僕の中で「努力」の価値が消えた日 無力感が芽生えたきっかけ

体験談 ADHD 社交不安障害 森口世紀 学習性無力感

僕は、努力が嫌いだ。やる気というものも、自分の中にはない気がする。

最近母の紹介で、母の知人が経営する会計事務所で働き始めたものの、その業務の中でもよく注意される。「もっと努力しろ」「もっとやる気を見せろ」と。

しかし、いくらそう言われたところで「仕事に対しやる気を持った上で努力をする」ということは僕にとっては恐ろしく難易度が高い。無論、そこで働くために簿記の勉強をして、3級の資格を取った。だがそれさえも、自分の中では「努力」に分類されず、ただ日々のルーティンの中に「簿記の勉強」を無理矢理ねじ込んだだけに過ぎないのである。

発達障害者は表層を取り繕うことは得意だ。僕にもそういう部分はある。ただ、それはあくまで表面的なものでしかなく、心の奥底ではそうして表層を取り繕っている自分を「くだらないな」と鼻で笑う自分がいることも確かである。

僕がこのような思考回路に至ったのには、とあるきっかけがある。遡ること3年前、僕がまだ映画監督を夢見て、日々自主制作映画の作成に取り組む大学生であった頃のこと。

僕が所属していた映画研究会では、毎年11月末の学園祭に合わせ、上映会が執り行われることになっていた。当時僕は大学3年生、学園祭が終われば、サークルを引退する学年であった。僕は3年間の集大成を見せるべく、超大作の制作に取り掛かった。

端役を含め、総勢10人を超えるキャスト(大学生の自主制作映画にしてはなかなかの数である)、小道具や衣装にほぼひと月分の奨学金を溶かし、寝る間も惜しんで絵コンテや撮影、編集に明け暮れたが、結局その映画が完成することはなかった。上映会直前に編集で使用していたパソコンが故障し、泣く泣く上映会への提出を諦めざるを得なくなったのだ。

正直、悔しくて仕方がなかった。足りない女性キャストを補うために、小さい芸能事務所のタレントを相手側の好意でノーギャラで使わせていただいたりもした。奨学金だって、母に無理を言って使わせてもらった。ただ、それでも結局完成には至らず、後に残ったのは、どうしようもない無気力に取りつかれた自分だけとなった。

なんで、こんなに頑張ったのに。完成させたかったのに。たくさんの人に見てもらいたかったのに。その為に努力したのに、なんで報われないんだ。

その日から、僕の中で「努力」だとか、「やる気」だとか、そういった言葉や概念は一切価値のないものとなった。

次第に大学にも通わなくなり、単位が足りずに4年生の3月に自主退学することになった。その後フリーターとして働き始めたが、前述する無気力と仕事のできなさからなかなか長続きせず、去年の11月にADHD(注意欠陥多動性障害)と社交不安障害の診断が下った。

現在の職場には成り行きで障害をオープンにして働いているが、それでもなかなか理解が得られず(無論、上司も理解しようとしてはいるのだが)、自分の居場所を得られずにいる。

職場のパートで自身も発達障害児を子供に持つ人に「あなたがしていることは発達障害の名前に甘えているだけ」と指摘された。確かに甘えもあるのかもしれないが、だとしても僕は、あの日感じた挫折感を、常にまとわりつく無力感を、払拭することは難しいと思う。たとえ今後どんなに成功体験を積んだとしても、あの経験が消えるわけじゃない。

やる気がないと生きてはダメですか?努力ができないと生きてはダメですか?

たとえ努力ができなくても、やる気を持つことができなくても、それでも僕は人並みに生きたい。

それが許されないのだとしたら、僕はどうすればいいですか?

社会に迎合するために、理解もできない努力をして、ありもしないやる気をあるように見せ、心をすり減らしながら生きていくしかないんですか?

誰か、教えてください。あるいは、あの日の「できなかった僕」を許してください。

それでは。

 


【執筆者】
森口世紀 さん

【プロフィール】
1994年生まれ。22歳の時にADHDと社交不安障害の診断を受ける。学生時代から学習性無力感に苛まれ、大学中退後様々なバイトを転々とし今に至る。
Twitter:@toaruotoko1994
ブログ:森口世紀‐低能力高圧的


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8件のコメント

さがら 返信

こんにちは。
気になったのでコメントさせていただきます。
端的に言って、人並みに社会生活が出来ているならそれで良くないですか?
職場で色々と言われるのかもしれませんが、普通に勤務して給料も貰ってるんですよね?
問題なのはその周囲に合わせなければ人並みに生きられないと思っているご自身の考え方だと思います。
もし自立した大人として扱われたいなら、様々なことを自分で決める練習をした方がいいと思います。
どうしたいのか分からないなら、どういう選択肢がありそうか、調べて動いてみましょうよ。

森口世紀 返信

コメントありがとうございます。
職場では僕のやる気のなさもあり、監視の意も含めて上司がいる時のみしか勤務させてもらえず、月収入が毎月5万ほどしかもらえません。
到底人並みとは言えず、医者に相談しても「不満なら辞めて他を探すしかない」と言われますが、過去の経験や自分の性質を考えても職を変えたところでどうにもならないことはわかりきっています。
自分でもカウンセリングなど抜け出す手段を調べてはいますが、なかなか決断が難しく、「どう動けばいいのか」さえもがわからない状態です。

さがら

勤務時間が制限されているのですね。
あまり細かいことを言っても仕方がないと思うので、私の考えを少しまとめて書きます。

まず、世の中には無数の選択肢があります。
「①事務会社 ②営業会社 ③研究会社、以上の中でどこに就職して生活しますか?」などという単純なものではありません。
選ぶ側としては、選択肢を絞ってもらえた方が楽ですけどね・・。

いくら過去の自分を振り返っても、テキストとワークブックでお勉強をしても、実際に経験することによって得られる知恵は身に付かないですよね。

私自身、学校生活には疑問ばかりで不適応を起こし、中退や留年を経験し、よく知らない業界・職種の会社員になって日々を過ごしていると異動があり・・いつの間にか大学生の頃に思い描いていたような職種の仕事をしている、といったこの頃です。
「自分で掴み取った」というような感覚は殆どありません。

森口さんにもいずれ転機が訪れると思います。
その後にどうなろうと、自分の生活ですし、まだ何年も続く人生の経験ですから、じっくりと納得のいくように取り組んでみてください。

余談ですが、今までの自分とは違う経験をするためには「ちょっと失敗しに行ってくる」ぐらいのスタンスがお勧めです。




くま 返信

初めまして
まず、最初に言いたいのですが
「生きていたいなら生きていていい」と思いますよ。


その上映するはずだった作品のデータはまだ残っていますでしょうか?
残っているなら、完成を目指しては如何でしょう?

「できなかった僕」を許せるのはあなた自身だけです。

黒田 返信

努力、難しいですよね。
私も一時期はやろうとしていた事がありましたが努力を続けると言う事がどうしても出来ず、精神的に病んでしまった為、今は全くしていません。
思うのですが多くの人が言う努力とは我慢の事だと思います。
そして今まで生きてきて分かった事があるのですが、人は我慢する事と自分を責める事で容易に不幸になります。
私には森口さんの現状を打破する方法は分かりませんが、少しでも良い方向へ向かう事を祈っています。

徘徊大好き 返信

こんにちは。大学生ですが、似たような感覚を今感じています。

というのも、大学で宗教学をやりに行ったつもりだったのですが、私は宗教を通して自分を見てたらしく、じぶんにてらしあわせてかんがえたり、またこの頃社会が云々とか人間が云々とか、相関関係みたいなのを考え続けたりするうちに、生きる上での必要性をあまり感じなくなってきました。学問を通して、「知る」ことはとても素晴らしいことだと思います。しかし、私は「知る」以前に知らないことも多いし、大学を大学として純粋に楽しむにはあまりにも早すぎたような気がしますが、どうも大学は私のような感覚を覚えている人間には時間を与えてくれないようで、とりあえずもう「卒業」こればかり考えるようになってしまいました。それ故に無力感で、帰って卒業から遠のき、非常にこまっています。

はるき 返信

私は十数年来の友だちに
「わたし、昔から『努力』って言葉が嫌いなの」
とはっきりと言われたときはっとしました。

一般的に努力は良いことと考えられているし生きてく上で必要なものと捉えられがちだけど、そういう考え方をする人もいて、それがいけないなんてこと誰にも言えないのだなと堂々と言い切るその姿を見て私は思いました。

その子は体調を崩しがちで親の援助を受けながら細々とバイトをして生活をしています。

その子を見て私は努力をしろとは思いません。努力を嫌う彼女だったからこそ分かる痛みや彼女だったからこそ受け入れてもらえた私の弱い部分があると思うのです。

森口さんの悩みへの回答になっていないとは思いますが、努力(自分自身や他人から努力と評価されるもの)は生きる上でそこまで必須条件じゃないというか、必要じゃない人にとってはなくても別に良いんじゃないでしょうか。
自分がした方がいいと思うなら必要に応じてしてみるかくらいの認識でいいんじゃないでしょうか。

仕事だとノルマとかあるかもしれないのでそううまくいかないかもしれませんが…。


(余談ですが、それだけ力をかけた映画なら見てみたいです。ぜひ、どこかで公開して欲しいです。)

猫丸 返信

声優の緒方恵美さんが罹患しかけた状態とよく似ていますね
他サイトの記事ですがあなたの一助になれば幸いです

「エヴァ」声優緒方恵美が告白 「うつ病にかかりかけていた」
http://news.livedoor.com/article/detail/4155338/

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