メンヘラ的な人との接し方(入門編)
この記事では「メンヘラ的な人が身近にいたときに、どう接するのが良いのか分からない」という人のために接し方のヒントとなるようなことを書きたいと思います。
なお、この記事では接し方について書くので、「メンヘラ」とは「メンタルヘルスの問題ゆえに、人間関係に困難を抱えている人」ということにしておきます。そのため、メンタルヘルスの問題を網羅的に扱っているわけではなく偏りがあることをご承知ください。
自己紹介とこの記事を書くに至った経緯
僕がなぜこの記事を書くのかを説明します。
僕は「サークルクラッシュ同好会」という団体を2012年から運営してきました(今は代表を退いています)。その団体が人間関係をテーマにしていたので、リアル/ネットを問わず、人間関係的な生きづらさを抱えた人と接することがどんどん集まってきました。そういう人たちはメンタルヘルスに問題を抱えていることも多いように思います。
そして僕自身、そういう人たちと接する中でメンタルヘルスの問題に興味を持つようになりました。一時期は臨床心理士を目指していたこともあり、今でも臨床心理や精神医学についての本はよく読みます。
現在では外部の人が出入りできるシェアハウスを「生きづらい人の居場所」を作る活動の一環として運営していますが、そこでもメンヘラ的な人と接する機会は多く(例えば、心療内科に行っている人とよく接します)、臨床心理、特にカウンセリング的な知識は活きているように思います。そういった知識と経験を元に、メンヘラ的な人との接し方のヒントについて以下で書いていこうと思います。
そもそも、周囲の人はメンヘラ的な人なのか?
とはいえ、周囲の人がメンヘラ的な人なのかはすぐには分からないこともあるでしょう。それがわかるのは、学校や職場などで出会った人と親しくなってみたら、重い悩みを打ち明けられただとか、そういう時ではないでしょうか。
僕も、初見でメンタルヘルスに問題を抱えているのかどうかが分かることはなかなかありません。初対面のうちは心配をさせないためにできるだけ健康そうに振舞うなどということもよくある話です。そういう人は一見普通の人としか思えない、それどころか普通よりも更にまともな人に見えることすらあるわけです。
メンヘラ的な人かを見分けようとする前に守るべき原則
だから、急いで強調しておくと、相手がメンヘラ的な人であろうとなかろうと、守れるならば守った方が良い基本的な原則があるということです*1。
ここでは俗に「うつ」と呼ばれているものを例にとって説明します。ここでの「うつ」とは医学的な病名というよりも、世間で「うつ」と言われているもの全般を指します。
うつを巡る俗説:「頑張れって言うな」「うつは甘え」?
俗に「うつの人に『頑張れ』と言ってはいけない」と言われています。また、「『うつは甘え』と言う人はうつへの理解がない」ということもよく言われます。なぜそのように言われるのでしょうか。
それは、うつに陥る人の一定の層が「真面目すぎる」性格と言われているからです。真面目すぎる性格の人が何らかの仕事を任せられると、そのプレッシャーに押しつぶされそうになりながらも、無理に頑張ることになりがちです。そんな状態の人に「もっと頑張れ」と言うのは酷なことでしょう。そして、その人が身体的にも精神的にも調子を崩して「休みたい」となっているのに「甘えるな」と言うのは最悪です。
ただし、うつに陥る人の中にもそういうある種の「厳しさ」が効果的に機能する人はいます。例えば、尊敬している人からの「頑張れ」という言葉が良い意味での励ましになることなんかもあるでしょう。だから、「『頑張れ』と言ってはいけない」というのは基本的な原則ってわけでもないのです(ちなみに僕は「頑張れ」の代わりに「頑張ってるね」と、相手のこれまでの頑張りを認める意味合いを込めた言い方をすることがあります)。
うつの例から一般化すると「強制」が問題
結局のところ、「頑張れ」や「うつは甘え」は休息という選択肢を強制的に奪う可能性があるから問題なのです。つまり、身近な人がメンヘラ的な人かどうかを見分ける前に守るべき基本的な原則は、相手にプレッシャーを与えるような、強制的な言い方をしないことだと僕は思います。これはできるだけ守った方が良い原則だと思いますし、特に周囲の人間の精神的な健康を気遣いたい人にはオススメします。
***
改めて、周囲の人がメンヘラ的な人かを見分けるポイント
さて、それでは周囲の人がメンヘラ的な人なのかどうかを見分けるいくつかのポイントを書きます。
※これはあくまで僕のイメージ的な経験則でしかありません。鵜呑みにはせず、人を見る際の一種のモノサシだと考えてください。また、これらのポイントを確かめようとする行為そのものが相手を傷つけてしまう可能性がありますので、こちらから何もしなくても分かる情報のみを用いて見分けるのが穏当だと思います。そして、メンヘラ的な人を見分けたら心の中だけで留めておきましょう。くれぐれも誰かに「あなたはこういう特徴があるからメンヘラだ」と告げるのはやめましょう。それは人を傷つける行為です。
①他への攻撃性
何かしら・誰かしらに対する顕著な攻撃性は、メンヘラ的な心性と関連しているように思います。
イメージとしては
・SNSなどで誰かを攻撃する書き込みを頻繁にする
・よく悪口や陰口を言う
・他人のことを強く責めてコントロールしようとする
・「敵か味方か」で人間関係を見る
といったところでしょうか。
②自己への厳しさ
次に、自分に対する強い厳しさも、メンヘラ的な心性と関連しているように思います。
イメージとしては
・過剰に自己を卑下する
・自分の性格や容姿を嫌悪する(要するに「自分のことが好きではない」)
・過度に自傷的な行為が見られる
・客観的に見てよくできていることについても「自分はできない」と評価している
といったところでしょうか。
また、その派生として、自己を蔑ろにしてまで他人を立てる傾向がある人もいるように思います。
・他人に対して過剰な気遣いをすることでエネルギーを消耗している
・自己主張ができないために何かを頼まれたり何かに誘われたりすると断れない
・親切を受けること(ご飯を奢られるなど)を過剰に嫌がる
といったイメージです。
③距離感
三つ目に、対人関係における距離感も、メンヘラ的な心性と関連しているように思います。
まず距離感が近すぎるイメージとして、
・知り合ったばかりなのにいきなり自分の話をしてきたり根掘り葉掘り聞いてきたり
・仲も良くないのに頻繁にメッセージを送ってくる
・他人に過剰に好意を示す(あるいは服装や仕草や言動で性的な雰囲気を感じさせる)
・他人の身体をよく触る
といったものが挙げられます。
次に距離感が遠すぎるイメージとして、
・仲良いはずの人ともずっと敬語で喋っている
・他の人が喋っている中、じっと黙っていることがとても多い
・一人ぼっちになっていることがとても多い
といったものが挙げられるでしょうか。中には「仲良くなると逆に急激に距離が近くなる」人も一定数いるように思います。
④強い依存
最後に、何かしらの物質や人間関係への過度な依存も、メンヘラ的な心性と関連しているように思います。
依存対象としてよく見るのは、アルコール、ニコチン、カフェイン、薬物、過食、ダイエット、ギャンブル、買い物、自傷行為、SNS、ゲーム、人間関係、セックス、恋愛、などです。
以上4つを挙げましたが、完全に健康という人はそうはいませんから、多くの人が部分的に当てはまるのではないかと思います。だから、メンヘラ的な人と言ってもあなたと同じ人間ですし、ひどい扱いをしていいわけではありません。
また、その人を取り巻く環境との相性が悪く、「メンヘラ」という"状態"になっている人もいるかと思います。だから、改善すべきは周囲の環境の方かもしれません。それらを踏まえた上で次に、メンヘラ的だとあなたが判断した人との接し方のヒントを以下に書きます。
メンヘラ的な人との接し方1:自分に余裕がないなら距離を置く
まず、自分に精神的な余裕がなく、しかもメンヘラ的だとあなたが判断した人の近くにいる必要があるというわけでもないのであれば、その人とは距離を置きながら接した方が良いかもしれません。
余裕がない状態でメンヘラ的な人と接しても、結局傷ついてしまったり傷つけてしまったりということになりがちです。それはお互いにとって良いことではないでしょう。
ちなみに「距離を置く」といっても、完全に接しないということは難しいですし、変に避けるとそれはそれであなた自身の罪悪感に繋がったり、相手を傷つけたりということになってしまいます。
そこで、カドが立たないように距離を置けるスキルが必要になってきます。プライベートな誘いや自己開示をあまりしない、何かに誘われても別の用事や誘いがあるなどと言ってある程度断る、あまりに断りにくい状況でもできるだけ二人きりにはならない、などでしょうか。
しかし、こういった「自然な距離の置き方」もまた自分に余裕や経験がなければできないことでしょう。うまく距離を置くことに自信があなたにないならばそこまで無理にがんばって距離を取らない方がいいでしょう。そして、仕事が一緒だとかで頻繁に近くにいる必要がある場合もなかなか距離を置くことができないことでしょう。
メンヘラ的な人との接し方2:距離が近づいた場合は「自分のできることしかしない」
それでは、距離を置くことができないときにはどう接するのがよいのでしょうか。先ほど述べたように、余裕がない状態においてはメンヘラ的な人と距離が近づくと、傷ついてしまったり傷つけてしまったりということになりがちです。
また、相手にプライベートなことを自己開示されて初めて相手のことをメンヘラ的な人だと判断することもあるでしょう。自己開示をされて親密になったのにすぐさま距離を置くと相手を傷つけてしまう可能性が高いです。そこであなた自身に余裕があろうがなかろうがオススメできる接し方があります。
それは、一言で言えば「自分のできることしかしない」ということです。
相手に何かを求められたときに、自分の仕事で精いっぱいだったら断るのもまた大事です。相手の重い話を聞いたときに、変に共感しすぎて自分がしんどくなってしまったら元も子もありません。相手の言動であなたがどうしようもなく傷ついたり怒ったりしてしまうならば、あなたはその人からいったん距離を置いた方がいいでしょう。
それでも自分の中で線引きして、相手の求めていることを「これ以上はできないけど、ここまでなら自分もできる」という範囲でやるのは良いことです*2。
そこで、「積極的にメンヘラ的な人と関わっていく必要がある人」(具体的にはなんらかの支援者や友人・恋人関係、家族関係など)へのヒントを次回は書きたいと思います。今回は「メンヘラ的な人が身近にいたときに、どう接するのが良いのか分からない」という人のための記事でした。
*1:別の話ですが例を挙げると、現代日本においては同性愛者を揶揄するような言動は控えるべきだと思われます。なぜなら、あなたの目の前にいる人が同性愛者である可能性が普通にあるからです。その場合、揶揄することによって同性愛者の当事者が嫌な思いをすることが考えられます(また、今のご時世、同性愛者ではない人でも不快に思う人はいることでしょう)。
*2:しかし、「自分のできること」の範囲を自分で理解するのはなかなか難しいことです。人との距離が近づいてくるとどうしても自分のできる範囲のことが分からなくなり、過剰に相手におせっかいしてしまったり、逆に一気に突き放してしまったりということが起こってしまいます。これは精神分析家や臨床心理士のような専門家にすらあります。治療を受けに来たクライエントが専門家であるセラピストに対して強い感情(プラスのものもマイナスのものも)を向けることがあります。これはクライエントの人生の中の他の場面(親との関係など)における感情がセラピストに対して再現されていると想定されていることから「転移」と呼ばれています。同様に、セラピストの方もクライエントに対して強い感情をどうしても抱いてしまうことがあり、それを「逆転移」と言います。それらの感情を処理するためにも、精神分析家は先輩の分析家から精神分析を受けるという伝統があります(訓練分析と言うこともあります)また、臨床心理士は自分の受け持っているクライエントについて、先輩の心理士に話してアドバイスを受けることがあります(スーパーヴィジョンと言います)。単純化して言えば、精神分析家や臨床心理士は逆転移の感情をうまく処理するために特殊な訓練を受けているわけです。
【執筆者】
ホリィ・セン さん
【プロフィール】
三角関係で人間関係壊れ/壊しちゃった人はインタビューしたいのでご連絡ください プロフ→http://twpf.jp/holysen オープンシェアハウス@sakurasou_kyotoの代表やってます カウンセリングしてる→http://bit.ly/2qfTNWx サークルクラッシュ同好会/社会学/ディベート
twitter : @holysen
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