・バリカンで刈る

私は自毛で出掛けられないほど抜いてしまったら、諦めてバリカンで刈ることにしています。ウィッグがないと外に出れないのは同じなら、治るかもしれない未来のため、毛根ダメージを抑えるための選択です。毛抜きで抜いてしまったとしても、指で何本もまとめて抜くよりはましです。

セルフカットに失敗したのか円形脱毛症かと聞かれる美容室に行くのも、気持ち悪いものを見るような眼をされながら床屋へ行くのも耐えがたいことです。鏡でまばらに髪が残る自分を見るだけでも辛いです。潔く自分で髪を刈り、好きなウィッグで生活します。バリカンとウィッグとインナーの帽子を買っても、安いものを選べば1万円かかりません。

手植えや人毛製、医療用を選べばもっとかかりますが、縮毛矯正をかけた翌月に抜毛が悪化し落ち武者頭になった悲しみを思えば安いものです。バリカンを使わずハサミとカミソリで代用することもできるのですが、私は毎回流血したのでお勧めしません。

もし、引き続きこれを読んで下さる親御様がいらっしゃるのであれば、くれぐれも嫌がるお子様の髪を無理やり刈るようなことはなさらないようお願い申し上げます。

高校生の時から診断書を提出して、ウィッグで登校していました。体育のプールやマット運動は見学です。校則を守った髪型にすること、人にみだりに言わないことが条件でした。ピンで無理やり隠した不自然な自毛より、手入れが行き届いたウィッグのほうが悪目立ちしません。小中学生のウィッグなし時代に比べると、格段に楽になりました。

私はアルバイトしかしたことがないので就職活動についてはお話できないのですが、接客販売もウィッグで行っていました。来客の少ない個人店では問題なかったのですが、チェーンの大型店舗で働いていた際は「ヅラがずれている」とインターネット上に名指しで書かれたことが発端となり、ほぼ強制の自己退職となりました。職種や人間関係によるとは思いますが、多くの人の目に触れる仕事は難しいように思えます。

なお、生え際に跡が残り頭痛がするほどきつく調整していたこと、常に複数のスタッフがいた環境から鑑みて、実際に笑えるほどウィッグがずれていた可能性は低いと思われます。派遣登録等も含めたら20回を越えていますが、面接でウィッグに言及されたことは一度もありません。

 

・ウィッグについて

抜毛症で困るイベントのひとつに成人式があると思います。この相談も数度見たことがあります。

私はコスプレ用の耐熱ウィッグを使いました。パーティーグッズではなく、アニメやゲームのキャラクターの格好をするコスプレイヤー用のウィッグです。大抵は頭頂部に人工皮膚のつむじか分け目がついています。後頭部まで縦に人工皮膚のあるツインテール用のものもありますが、普段使いには不自然です。ウィッグカットをうたっている美容室はとても少ないです。

一般的な美容室で頼むとハサミが痛む、なにより責任がとれない等の理由で断られることが多いのですが、根気良く片っ端から問い合わせていくと、切ってもらえるお店が見つかると思います。問い合わせの際には、後ろの毛を希望の長さにしてもらうこと・長すぎる前髪を揃えてもらう程度で充分なこと・後からクレームをしないこと等をあらかじめお伝えすると良いと思います。

それ以上の注文は難しいと思いますし、自毛と同じような仕上がりを求めるのは無謀です。後頭部のアジャスターをきつめに調整し、被ったまま切ってもらいます。ウィッグの前髪は長めで厚いことが多く、購入時そのままの斜め分けを回避するだけでもだいぶ自然になります。

ヘアセットだけならカットより見つかりやすいと思います。私が当時購入した耐熱ウィッグはヘアアイロンが使えませんでしたが、ホットカーラーは使えました。ヘアアイロンが使えるものでも、ウィッグの扱いに慣れてない場合は失敗が少ないホットカーラーを個人的にはお勧めします。

ピンやスプレーの使用は問題ないことを最初に伝えます。ワックスは洗ってもなかなか落ちないので使わないほうがいいと思います。

成人式以外もイベント事はコスプレ用ウィッグと美容室のヘアセットで乗り切れます。良識のある人はウィッグだと気付いても話題にはしませんし、聞かれたとしても病気で必要だということを伝えて言葉を濁せば深く追求されることはそうありません。「この人カツラかな」と思いながら相手を見ている人もあまりいないと思いますし、フルウィッグに触れたことのある人も少ないので意外と大丈夫です。

日常生活用のセット済みで自然なものが欲しければおしゃれ用のファッションウィッグを購入します。色も形も多く、今まで自分が出来るとは思っていなかった可愛い髪型にもなれるので気分も上がると思います。ただし安いファッションウィッグは毛量が少なすぎることが多く、抜毛部分が多い方には向きません。つむじも不自然なことがあり、被ると頭頂部が盛り上がり頭が三角っぽくゴリラのようになってしまったものもありました。

コスプレウィッグは加工が前提となっているため、毛量が多いです。高いものでも医療用の安いウィッグより安価なので、用途や口コミを参考に選んで下さい。自毛にもよるのですが、私は真っ黒ではなくほぼ黒に見える茶髪を購入しています。サンプル請求ができるWebショップもあるので、少額を惜しまず取り寄せてみることをお勧めします。レディースより数は少ないのですがメンズウィッグもあります。中性的なものもあります。

 

ウィッグの櫛は静電気を起こさないよう、プラスチック製ではなく金属や木で出来たものを使います。理由がない限り平面に置いて毛先からとかします。100円ショップの小型犬用金属ブラシでも代用できるので、気にならないならそれで充分です。その際は床やテーブルを傷つけないよう注意して下さい。美容室に行く時も櫛は持参します。

使用後のウィッグは洗濯用洗剤かシャンプーを溶かし、洗面器で手洗いします。柔軟剤かコンディショナーのつけ置きもすると香りが良いですし、毛が長いものも絡みづらくなります。タオルで挟んで押すように水分をとり、自然乾燥かドライヤーの冷風で乾かします。

毎日見ていると自分では気付きづらくなるのですが、襟足や毛先がチリチリしてきたり、繊維が束になりやすくなってきたら買い換えます。擦れたところから痛んでいくので短いものほど長く使えますし、扱いやすいです。私は4000円程度の安い普段使いウィッグを痛む前に買い換えています。

捨てる前にウィッグカットの練習をしていた時期もありましたが、上達しないのでやめました。器用な方は試してみるのもいいと思います。

 

スキンヘッドにした方や抜毛部分の多い方は、髪の毛を納めるネットの代わりに綿のシンプルな帽子をかぶります。インターネットで探す場合は「医療用帽子」か「コットンワッチキャップ」で検索し、頭の形に合った浅めのものを選びます。シームレスだとなお良いです。明るい色のウィッグを選んだ場合は、その裏地の色に合わせた帽子が無難です。

購入しない場合は、黒いTシャツの裾を自分の頭の大きさに合わせたアーチ状に切って縫います。丁寧な雑巾程度の手縫いで充分ですし、着古したものでも構いません。洗い替えのほか、汗をかいた時に替えられるよう予備を持っておくと安心です。頭皮に直接触れ臭いの元になりやすいので、私は漂白剤でつけ置きしています。

がん治療の方などを対象とした医療用ウィッグにはインナーキャップが付属しているものもあります。ガーゼで出来ていて、シリコンの滑り止めがついたものもあるようです。それのみを購入することもできますが割高ですし、毎日のことなので気軽に洗濯機で洗えるほうが楽だと思います。

 

・美容室について

美容室に対する苦手意識は拭えませんが、抜毛症に理解のある美容師さんとも出会えました。都内です。同じようにお困りの方が検索で見つけてくれたらと思っています。美容室を探す際には美容師さん個人のBlogやSNSを見て、印象の良い方に問い合わせてみるのがいいと思います。

入院患者も利用できる大学病院内の理髪店に通っていた時期もあります。

病院外でも高齢者向けの訪問をしていたり、車椅子で利用できる店舗はお心遣いを頂ける場合が多いです。逆に、スタッフが入れ替わり立ち替わり見に来る、大声でハゲてると言われる、スタッフの技術によって段階的な料金になっている店舗で一般スタッフでは無理だとシャンプー後に幹部クラスが出てきて料金が1.5倍、等の経験をしたことがあるので、チェーン店からは足が遠のいています。

 

・そのほかの症状について

薬が効く場合もあるようなので、困っている方は精神科へ行ってみることをお勧めします。

精神科の処方薬以外だと効果は定かではないのですが、おまじない感覚でサプリメントのグルタチオンを飲んでいます。前はNACを飲んでいました。リポソームグルタチオンは私には高価で続きませんでしたが、1か月経たないうちに髪の毛の手触りがはっきりとよくなりました。抜毛範囲が狭かったころ、皮膚科で円形脱毛症用の外用薬を頂いたこともあります。どれもすぐに効果が出るものではありません。

食毛症も併発している方は、ガムや飴等を常に口に入れておくだけでも抜毛が減る場合があります。髪の毛を大量に食べてしまうと、消化できずに胃の中でスチールウール状に固まってしまい手術で摘出することになる、と子供の頃に小児精神科で聞かされました。実際に2014年と2016年に海外ニュースとして報道されています。症例は見つからないのですが毛根だけなら大丈夫なようで、20年ほど食べ続けている私の胃に今のところ問題は起きていません。

私が初めてインターネットで抜毛症を検索したころは個人サイト時代で『メンヘラ』という言葉はなく『ココロ系』と呼んでいた記憶があります。

その頃から今に至るまではっきりとした原因すらわかっていない、治療法も確立していないのが抜毛症のようです。頼りのお医者様も知識がないことがあります。

9歳の時は思春期になって人の目を気にするようになれば治るのではと言われましたし、18歳の時は誰でも難しい時期だから、と言われていました。メンタルヘルスについては英語圏のほうが詳しいので、WikipediaなりフォーラムなりをGoogle翻訳を通してざっと読んでみるのもいいと思います。

 

■おわりに

明日、特効薬が発見される可能性はゼロではありません。

自分も含め広義メンヘラの全員がなるべく死なないように、少しでも幸せに生きていけたらいいな、と思っています。死なない・入獄しない・他害しない、さえ守れていれば、最低限はクリアしていると思います。トイレ、自分で行ってますよね。食事、ひと匙ひと匙誰かに口に入れてもらってるわけではありませんよね。メンヘラといえど大半の方がこなしていることだと思います。

こんな日常的なことすら重いうつや摂食障害になると難しくなります。健常者でも高齢になったら出来なくなる可能性のあることです。なんとか生活が出来ていてインターネットが見られるというだけで実はちょっと凄いことです。

もっと元気になったら、緊急外来を使う事態は避けるだとか、借金はまずいだとか、そういうことから考えていけばいいと思います。

その先に自律した穏やかな毎日が待っていると私は信じています。
この文章が誰かのお役に立てたのなら嬉しく思います。
ありがとうございました。

 


【投稿者】
三毛柄 さん

【プロフィール】
二次障害のある抜毛症。自殺に失敗しICU生還。話が長い。


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