「早すぎた復職」がもたらした自殺未遂 私のリワーク失敗記

体験談 統合失調症 自殺未遂 ヤマカワ リワーク

お世話になっております。統合失調症の福祉屋さん、ヤマカワです。

メンヘラ.jpをご覧の皆様には、仕事をされている方、または休職中の方などもいらっしゃるかと思います。

「休職したら職場に戻れなくなるんじゃないか」
「復職って、実際どんな風になるんだろう……」

など、不安に感じる方もいるのではないでしょうか。

実際、「もう復職できないかもしれない、そのまま退職になるかもしれない」という思いでなかなか休職に踏み切れ無い方もいらっしゃると思います。あるいは「やむにやまれず休職したものの復職後のことが心配」という方もいらっしゃると思います。

そんな方に、私が復職したときのエピソードをお伝えできればと思います。

前述の通り、私も統合失調症の診断を受け、休職していた時期がありました。統合失調症を発症し支離滅裂な言動をしていましたが、両親が精神科クリニックに連れて行ってくれ、服薬などをしたおかげで正気を取り戻すことができました。そのあたりの経緯は、過去の私の読者投稿をお読みいただければと思います。

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ある程度妄想がなくなったところで、

「ちょっと辛い時期もあったけど、もう大丈夫!」

と、復職しました。

 

復職当初のようす

復職して最初の頃は職場の方々もとても気を遣ってくれました。業務も以前していたものと同じものにしてくださったり、忙しい時期であるにも関わらず私の仕事まで代わってやってくださったり……この上ない配慮をしてくださいました。定時を過ぎれば「まだ復帰したばかりなんだし、早く上がりなよ」というお声掛けもいただきました。お言葉に甘えながら、少しずつ職場に慣れていったのです。

また、別の部署の先輩たちも「体調良くなった?」「心配したんだぞ」と朗らかに声をかけてくださいました。私も「ご心配、ご迷惑をおかけしました。でもこれからがんばりますね!」という風に笑顔で返事が出来ていたと思います。本当に仕事ができない私を励まして、大切にしてくださったのです。みなさんのこの気持ちに応えなければ、という気持ちも少なからずありました。

気遣ってくれたのは職場だけではありません。家族も私を気遣ってくれました。普段あまり話をしない父から「よく治ってくれた」と言われた時はうれしく思ったものです。

 

問題が深刻になるまで

しかし、意識高く働けたのも束の間でした。春になって仕事が変わり、上司の異動などもあり、環境が変わってしまいます。

今思えば自分の特性だと感じられるのですが、当時から私は新しいことに取り組むのがとても苦手でした。やり方のマニュアルを読んでも、「これでいいのかな?」と自信がなくて。「もしかしたらまた失敗するかもしれない」と不安になって、何もできなくなる。

そして、もっといけないことに、職場の先輩方と会話をすることがとても辛くなっていました。

仕事上必要なことであっても、上司に聞くのにとてもエネルギーを使いました。「こんなことも知らないの?」と思われそうで怖い。「これ知らないで今までどうやっていたの?」とさらりと言われそうで怖い。そんな思いが仕事中ずっと頭の中で駆け巡っていて、小さなコミュニケーションを取ることさえも怖くなってしまいました。雑談のひとつも出来ません。他のみなさんが話をしている中、黙々と仕事をしているフリをしていました。

自分の中で色々聞きたいことを抱え込んでしまい、「これが確認できないから次に進めない」という状態になりました。そんな状態の業務が何件も溜まってしまいます。中途半端に自分の裁量がある仕事だったので、色々なことを同時並行にしているように見せかけて、全部「上司に質問する」段階で止まってしまい、辛くなりました。

 

机についていられなくなる

そんな「職場にいるだけで辛い」状態が長くなり、頻繁にトイレに立つようになりました。個室に座り込んでうつむいてしまう。ここで休んでいるのは5分にしよう、と決めて腕時計を眺める。5分休んだって全然気持ちは変わらず、さっき残したままの仕事が待っている。

いっそ倒れてしまえばいいのに、とよく思いました。トイレに向かって嘔吐しようとしたことも何度もありました。「実は体調が悪くて、吐いてしまって……」と言えば、仕事をしなくて済むような気がしていたのです。

でも、悲しいくらい体は健康でした。一回も吐いたことはないし、食欲もあるし、夜も眠れる。誰がどう見たって「健康」だし、そこで仕事から逃げるのは「甘え」だと、自分でも思っていました。周りも自分も、自分のことを許してくれなかったのです。現在体調不良で苦しまれている方には申し訳ないのですが、病気になりたい、不健康になりたい、逃げる理由がほしいと考えてしまいました。

ある日、いつも通り滞っている仕事をのろのろと進めていた時に、お金関係の計算を間違えていたことがありました。上司に言わなきゃいけない? 言いたくない。怖い。言わないでいると、言わない間がずっと辛いからさっさと言った方が良い。分かってるけどでもこれは無理。死にたい。

強烈な痛みを持った「死にたい」ではなかったけれど、「生きていてもしょうがない」という虚しさはとても重たいものでした。いつも通りトイレへ行くふりをして席を外します。誰ともすれ違わないことを祈りながら、階段を昇っていきました。前々から職場を歩き回っていた時「ここから飛び降りたら死ねるだろうか」とよく考えていた場所へ、のろのろと向かいます。

今やるしかなくない? あそこの窓から飛び降りればいけるでしょ。この時間なら車も止まってないしちゃんと地面に叩きつけられるはず。怖いけど、生きるのだって十分に辛い。死ぬ一瞬の怖さと、生き続ける辛さだったら、どちらが強いのかな。こんなことしたくなかったのにな。家族に申し訳ないかな。でもこのまままた働けなくなっても迷惑だもんな。死ぬしかないよな。

そんな言葉を頭の中で唱えながら、階段を登ります。前々から目をつけていた、誰にも見つからず、しっかりと地面に叩きつけられて、身体を壊すのに十分な高さのある窓まで辿り着けました。

窓を開けて、風が入ってきます。今まで感じたことがないくらい、全身の血が巡っているのを感じました。いわゆる「スリル」なのかもしれない。私は好きじゃないけど、こういうのがクセになっちゃう気持ち、分からないでもないな、なんてね。

サッシに手をかけ、下を見る。遠いところに地面がある。手を離して、鉄棒で前回りをするみたいにすれば、あの地面がきっとものすごい速さで近づいてくる。怖い。絶対に痛い。ちゃんと死ねるか分からない。でも死なないともっと辛い……

葛藤して、その姿勢のまましばらく凍りつきました。あの時顔に触れた風は、自殺一歩手前なんていう大げさなものでは一切なく、あまりにも「普段感じている風」と同じでした。

結局、死ぬ勇気が出ませんでした。足を下ろして窓を締めて鍵をかける。少しうつむきます。
ああ結局またダメだった。仕事の時間を無駄にしただけだった。結局何も進んでない。結局間違えたことは上司に言わなきゃいけない。怖い。辛い。

今だからこそ言葉にできますが、当時はそんな思いを言葉にすることすらできませんでした。誰にも言えないし、日記にも書けないし、ネット上で愚痴を言うこともできませんでした。全部「そんなことしちゃいけない」という思いが強かったように思います。

なお、ミスの件を上司に報告したら「あぁそうか、大丈夫だよ」と全然問題なさそうな感じで許してくれました。杞憂だった、と安堵することはできませんでした。時間をかなり無駄にしてしまったし、次の仕事がまだまだたくさん残っていたから、です。

 

再休職を決意

もう耐えられないと思いました。このままだと本当に死ぬか、また発狂する。

けれどこれも確信じゃなくて、とっても弱い感情でした。「このままだと死ぬと思うけど、でも休職とか申し出るのも辛いな。怖いな。めんどくさいな。死んでもそんときゃそんときかな」くらいの、とてもふわふわした感情でした。

正直に申し上げるならば「さっさと休みたい。他の人に迷惑かかるとか知ったこっちゃない。もう嫌だ。休職してたって少しは手当金とかでるんでしょ?」という黒い、汚い感情もありました。自分でも、嫌な奴だと思います。そうなってしまうのが仕方なくなるくらい辛かったのです。

そんなこんなで通院します。診察を待つ間、「どう伝えたら休職できるだろうか、診断書がもらえるだろうか」ということばかり考えてしいました。

そして診察。もともと入っていなかった予約を前日に入れて相談したので、主治医も少し訝しげな様子でこちらの話を聴いてくださいました。「仕事が手に付かない。職場の窓から飛び降りたくなってしまう。休職したい」ということを伝えると、主治医は少し考えたあと「がんばったもんな、少し休もうか」と言ってくださいました。

私の主治医はその日のうちに診断書を書いてくださいました。一ヶ月の休職を要する、と。こんなにスピーディーに診断書が出る医療機関もあまりないかもしれません。

その後、両親に「また体調が悪くなってきたら休職したい」と伝えます。両親は思いの外すんなり受け入れてくれたように思いました。今思えば、動揺を見せないようにしていたんだろうなと思います。

次の勤務日は休み明けの月曜日でした。上司に診断書を渡し、休職したい旨を申し出ました。上司は少し黙ったあとで「それじゃあ、少し休みましょう」と優しく言ってくださいました。その後「でも、事前に相談してほしかった」と言われました。「休職も二度目になると、復職するのに時間がかかるようになると思う」とも。

理解してくれた。配慮してくれた。そんな職場でさえ、考えていることを打ち明けることができなかったのです。周囲から見れば突然の申し出だったはずです。そんなことに気付かないくらい、自分がどう見えているのか、周りがどう思っているのかについて、冷静になれませんでした。

 

なぜ復職は失敗したのか

結果的に、私の復職は8ヶ月ほどで失敗に終わり、再休職となりました。

どうして続かなかったのか。妄想が消えて突飛な行動がなくなれば社会的に振る舞えるし、働けるんじゃないのか。

自分なりに考えた答えは「根本的な課題が解決されていなかった」ことです。
そもそも最初の統合失調症発症の原因になったことは「仕事のストレス」でした。

では、どうしてそんなに仕事はストレスフルだったのか? 先輩たちに質問できなかったし、しても意味がよく理解できなかったし、どうしたら良いかがわからなかった。怒られるのが怖かった。人にどう思われているのかが気になって仕方なかった。

休職前のそうした問題は、急性期の症状が抜けるまでの短期間で改善してはいませんでした。正直に申し上げれば、それから再休職し何年も経った今でも、仕事をやめて転職した今でも、これらの不安は消えていません。対処の仕方を色々と考えて何とか一日一日を乗り越えていますが、それもいつまで続けられるかわかりません。

 

弱さと強さ

そんなこんなで休職することになったのですが、今振り返ると「自分はある意味で弱く、ある意味で強かったから休職できた」とも思っています。復職に失敗した、という体験だけでなく、休職に成功した、という体験として記憶している部分もあるのです。

もし私がもっと強い人間だったら。あの時会社の窓から飛び降りることもできていたと思うし、その前に森の中で首を吊ろうとした時に完遂できていたとも思うのです。死ぬ怖さに勝てなかった弱さが、結果として生きることに役立ちました。

もし私がもっと弱い人間だったら。「職場に迷惑をかけるから」「上司にバカにされたら、断られたらどうしよう」「クビにされたらどうしよう」という思いで動けなかったと思います。自分を追い詰めてまた発狂していたでしょうし、勢いで命を絶っていたかもしれません。

そこを乗り越えて自分のために動く強さがあったから、今こうして生きて文章を書いていられます。もしも同じような悩みを抱えてらっしゃる人がいて、ほんの少しでも救いになったと思っていただけたなら、これほど嬉しいことはありません。

最後までお読み頂きありがとうございました。

 


【執筆者】
ヤマカワ さん

【プロフィール】
ことばとおんがくがすきなめんへらさん。
社会人一年目で統合が失調。そろそろ良くなって来たかな~というところで弟が自殺。
諸々乗り越えた今では精神保健福祉士として、メンがヘラってるみなさんと楽しく過ごしています。

Twitter:@ymkwlab
ブログ:http://ymkwlab.hatenablog.com/
Youtube:https://www.youtube.com/channel/UCv8OYVFH9Sg2MleK1uEHy-A


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2件のコメント

マチュピチュ 返信

ヤマカワさんはじめまして。
僕はADHDとSADがあるのですが、ヤマカワさんと同じように人に仕事のことで質問することがとてもストレスに感じます。
病気で倒れたら、事故にあってケガをしたら仕事に行かなくてもいいのに、と考えたこともありましたが、悲しいくらいに健康なことも自分と一緒で、ヤマカワさんのつらさが僕にもわかります。
主治医に相談しても「職場が合わないなら辞めるしかない」の一点張りなのですが、辞めたとしても次に仕事が決まるとも思えず、仮に決まったとしても今の状態ではやはり行き詰まり、同じことの繰り返しなんじゃないかと日々不安でいっぱいです。
今も苦しいことに変わりはありませんが、僕と同じような状況にありながらそれを乗り越えた人がいるんだと思うと、少しだけ気分が楽になりました。
ありがとうございます。

返信

いままで、これほど共感できる記事に出会ったことがなくて、驚きとか喜びとかを通り越して泣いてしまいました。
わたしも、一度休職し、半年ほど休んで復職した身です。それから一年と一ヶ月、なんとか仕事を続けてきたのですが、いままさに、しんどい、死にたい、自殺したいという気持ちです。
分からないことが聞けない、怒られるかもしれないから仕事が進まない、そういった具合でどんどん仕事がたまって、どうしようもなくどん詰まりの状況です。焦らず一個一個処理していけばいい、そんな余裕もありません。
根本的な原因解決がなされていないのに復職してしまった、原因はまさにそれでした。周りは優しいのに…。

言葉が拙く申し訳ありません。あまりに状況が同じすぎて、コメントしてしまいました。なにが言いたいかもわからないコメントですが、同じ悩みを持っているのがわたしだけでないと知って、かなり救われました。
ありがとうございました。

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