「死にたい」と検索したら「死んではいけません!」と言われるのが嫌だった
「死にたい」と検索すると「死ぬな!」と言われる現在のWEB
現在Googleで「死にたい」と検索すると、まず最初に目につくのは「こころの健康相談」の電話番号。
次に出てくるのが自殺問題に取り組むNPO法人の連絡先で、3つ目が「死んではいけません!」みたいな内容の個人ブログ。
とりあえず「死にたい」と検索窓に打ち込むと、全世界から「死んではいけません!!!!」と絶叫されるのが2016年の現在の日本語ウェブの状況らしい。
当たり前の話だが、「死にたい」というキーワードは「検索」ではない。
「死ぬ方法」ならわかる、検索だ。「死にたい気持ち うつ病」も検索だ。検索とは何らかの知識を得ようとする行為であり、よって当然すべての検索には(曖昧な場合もありうるが)目的というものが存在する。
しかし、繰り返すが「死にたい」は検索ではない。
それは単なる感情の吐露だ。知識を検索することを目的とした文字列ではない。どこにも吐き出せない感情が、検索エンジンの検索窓という虚空に表出したものだ。
つらい感情を抱えつつも、それを友人や知人や公的機関に吐露できない者だけが「死にたい」と検索エンジンに打ち込む。
現在、Googleという虚空に「死にたい」という言葉をぶつける者は、日本だけで毎月約25万人存在する。
「死にたい」と検索した時の、本当の気持ち
ところで皆さんは検索窓に「死にたい」と打ち込んだことはあるだろうか。
「死にたい」というキーワードは毎月25万回、1年間に300万回も検索されているわけで、それを考えれば意外と国民の1割くらいは検索したことあるのかなと思わないこともないのだが、一部の人がめちゃくちゃ検索しまくっているであろうことを考えると経験者数はこの1/30、10万人くらいになるのだろうか。
ちなみに僕はこの概算10万人くらいのうちのひとりであり、かれこれもう30回くらいはGoogleに「死にたい」と打ち込んだことがある。
とりあえず身体が動かす、指くらいしか操作できない時、指しか動かないので大抵スマホをいじっているのだが、ソーシャルゲームもSNSも全くやる気が起こらず、とりあえず画面を見つめているうちになんとなく検索窓に「死にたい」と打ち込む。
この時ぼくは何も考えておらず、完全に自動で指が動いている。恐らく独り言のようなものなのだろう。インターネットにあまりに長くハマりすぎると、口を動かすよりスワイプで文字を入力する方が楽になるのだ。
そして「死にたい」と検索すると、「あなたはかけがえのない、大切な存在です」だの「日本の自殺・うつ問題を解決したい」だのの文言が目に飛び込んできて、なんとなくイラッとするのである。
これはメンヘラならわかると思うのだが、「死にたい」という独り言は「私は今すぐ自分の生命活動を停止させたいです」という意味の言葉ではない。
「つらい、きつい、だるい、身体が動かない、仕事したくない、学校いきたくない、恋人と別れてつらい、自分が嫌だ、もう酒をやめたい」
そんな感じの「負」の感情が、言語化できないまま脳の中を駆け巡り、臨界を超えたとき出てくる言葉が「死にたい」という言葉だ。
なので、「死にたい」という言葉に対応する正しい慰めの言葉は、人の苦しみの数だけ存在する。それは「あんなやつ別れて正解だったよ」かもしれないし「学校なんか行かなくてもいいじゃん。ホームスクーリングとかあるよ」かもしれないし「まぁ今日のところは有給取って休もうや」かもしれない。
ただ少なくとも言えるのは
「死んではいけません!生きてください!!!」
みたいな、健常そうで正義感に燃えた人からの説教が、正しい慰めの言葉である可能性は極めて低いだろう、ということだ。
勘違いしないでほしいのだが、僕は自殺対策におけるゲートキーパー活動を否定しているわけではない。
「こころの健康相談」や、そこに従事している人たちのことも尊重している。
ただ、負の感情の吐露に対して上から目線で説教してくる人はウザいし、そういう人たちの活動は(おそらく)希死念慮に対して極めて限定的な効果しかないのではないか、という個人的な感想を呟いてるだけだ。
だいたいゲートキーパー活動は基本的に傾聴と共感をベースにしているわけで、「死んではいけません!」「あなたは大丈夫!」みたいなウエメセのメッセージはゲートキーパー活動の主旨から完全に外れる。あえてキツい言い方をすると、他人に対する共感能力のない人の自己満足だなぁと思う。真剣にキツいときに「死にたい」と検索してそういう人たちの絶叫が流れてくると、メンヘラとしてはてめぇが死ねクソが、と思ってしまうのである。
「死にたい」メンヘラたちに必要なもの
さて、じゃあ「死にたい」と検索するようなメンヘラには何をくれてやればいいんだ、という話になるわけだが、僕はこれは「暇つぶし」と「共感」だと思っている。
死にたさには波みたいのがあって、例えば死にたさMAXの時にはベランダの手すりをじっと見つめていたりするわけだけれども、その5分後にはその感情は薄れてエロサイトとか見てたりすることもある。極度の「死にたさ」の波をなんとかやり過ごすことができれば、あとは結構自然に回復したり、死なずに済んだりする場合も多々あるわけだ。※1
なので「死にたい」と検索したときに、なんとなく暇をつぶせて共感できるようなメンヘラ向けコンテンツが出てくると、まぁメンヘラとしては大変ありがたく暇をつぶせるなぁと。そして結果として自殺する機会が減るのかなぁと。そんな感じの思いつきに行き当たった。
そして共感というのはまぁ、馴れ合いである。これは経験則だが、馴れ合いは極めて重要だと思う。馴れ合いが下手なメンヘラから死んでいく。人間は社会性動物ですからね。
もちろんリアルな人間関係が豊かなのが一番いいんだけど、豊かなリアル人間関係を構築できる人間がそうそうメンヘラになるか、という話でもあり、まぁ難しい。ただ疑似的なコミュニケーションとして、各種メンヘラが共感可能なコンテンツが置いてあるというのも価値があるのかな、と思う。ということでので、暇つぶし兼共感できるようなコンテンツとかを置いとくと良いのだろう。
当然「死にたい」と検索するようなメンヘラ向けのコンテンツなので、ダウナーで、テンション低めで、だけれども脳にスルッと入るような、そしてほんのちょっとだけ前向きで共感できるような、そんなコンテンツだと良いかなーと思う。
なんかネットのおもしろ記事ってテンション高くてメンヘラには読みにくいですよね。多少ダウナーな方が半分脳が死んでるときとかに読みやすいのではという気がしてる。※2
というわけで「メンヘラ.jp」などというメンヘラ専用サイトを立ち上げてしまったのは、こんな思惑に依るのですというお話でした。
まぁウエメセの説教が検索上位にガンガン出てきてムカつくというのと、メンヘラが死にたい気分の時に気を紛らわせて共感できるコンテンツって必要だよなというのと、自分がそういう系のコンテンツを書きたくなったというのと、あとノリと勢いなど色々な事情が混ざり合ってこんな企画(つっても個人企画だが)が実現してしまったわけではあるのだが、言語化すると多分こんなことを考えてこのサイトを作った気がする。
とりあえず2カ月くらい毎日更新して、需要がありそうだったらそっからも更新し続けるんでよろしくお願いします。
かしこ。 2016年7月16日.
※ 1これはもちろん医療と周囲のサポートが何より大切なことはが前提だけど、メディアを通して可能なことは何かという話です。
※2これは早いうちから明言しておきたいんですが、僕は「メンヘラ神」系は目指しません。自傷や自殺未遂をコンテンツ化することは忌避します。病を受け入れることと病を肯定することは違う。
【追記】
この記事がどうやら「死にたい」というキーワードのかなり検索上位の方に出るようになったらしく、僕と同じく「死にたい」と検索した皆さんから日々たくさんのコメントを頂くようになりました。
自分の内心の、かなりデリケートな部分を晒したつもりなので、筆者としてはなんとなく恥ずかしくもあります。ただ「共感できた」「やっと自分の気持ちを表す言葉をみつけた」みたいなコメントも頂き、少しは誰かの役に立てたのかな…というささやかな嬉しさもまたあったりします。
この記事を契機に、同じく「死にたい」という思いを抱えながら生きるみなさんや、また実際に自殺を図ったものの生き延びた…という方からもお便りをいただくようになりました。
それらの記事は以下のタグの中でまとめられています。
「死にたい」と言葉にしてしまえばたったの四文字ですが、その内実はひとりひとり違うものです。もし良かったら、彼ら/彼女らの抱える言葉も読んでくだされば幸いです。
【関連記事】
「死にたい」まま生きるために 希死念慮と共に生きる人々のストーリー
【執筆者】
小山晃弘
【プロフィール】
メンヘラ.jp編集長。
メンヘラなりに前向きに生きていきたい。好きなメンヘラ作家は永田カビ先生。
Twitter:@wakari_te
【関連記事】
・「死ぬ権利は奪えない」 自殺志願者と向き合う電話相談員の声
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