【取材】実践的「ひきこもり対策」講座 ひきこもり問題から考える家族の在り方

コラム ひきこもり ヌクイ 取材記事

先日、公益社団法人青少年健康センターが主催する「実践的ひきこもり対策講座」に参加させていただきました。

この講座は、精神科医の斎藤環先生が講師となり、ひきこもりの家族や家庭の相談をしたい方などを対象にしている講座です。詳しくはこちらをご覧ください。
【参考リンク:「実践的ひきこもり対策講座」

講座は「理論編」と「家族会」の二つで構成されており、今回は「家族会」に参加させていただきました。

「家族会」とは、問題を抱える当事者の家族などで構成された相互扶助を目的とした団体・団体によって開催される会のことを指します。相互扶助というと聞き慣れないかもしれませんが、同じ悩みを抱えた人たちが集まって相談しあったり、理解を深めるために勉強したりする、相談会・勉強会のような側面もあります。

参加させていただいた家族会は当事者の家族以外にも、ひきこもり問題に関心がある人であれば参加可能とのことで、自ら発言せずともお話を伺えるような会でした。

実際に参加させていただいた感想ですが、「ひきこもり」という観点だけではなく、”親と子のコミュニケーション”という側面からも、学ぶことの多い会合だったと思います。

そのなかで、「ひきこもり」を身近に感じるひとが知っておくべきだと感じたお話について、いくつか抜粋させて頂きます。

 

■「ひきこもり」と「ライフプラン」について

近年話題になっている”ひきこもりの高齢化”という現象に伴い、多くの参加者の方が”ライフプラン”というテーマについて関心があるようでした。ひきこもりが高齢化するということは、その親も高齢化しているということです。

そんな中で

「私たち親が死んだら、ひきこもりである我が子はどう生きていくのか?」

「そのライフプランをどうやって子に伝えるべきか?」

という疑問が多く見受けられました。

しかしこれは年齢に限ったテーマではなく、若年層のひきこもり・ひいては精神疾患者がいる家庭でも話しておくべきだと感じます。

そもそも本来であれば、すべての家庭が話しておくべきテーマなのかもしれません。もちろんすでにしっかり話しているご家庭も少なくないとは思うのですが…。

「ひきこもり対策講座」を通してこのテーマに触れ、私が気付いたのは、ライフプランを話し合う(共有する)ことはひとつの家族としての責任であるということです。その責任は親の責任でも、子の責任でもあります。

私自身、家族とライフプランの話し合いをしたことがありません。私はひきこもりではありませんが、親が思い描いているであろう”普通の生活”は送っていません。親に自分のことを話しませんし、親が何を考えているのかも全くわからないのです。そのせいもあってか、自分には親子の信頼関係というものがあまりないように感じますし、自分の将来や親の未来についての不安が非常に強いです。

ライフプランを話し合うということは、私にとって「親子の信頼関係を築く」手段のひとつになるだろうと思いました。さらに、私が今まで目をそらしていた「やめることのできない自分の人生」「いずれ訪れるであろう家族の死」という強い不安に対抗することもできるかもしれません。

話をひきこもりの問題に戻しますと、ライフプランを話し合うことは安心につながるということです。

印象的だったのは、参加者の方の

「安心してひきこもれる環境を作る」

という言葉と、斎藤環先生の

「不安で人を動かそうとしないでください」

という言葉でした。

 

■安心してひきこもれる環境を作る

例えば斎藤環先生は、大学生の子供が学校に行けずひきこもりになってしまったとき、すぐに「復学」というゴールを目指すべきではないと仰っていました。(※もちろん、ケースバイケースだと思います)

まずは「家庭で元気に過ごせること」。私も主治医に言われたことがありますが、生活もままならない状態でバリバリ仕事をしようったって無理な話です。一時的には働けるかもしれませんが、根本的には何も解決していないのですから。

例えばそれは、仕事が続けられず20年ひきこもっているひとでも同様だと思います。

就労がひきこもりや精神疾患者にとって良い影響を及ぼす場合もありますが、それはすべてに当てはまることではありません。例として、信頼関係がない相手から何度「働け」と言われても、それではほとんど逆効果になってしまうようです。

ひきこもりの問題において「不安で人を動かそうとする」というのは、例えば「私たち親が死んだらあなたはどうするの?」「同い年の〇〇さんは立派に働いているのに……」というような言葉でしょうか。

「不安は人を縛り付ける」、これも斎藤環先生の言葉です。不安を煽ったり焦らせて行動させようとしても、逆に人は不安で動けなくなってしまうのです。

ひきこもり問題において、ライフプランを正しく伝えるということは安心につながります。

今、家庭にどれだけの財産があって、このまま同じ生活をあと何年続けられるのか。そのうえで、何をすればどうライフプランが変わるのか。ちなみに、ライフプランの話し合いについては親子だけで話し合わず、第三者である専門家も交えて話し合うことが必要だと仰っていました。

「不安よりも安心を与える」ことで、親子のコミュニケーションをスムーズにする。親子のコミュニケーションをスムーズにしたうえで、適切な援助をする。「安心してひきこもれる環境」から徐々にステップアップしていくことが重要なのだと感じました。

 

■対等な関係であること

講座に参加しているうちに、「安心してひきこもれる環境」とは、ひきこもりだけに必要な環境ではなく、理想的な”あたたかい家庭”の在り方なのではないか、と感じました。

もちろん、「安心してひきこもれる環境」は前述した「ライフプランを話し合うこと」だけでは構築できません。ライフプランを話し合えるだけの信頼関係があること、信頼関係が築けるだけの理解があること、理解できるだけのコミュニケーションがあること、コミュニケーションが取れるだけの日常会話があること。ほかにもきっとたくさんの要素があって、「安心してひきこもれる環境」や「あたたかい家庭」が完成するのだと思います。

では、そのうちのひとつ、親子の信頼関係はどうやって築けばよいのでしょうか。

効果的なのは、対等な関係になることだといいます。

例えば、親が不安に感じることは子供にも相談してみる。それによって子供は「親も自分と同じように、不安を感じることがある」と気づき、親近感を覚えます。親と子の上下関係のようなコミュニケーションではなく、時には友人のような、一人の人間として付き合える関係が必要なのではないかと感じました。

 

■理解しようとする姿勢

参加者の方は、ひきこもりやひきこもりである自分の子供に対して、少しでも理解したいと考えていらっしゃるように見えました。

例えば、「(子供の行動について)理解できない」というような方もいらっしゃいましたが、講座に参加している時点で、”今はまだ理解できないけど、理解しようとしている”ように見えますよね。実際、そうなんだと思います。なかには我が子の様子を震える声で話しながら、涙を拭っている方もいらっしゃいました。

私は講座に参加しながら、「自分の親がここに参加してくれたら嬉しいなあ」と思いました。

例えすぐに理解してもらえなくても、「私について理解しようとしてくれている」ということに自体に嬉しさを感じます。そしてさらに、私が不安に思っていることを親に相談したり、親が不安に思っていることを私に相談してくれたり、そんな関係になることができたら、今よりもっと落ち着いた精神状態になれるのではないかと思いました。

 

普段、私は当事者の方からのメッセージをいただく立場にいるので、当事者の親御さんの意見はとても貴重な意見です。

私たち(親にとっての)子どもが悩み、苦しんでいるように、私たちの親も悩み、苦しんでいる。もちろん、誰も苦しまないことが一番なのですが、私はそのことがわかって少しうれしく思いました。「親」というものが身近に感じられたからです。

家族会の良いところは「それぞれの苦悩は異なれど、みんなが同じ問題に立ち向かっている」という心強さと前向きさを得られる点だと思います。長く家族会に参加されている方で、問題が良い方向に向かっているとご報告された方もいらっしゃいました。そういった方の声は、今まさに問題に立ち向かっている方にとって大きな希望になるはずです。

さらに今回の「実践的ひきこもり対策講座」の家族会は、斎藤環先生というひきこもり問題のエキスパートが自分の家庭の問題点について回答してくれるわけです。”家庭の悩みを相談する”というのは極めてデリケートな問題ですが、専門家のバックアップが得られるというのはひとつの安心できる要素だと思います。

ひきこもりという問題は、当事者での問題でもあり、親の問題でもある。

そして言うなれば「家族」の問題なのでしょう。

ひきこもり問題、そんな日本の苦悩と真剣に向き合う、そんな場所だと感じました。

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【取材を受けてくださった方】

実践的「ひきこもり」対策講座

【問い合せ】
公益社団法人 青少年健康センター

〒112-0006 東京都文京区小日向4ー5ー8 三軒町ビル102

電話 03-3947-7636 FAX 03-3947-0766 (月~金10:00~17:00)

教材 斎藤環著『社会的ひきこもり~終わらない思春期』(PHP研究所 690円)

 


【執筆者】
ヌクイ

【プロフィール】
メンヘラ.jp副編集長。
Twitter:@sub___jp


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