片耳難聴 声が聞こえない不便さ、障害を理解されないつらさ

コラム 寿司屋

寿司屋と申します。4歳の時におたふく風邪の合併症で、右耳が全く聞こえなくなりました。

おたふく風邪の難聴については、最近ニュースなどでよく話題になることもあり、今回なんとなく複雑な気持ちでこの文章を書きました。

 

私は、左側にいる相手とは普通に話せるけれど、右側にいる相手とは会話が成立しません。そのため「人の話をちゃんと聞いていない」「本当は聞こえるのに無視している」と誤解を受けやすいです。集団での会話は、周りの人が何を話しているのかよくわかりません。自分に向けられた言葉しか聞き取れず、皆が当然知っていることを自分だけは知らない、ということが多いです。

また、騒がしい場所で人の声を拾うのが難しく、飲み会などの場ではストレスが大きいです。飲み屋で難聴側の席に人が座ってしまうともう気が気でなく、愛想笑いしながら必死に聞こえるふりをして、時間が過ぎ去るのを待っています。勇気を出して難聴をカミングアウトしてもだいたいの人は次に会う時覚えていません。健聴者としてそれほど問題なく日常生活を送りながら、誰も難聴者としての私を見つけてくれない、そんな悲しみを抱えています。

そういった障害の性質から、「他人と同じように生活できない」という自覚と、「他人と同じように生活できている(だから辛いのは気のせいだ)」という自覚を両方抱えて生きてきました。

 

小学生の頃は自分の難聴を自覚できず、周囲の状況を把握できず、自分がいじめを受けていることすら確信を持てず過ごしました。中学生になる頃には、話し相手の右側にいれば会話が成立することを理解し、難聴の不便を感じながらも周囲には隠し、ぼんやりしたコミュ障と思われながら生活していました。

この頃は全てが曖昧で、自分と他人の何が違うのか、自分は何ができていないのか知ることができませんでした。学校がちっとも楽しくないのも、毎朝登校中にお腹が痛くなるのも、クラスの子と仲良くなれないのも普通のことだ、これが私なんだとやはり曖昧に受け入れていました。勉強もせず、家ではネトゲに没頭し、人生に対するモチベーションがとても低かったように思います。

変化が訪れたのは高校生になった時です。9年間一緒だった同級生と別れ、誰も私を知らない教室に初めて放り込まれました。誰も私に最初から憐れむような優しさを向けてこない、皆が対等に接してくれていると感じました。

そんな中で、話しかけてくれる友達の話を曖昧に聞き流すことへの罪悪感と、トンチンカンな受け答えを繰り返してまた遠ざけられてしまうのではないかという恐怖がどんどん膨らみます。不安定な気持ちが大きくなり、周囲に理解してもらうために少しずつ難聴をカミングアウトするようになりました。

 

しかし、それでもなんだか楽にならないのです。難聴を知っても、皆すぐ忘れてしまう。どっちの耳が聞こえないのか、次に会った時に覚えている人はほとんどいない。

そしてこれまでの生活で静かにストレスを溜め続けていたことで、「こんな障害を持っている自分はなんて可哀想なんだ」というこじらせた意識が肥大化してしまっていました。困っていることをアピールしては理解されない自分に酔い、でも辛さだけは確かに存在していて、自分の本当の気持ちが分からず混乱していきました。「辛くないのに酔ってる自分」と「辛くて気が狂いそうな自分」が私の中に同居していて、理由の分からない苦しみについて考えを巡らせる日々でした。

ある時、ストレスで健聴の左耳の聴力が落ち、病院に行きました。薬を飲んですぐに回復したものの、私は病院に通い続けました。悪い結果が出るのを期待していました。

誰かに認めてほしくてたまりませんでした。自分が確かに辛いということ、治療が必要なんだということをお医者さんに認めてもらいたかったのです。

「左耳はちゃんと聞こえてるよ、右耳はもう治らないから」と突き放されながら、「でも聞こえないんです、困ってるんです」と訴え続けました。意味が無いことだと分かっていました。両親も「右耳は仕方ないね」と言うだけでした。誰も私を救ってくれる人はいないんだ。私は一生この中途半端なアイデンティティを抱えて、生きるんだ、と思いました。

片耳難聴者は、意外と世の中に多いです。私もこれまで何人にも出会ってきました。でも皆さん明るく生活していて、「ちょっと不便だよね」なんて笑って言うのです。それを聞くたびに、こんなに暗い気持ちを抱えているのは私だけなんだろうか、と虚しさを感じてしまっています。

 


【投稿者】
寿司屋 さん

【プロフィール】
片耳難聴の社会人。


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