精神科での入院治療 「任意入院」と「措置入院」の違いについて
「入院はいやだと無理にがんばってしまう患者さんも多いんですが……あまりひどくならないうちに任意入院すれば、短い期間でしっかり治療ができるんです。またつらくなったらいつでも来て下さい」(カクヨムにアップした『精神科閉鎖病棟任意入院日記』より抜粋)
こんにちは、福井真世と申します。長い前置きを失礼いたします。でも、任意入院の一番のメリットって看護師さんのこの言葉に集約されると思うので敢えて文頭に置いてみました。
初めての方も多いと思うので自己紹介を。
私は統合失調症で二度の措置入院(医療保護入院)と一度の任意入院を経験しています。
メンヘラ.jpにアクセスする方のほとんどが「入院」のふた文字に少なからず関わりはあるのではないでしょうか。たとえばご自身でなくても、ご家族が、とか、友人が、とか。
または入院したことが無くても、入院を迷っている方、入院を勧められている方もいらっしゃるかもしれませんね。
精神科にかかる前、(対外的には)健康だった頃の私は、精神科に対して実はものすごく抵抗感がある人間でした。はっきり言ってしまえば精神科って「怖い」し、そこにかかっている人たちは「よっぽど深刻」で、入院した先は「自由なんて無い」「檻の中」といった穿ったイメージを持っていたのです。
だからこそ、精神状態が悪くなってしまったときには、無理やりに家族に病院に連れていかれて措置入院の憂き目を負った、ともいえます。自分が抱いていた偏見が、自分の首を絞めたのです。
「どうしても眠れない」「食事がのどを通らない」
このサインが出ていたときにおとなしく受診していたら、任意で入院していたら…….。
もしかしたら統合失調症を発症することなく、別の人生を歩んでいたかもしれない……なんて薄ぼんやりと思うこともあります。
三回、入院してみてわかったのは「措置入院」の率の高さです。任意の方はほとんどおらず、自殺を図ってそのまま運ばれて入院、とか、私みたいに家族に連れてこられて、とか、診察室で暴れてしまって、とか、そういう流れで入院する方がほとんどなのです。
だから「任意入院」のハードルの高さはわかります。でも、本来なら自宅療養でなんとかなるグレーゾーンの方(或いはその家族の方)にこそ読んでいただきたいな、と思ってこの記事を書きます。
万一、レッドゾーン(措置入院)の憂き目にあったときのデメリットも併せて。
病院によって制度の違いはあるかもしれませんが、私がかかっている病院では任意入院の方のみ大体の入院期間を医師との話し合いを基にして決めることが出来ます。ちなみに、措置入院となると、入院期間に自分の意思を介在させる余地などほとんどありません。できるとしたら退院が決まったけど何曜日がご家族の都合がいいかな? くらいのもので。
実際、私も措置入院の時は二回とも三カ月以上入院させられましたが、任意入院の時は当初決めた一か月より短いぐらいの期間(三週間とちょっとぐらい)で退院となりました。縮まることも、勿論あります。
ただ注意したいのは病状が悪ければ医師の采配で任意入院から措置入院に切り替わってしまうこと。そうなると最初に約束した入院期間はあっさり反故にされます。きちんと休養するという意思と態度を保つことが大事です。
措置入院と比べて「平易」「取りやすい」であって、ハードルは高いし、話の持って行き方に注意が必要(看護師に無理強いしない、あくまで許可の権限をもっているのは医師なので、医師にちゃんと許可をとっておく、或いは確認しておく。もし無理だと言われたらあっさり引き下がってこだわりを見せないのがコツ)ですが、措置入院が外出の検討に一週間とるとしたら、任意入院の場合は二、三日くらいの検討期間で結論をだしてくれます。
私の場合は入院した次の日には単独での院内外出(院内散歩)をしていましたし、次の週には外泊の許可をもぎとっていました。措置入院の時は、院内外出は看護師か家族との付き添いが必須で、その権利をもらうのにも一カ月以上かかりました。院外外出、外泊に至っては二カ月かかりました。
任意入院で一番驚いたのは院内外出の許可が下りた瞬間に携帯電話が使える許可も同時に下りたことでした。
私が電話(通信)に対してそれほどこだわりを見せなかったのも要因の一つかと思いますが……それにしても措置入院の時のテレホンカード方式(一日三回までしかかけることが許されない)と比べると格段の待遇の良さです。
持ち物もお金の管理も自分で出来ると確認されたらほぼ自分の自由にできました。あ、もちろん危険物(刃物、紐類など)の持ち込みは駄目ですよ。念のため。
任意ならある程度自分で「この薬より、こちらの薬の方がいいです」とか「やはり昼間も眠たいのでもう少し減薬をしたいです」などの意見を聞いてくれやすいです。
(私が任意入院した目的がほぼほぼ減薬だった、というのも少なからず影響しているとは思いますが)
投薬の際にも「何」という薬を「どれくらい」増やすか、あるいは減らすかをきちんと教えてくれます。ちなみにですが措置入院の時は飲んでいる薬の内容や量は薬袋管理になるまで、一切教えてくれませんでした。今から考えるとあんまりだな、と思います。
というわけで、代表的なメリットを書きだしていきましたが、総じて任意入院の方が「医師からの許可がおりやすい」「こちらの意思を尊重してくれやすい」ということは肌で感じました。裏を返せば、措置入院の時はこちらの意思は基本的に後回しだし、ものすごく自由を制限される、ということでもあります。
措置入院の時は医師が許すまで、場合によっては飲水も、排泄も、ベッドから出れる時間すらも決められてしまいます。恐ろしいです。正直、もう二度と措置入院だけはしたくない……。
つらつらと書いていきましたが、そもそも
「そんな思いまでして入院なんてしたくない」
「任意だって入院なんてごめんだ」
という感想を抱いた方もいるかな、と思います。
まず、念押ししておきたいのが入院は「収容」ではなく「治療」のためにある、ということ。
医師や看護師がつきっきりで自分の容態をみてくれ、必要に応じて投薬や生活の管理をしてくれること。これは入院の大きな利点だと私は思います。
そして重複しますが、病状によっては任意入院から措置入院に切り替わることもあります。
そうならないための心構えも箇条書きで書いておきます。
・入院当初に『病状によっては措置入院になることもあります』『医師の指示に従っていただきます』等の書面にサインを求められますが、これらを拒否しないこと。理性的に話が出来ない人間とみなされて措置入院コースまっしぐらです。心理的抵抗があるのはわかりますが最低の通過儀礼です。
・監視が緩いからと言って自殺を図るのは止めましょう。場所が場所だけに100%助かってしまいますし、措置入院へのレールが敷かれます。
・措置入院の方に「任意だと携帯電話が使えるんだよー」「私はこんな許可が下りたよー」などと安易に自慢はしないように。トラブルの元です。せっかくの許可をとりあげられることにもつながります。
・退院が決まっても、ハイになって言いふらしたりしないように。それで退院が延びた任意入院の方を知っています。
・暴力(しぐさなども含む)暴言は任意入院取り消しの大きな要因です。物を壊す、叩きつける威嚇行為なども含まれます。
・大体の場合において看護師も医師も最初は入院患者が「きちんと冷静に、理性的に行動できる人間か」「我慢できる人間か」「虚言を言わないか」「沈黙を守れるか」を観察している節があるので最初は許可がおりにくくて、或いは信用が無くて当たり前です。任意なのに許可が下り難いと文句を言うのはちょっと待って、二、三日我慢するだけで待遇が違ってきます。信用の貯金(ゲームをしている方なら好感度を貯める、と言ったら伝わりやすいかな)をして踏ん張りましょう。
任意入院についてもっと知りたい方のために、カクヨムという小説投稿サイトで『精神科閉鎖病棟任意入院日記』を書き上げました。宣伝みたいになってしまって恐れ入りますが、もしよかったら読んでみてください。
入院生活の様子(お風呂、食事、物品管理、読書、退院指導etc…)についても描写があるので入院したことがない方でもイメージが掴みやすいと思います。冒頭での看護師の言葉はこのエッセイ(小説)から抜粋しました。
そして最後に。記事の執筆にあたりご協力くださったみなさん、ありがとうございます。
少しでも役立つ記事になっているといいな、と願っております。
【執筆者】
福井真世 さん
【プロフィール】
大学在学中に統合失調症を発症。措置入院2回、任意入院1回を経験しています。
公的機関に就職し婚約するも、職を失い、婚約破棄され、今は障害年金を受給中です。
Twitter:@fukui_mayo
note:https://note.mu/mayoi_cat
カクヨム:https://kakuyomu.jp/users/mayoi_cat
こんにちは、福井真世と申します。長い前置きを失礼いたします。でも、任意入院の一番のメリットって看護師さんのこの言葉に集約されると思うので敢えて文頭に置いてみました。
初めての方も多いと思うので自己紹介を。
私は統合失調症で二度の措置入院(医療保護入院)と一度の任意入院を経験しています。
メンヘラ.jpにアクセスする方のほとんどが「入院」のふた文字に少なからず関わりはあるのではないでしょうか。たとえばご自身でなくても、ご家族が、とか、友人が、とか。
または入院したことが無くても、入院を迷っている方、入院を勧められている方もいらっしゃるかもしれませんね。
精神科にかかる前、(対外的には)健康だった頃の私は、精神科に対して実はものすごく抵抗感がある人間でした。はっきり言ってしまえば精神科って「怖い」し、そこにかかっている人たちは「よっぽど深刻」で、入院した先は「自由なんて無い」「檻の中」といった穿ったイメージを持っていたのです。
だからこそ、精神状態が悪くなってしまったときには、無理やりに家族に病院に連れていかれて措置入院の憂き目を負った、ともいえます。自分が抱いていた偏見が、自分の首を絞めたのです。
「どうしても眠れない」「食事がのどを通らない」
このサインが出ていたときにおとなしく受診していたら、任意で入院していたら…….。
もしかしたら統合失調症を発症することなく、別の人生を歩んでいたかもしれない……なんて薄ぼんやりと思うこともあります。
三回、入院してみてわかったのは「措置入院」の率の高さです。任意の方はほとんどおらず、自殺を図ってそのまま運ばれて入院、とか、私みたいに家族に連れてこられて、とか、診察室で暴れてしまって、とか、そういう流れで入院する方がほとんどなのです。
だから「任意入院」のハードルの高さはわかります。でも、本来なら自宅療養でなんとかなるグレーゾーンの方(或いはその家族の方)にこそ読んでいただきたいな、と思ってこの記事を書きます。
万一、レッドゾーン(措置入院)の憂き目にあったときのデメリットも併せて。
措置入院と任意入院の違い
1.任意入院は、入院期間が自分で決められる
病院によって制度の違いはあるかもしれませんが、私がかかっている病院では任意入院の方のみ大体の入院期間を医師との話し合いを基にして決めることが出来ます。ちなみに、措置入院となると、入院期間に自分の意思を介在させる余地などほとんどありません。できるとしたら退院が決まったけど何曜日がご家族の都合がいいかな? くらいのもので。
実際、私も措置入院の時は二回とも三カ月以上入院させられましたが、任意入院の時は当初決めた一か月より短いぐらいの期間(三週間とちょっとぐらい)で退院となりました。縮まることも、勿論あります。
ただ注意したいのは病状が悪ければ医師の采配で任意入院から措置入院に切り替わってしまうこと。そうなると最初に約束した入院期間はあっさり反故にされます。きちんと休養するという意思と態度を保つことが大事です。
2.任意入院は、院内散歩や院外外出の許可が平易に下りる。
措置入院と比べて「平易」「取りやすい」であって、ハードルは高いし、話の持って行き方に注意が必要(看護師に無理強いしない、あくまで許可の権限をもっているのは医師なので、医師にちゃんと許可をとっておく、或いは確認しておく。もし無理だと言われたらあっさり引き下がってこだわりを見せないのがコツ)ですが、措置入院が外出の検討に一週間とるとしたら、任意入院の場合は二、三日くらいの検討期間で結論をだしてくれます。
私の場合は入院した次の日には単独での院内外出(院内散歩)をしていましたし、次の週には外泊の許可をもぎとっていました。措置入院の時は、院内外出は看護師か家族との付き添いが必須で、その権利をもらうのにも一カ月以上かかりました。院外外出、外泊に至っては二カ月かかりました。
3.任意入院は、持ち物の許可、通信の許可がおりやすい
任意入院で一番驚いたのは院内外出の許可が下りた瞬間に携帯電話が使える許可も同時に下りたことでした。
私が電話(通信)に対してそれほどこだわりを見せなかったのも要因の一つかと思いますが……それにしても措置入院の時のテレホンカード方式(一日三回までしかかけることが許されない)と比べると格段の待遇の良さです。
持ち物もお金の管理も自分で出来ると確認されたらほぼ自分の自由にできました。あ、もちろん危険物(刃物、紐類など)の持ち込みは駄目ですよ。念のため。
4.投薬についても自分の意見を反映できやすい
任意ならある程度自分で「この薬より、こちらの薬の方がいいです」とか「やはり昼間も眠たいのでもう少し減薬をしたいです」などの意見を聞いてくれやすいです。
(私が任意入院した目的がほぼほぼ減薬だった、というのも少なからず影響しているとは思いますが)
投薬の際にも「何」という薬を「どれくらい」増やすか、あるいは減らすかをきちんと教えてくれます。ちなみにですが措置入院の時は飲んでいる薬の内容や量は薬袋管理になるまで、一切教えてくれませんでした。今から考えるとあんまりだな、と思います。
というわけで、代表的なメリットを書きだしていきましたが、総じて任意入院の方が「医師からの許可がおりやすい」「こちらの意思を尊重してくれやすい」ということは肌で感じました。裏を返せば、措置入院の時はこちらの意思は基本的に後回しだし、ものすごく自由を制限される、ということでもあります。
措置入院の時は医師が許すまで、場合によっては飲水も、排泄も、ベッドから出れる時間すらも決められてしまいます。恐ろしいです。正直、もう二度と措置入院だけはしたくない……。
つらつらと書いていきましたが、そもそも
「そんな思いまでして入院なんてしたくない」
「任意だって入院なんてごめんだ」
という感想を抱いた方もいるかな、と思います。
まず、念押ししておきたいのが入院は「収容」ではなく「治療」のためにある、ということ。
医師や看護師がつきっきりで自分の容態をみてくれ、必要に応じて投薬や生活の管理をしてくれること。これは入院の大きな利点だと私は思います。
そして重複しますが、病状によっては任意入院から措置入院に切り替わることもあります。
そうならないための心構えも箇条書きで書いておきます。
任意入院から措置入院に切り替わるきっかけと心構え
・入院当初に『病状によっては措置入院になることもあります』『医師の指示に従っていただきます』等の書面にサインを求められますが、これらを拒否しないこと。理性的に話が出来ない人間とみなされて措置入院コースまっしぐらです。心理的抵抗があるのはわかりますが最低の通過儀礼です。
・監視が緩いからと言って自殺を図るのは止めましょう。場所が場所だけに100%助かってしまいますし、措置入院へのレールが敷かれます。
・措置入院の方に「任意だと携帯電話が使えるんだよー」「私はこんな許可が下りたよー」などと安易に自慢はしないように。トラブルの元です。せっかくの許可をとりあげられることにもつながります。
・退院が決まっても、ハイになって言いふらしたりしないように。それで退院が延びた任意入院の方を知っています。
・暴力(しぐさなども含む)暴言は任意入院取り消しの大きな要因です。物を壊す、叩きつける威嚇行為なども含まれます。
・大体の場合において看護師も医師も最初は入院患者が「きちんと冷静に、理性的に行動できる人間か」「我慢できる人間か」「虚言を言わないか」「沈黙を守れるか」を観察している節があるので最初は許可がおりにくくて、或いは信用が無くて当たり前です。任意なのに許可が下り難いと文句を言うのはちょっと待って、二、三日我慢するだけで待遇が違ってきます。信用の貯金(ゲームをしている方なら好感度を貯める、と言ったら伝わりやすいかな)をして踏ん張りましょう。
任意入院についてもっと知りたい方のために、カクヨムという小説投稿サイトで『精神科閉鎖病棟任意入院日記』を書き上げました。宣伝みたいになってしまって恐れ入りますが、もしよかったら読んでみてください。
入院生活の様子(お風呂、食事、物品管理、読書、退院指導etc…)についても描写があるので入院したことがない方でもイメージが掴みやすいと思います。冒頭での看護師の言葉はこのエッセイ(小説)から抜粋しました。
そして最後に。記事の執筆にあたりご協力くださったみなさん、ありがとうございます。
少しでも役立つ記事になっているといいな、と願っております。
【執筆者】
福井真世 さん
【プロフィール】
大学在学中に統合失調症を発症。措置入院2回、任意入院1回を経験しています。
公的機関に就職し婚約するも、職を失い、婚約破棄され、今は障害年金を受給中です。
Twitter:@fukui_mayo
note:https://note.mu/mayoi_cat
カクヨム:https://kakuyomu.jp/users/mayoi_cat
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