クラスジャパン・プロジェクトの基礎は「教育機会確保法」

コラム 不登校 わかり手 クラスジャパン

不登校の小中学校に対しネットを通じた学習支援を謳う「クラスジャパン・プロジェクト」が話題となっている。

DeNA、Classiなど名だたる大企業から協賛を受ける一方で、「全ての不登校児を学校に戻す」というミッションが炎上したり、ミッションに対する釈明文が出たり、その釈明文を書いた理事の今井紀明氏の名前がいつの間にか公式サイトから消えたりと、未だに二転三転の様相を見せている。

クラスジャパン・プロジェクトの真意はどこにあるのか。

そのプロジェクトは、本当に不登校当事者にとって良いものなのか。

本シリーズ【特集 クラスジャパン】では、関係者に対する取材を通して、この問題について考えていきたいと思っている。

本シリーズは、クラスジャパン・プロジェクト理事長の中島武氏への取材を記事化したものである。取材に応じて頂いた関係各位に、改めて御礼を申し上げたい。

【特集 クラスジャパン】
・なぜドワンゴは高校を作ったのか 仕掛け人に聞く「N高」設立の経緯
・クラスジャパン・プロジェクトの基は「教育機会確保法」
・クラスジャパン「原田メゾッド」は不登校児童をケアできるか
・クラスジャパン・プロジェクトの目指すもの
・精神科医 斎藤環氏に聞く「クラスジャパン」の問題点

 

通信制小中学校は「法的に不可能」

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通信制高校のブランドチェンジをN高は行った。「全日制高校よりも下」とされてたそれまでの通信制高校の風潮を、N高は払拭してしまったわけですよね。現在N高が発足して2年ほどですが、現在の状況はいかがですか?

中島氏
現在、生徒数が約6500人。説明会とか電話相談もずっと増えてます。で、N高ってのは高等学校だから、当然説明会とか個別相談に来られる方は、中3の保護者、もしくは高校生で転校を考えてる子の保護者、これが圧倒的に多い。ところが、どんどん増えてるのは小学生の親とか、中学1年生の親が増えてくるわけですよ。

高等学校の学校説明会に、小中学校の子供を持った親がやってくる。で、それが何かっていうと、高校に入りたいわけじゃないんですよ。7年後、8年後の話だから。

今、子供たちが不登校なわけですよ。子どもが学校いってない。学校と疎遠になっている。でも、この子どもを将来何とかしたい。このままではだめだな。よしよしするだけではだめだなって親が思ってるわけですよ。将来に結びついていかないな、何かすることないかなっていうので、相談に乗ってほしい。もっと言えば、N高校に入れないんかな、小学生で。小学部、中学部作ってくださいよみたいな、そんな切実な相談がいっぱい出てくるわけです。

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すると、クラスジャパンはN高校の小中学校版として、考えられたってことでしょうか?

中島氏
最初はそうしようと思ってた、思ってたんですが、義務教育だからできないんです。

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それは何でだめなんですか?法律上の問題でしょうか?

中島氏
そう、法律。制度がないから。義務教育には通信制の制度がない。

一応、あるっていえばある。その制度は何かっていうと、戦時中に戦争行かれた人向けの制度(笑)。で、要は尋常小学校いかれてたけども、その人たちが戦地から帰ってきて学ぶことができなかって、そのまま80歳、90歳なられてる。この方々を、もう一度学びたいっていうんであったら、通信制で勉強さそかっていう、唯一の制度がある。

不登校の小中学生の通信教育を考えたとき、最初にじゃあこの制度使わしてくださいって文科省と交渉したわけですね。でもそんなん無理だと。それは全然対象が違うから無理と。不登校の子どもたち、小学校の、中学生の単位学ばすような通信制の教育っていうのはない。要はそれできないって言われたんです。で、できないって言われて、じゃあどうするんですかってゆうたら向こうも困って。文科省も困ってるっていう話ですよね。じゃあ公立で作ってくださいって。私立では作れへんのやったら公立で作ったらいいじゃないですか。いや、それも難しいな。どうするんやっていう話をしたときに、文科省のほうから、今のままでもケアすることはできる。今の制度のままでもね。制度を変えなくてもすることができると。それは何かっていうと、2016年にできた、教育機会確保法

 

教育機会確保法

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教育機会確保法…

中島氏
そう。教育機会確保法っていう制度があんの、この制度がね。これ2016年にできた。これは、超党派の議員立法でできたんですよね。これは何かっていったら、不登校の子どもたちに、学校外での多様な学びの場を提供することを目的とした法律なんですよ。この法律がすばらしいのは何かっていうと、もともと不登校対策ってのは学校復帰を大前提としてたんです。ところがこの法律では、学校外での多様で適切な学習活動の重要性、これが必要だと。不登校児童の無理な通学は、かえって状況を悪化させる懸念がある。だから、子どもたちの休養の必要性を認めたんです。

メンヘラ.jp
クラスジャパン・プロジェクト理事長の中島さんに、不登校児童の休養の必要性について言及していただいてる。ここが今、懸念されてるところだと思うんですね。クラスジャパンは休養してる子どもたちを無理やり勉強を押し付けるんじゃないかと。

中島氏
そうじゃない。この法律で休養の必要性は認められたわけです。そこを踏まえて、国や自治体が子どもの状況を継続的に把握して、子どもとその親に学校外の施設のさまざまな状況の提供をしていくっていうのが、クラスジャパンの基本的な方針。

この教育機会確保法の面白いところ。面白いっていうか、不登校の対策で、大きく文科省が変えたとこ。今まで文科省は「早く学校復帰しなさい」と言ってた。早くしなさいと。でも、この法律ができたことで、学校復帰は前提だけれども、それを急がんでもいいっちゃった。

メンヘラ.jp
すると、クラスジャパンは学校復帰を急がせないという方針を取る?

中島氏
もちろんもちろんもちろん。急がさなくてもいい。この教育機会確保法の考えに基づいた事業をやっていく。

そして教育機会確保法と同時期に、もうひとつ文科省から通知がでた。これは平成17年に出た古い通知なんだけど、改めて再送付された。内容としては

■義務教育制度を前提としつつ、一定の要件を満たした上で、自宅において、民間事業者が提供するIT等を活用した学活動を行った場合は、校長は、指導要録上出席扱いとすること及びその成果を評価に反映することができる。

というもの。つまり自宅にいながら勉強したら、それを出席と認める、成績にも認めるっていうことを、校長サイドでしていいよって言ってる。

こうすることによって、今までの不登校というのは出席にならないから、子どもが自宅にいることが進路につながらんかったわけ。要は内申を重視する高校の受験ができんかったわけよ、不登校の子どもっていうの。それが変わった。

だからクラスジャパンとしては、その教育サービスを子どもたちに提供する側になろうと。ただし、これは民間の教育機関として、受益者負担じゃなくて、学校教育の中で行政サービスとしてあくまでやりましょうと。

民間教育じゃない。義務教育の制度なんやと。だから、小学校、中学校の義務教育の制度の中に、この自宅で学ぶサービスとしてクラスジャパン・プロジェクトを取り入れてもらおうと、まずは。行政サービスとして。で、その行政サービスを実際に運用するのを、われわれが受託しましょうと。

そういう仕組み作りをしましょうと。それが今回のクラスジャパンなんですよ。

メンヘラ.jp
少し気になったんですが、クラスジャパン・プロジェクトはN高のスタッフなどは関わってらっしゃるのでしょうか。N高立ち上げ人のうち中島武さん、志倉千代丸さんがクラスジャパン・プロジェクトにお名前を連ねてるので、密接に協働しながら動いていくのかなと思ったのですが。

中島氏
そこは関わらないです。

メンヘラ.jp
あっ、関わらないんですか。じゃあN高的なものを下に広げていくという形ではないんですね

中島氏
N高っていうのは、さっき言ったように、一民間の教育機関です。でもクラスジャパンというのは、学校ではなく仕組み、一種の行政サービスを作るって話なんです。

メンヘラ.jp
するとN高のスタッフさんなんかが関わるというお話ではないんですね。

中島氏
入ってるのは、N高立ち上げ人の私と、N高理事でカドカワ・ドワンゴで理事やってる志倉さん。だから、一番最初私とN高校作ろうよって言ったこの2人が、理事として入ってるだけで、N高の人間は特に入ってない。N高の拡張という話ではなく、1から作ってます。

やはり小中学校は義務教育なんで、どちらかとうと、小学校とか中学校の経験のある人間をたくさん入れてやっぱりします。だから、学校復帰っていうのは当然なんですよ、義務教育だから。さっきも言ったように、それがいいとか悪いじゃなくて、今の義務教育制度においての小中学生は、学校で学ぶことっていうのが基本なわけですよ。

メンヘラ.jp
教育機会確保法の考えの基、ネット越しに学ぶ仕組みを「行政サービス」として作っていくのがクラスジャパンであると。なるほど、少しわかってきた気がします。

次回に続く

【特集 クラスジャパン】
・なぜドワンゴは高校を作ったのか 仕掛け人に聞く「N高」設立の経緯
・クラスジャパン・プロジェクトの基は「教育機会確保法」
・クラスジャパン「原田メゾッド」は不登校児童をケアできるか
・クラスジャパン・プロジェクトの目指すもの
・精神科医 斎藤環氏に聞く「クラスジャパン」の問題点


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