「病みかわいい」が生まれるまで メンヘラとKawaii文化
「メンヘラってかわいいじゃないですか~」
原宿で「病みかわいい」について調査をしている中でそう言われたことがある。この言葉はそれまでに持っていた「メンヘラ」に対するイメージを揺るがすものだった。
次の画像を見て欲しい。

https://tokyo.cawaii.media/tokyo-cawaii/39926
これは「病みかわいい」と呼ばれるファッショントレンドのイメージがイラスト化されたものである。「かわいい」が語られる際に、「メンヘラ」が語られることが——あるいはその逆も——あるが、その結びつきはもとより存在していたものではない。ある時点で「発明」されたものである。
しかし、その両者は、なぜ、またどのようにして結びついたのだろうか。そしてその結びつきは何を引き起こしたのだろうか。「メンヘラとかわいい」と題したこの記事ではその問いを解き明かして行く。
記事は二つに分かれている。一つ目の本記事、
「病みかわいい」が生まれるまで メンヘラとKawaii文化
では原宿発祥のかわいい文化が発展して行く中で、どのようにして「病みかわいい」が生まれ、メンヘラが参照されたか見ていく。またその登場が「メンヘラ文化」に与えた影響についても軽く触れる。
続く、二つ目の記事、
「リスカバングル事件」から考えるメンヘラのファッション化
では、「リスカバングル事件」を取り上げ、病みかわいいがメンヘラ文化にどのような影響を与えたのかを見ていき、現在までに至るメンヘラのファッション化の中で、メンヘラを取り巻く状況がどのように変わっていったのかを考察する。
少し長い記事となるが最後までお付き合いいただければと思う。
メンヘラと共に語られる「かわいい」は、単純に愛らしい物を見た時に湧き上がる感情を指すわけではなく、ある特定の文化を表している。それは海外においても「kawaii」として人気を集める、原宿発祥のポップカルチャー「かわいい」だ。この記事内ではその文化を「かわいい文化」と呼ぶ。
かわいい文化とは、原宿が若者ファッションを生み出す街として発展して行く中で生まれた様々なトレンドを「かわいい」という言葉でパッケージングしカルチャー化したものだ。その特徴は複数あるが、ここではカウンター性とミックス性を取り上げたい。
カウンター性とは、かわいい文化が海外で人気を集めた所以でもあるのだが、既存の規範からの逸脱を軽やかに行う傾向を表す。その代表例は、今ではかわいい文化を代表するファッションとなった「ゴスロリ」だ。
ゴシック調ファッションとヴィクトリアンファッションという、西洋の伝統的なファッションに存在するドレスコードを軽やかに無視し、独自解釈することでゴスロリは生み出された。
かわいい文化の持つカウンター性は、かわいい文化外の規範に対してだけではなく、かわいい文化内の規範に対しても向けられる。つまり、トレンドが生まれる中で形成される「これが『かわいい』である」という価値基準を否定することで、かわいい文化はアップデートされ、豊かさを増して行く。
そして多くの場合、そのアップデートは別の文化を参照してそのイメージを借用し、新たなイメージを生み出すことで行われる。そのような文化と文化、イメージとイメージを掛け合わせることで、新しいものを生み出して行く傾向が、二つ目の特徴、ミックス性である。
その代表例は「キモかわいい」だ。「キモい」と「かわいい」という真逆のイメージを絶妙なバランス感覚で混ぜ合わせることで、キモいのにかわいい、キモいからかわいい、というような新たな境地を切り開いた。
ただし、どのような掛け合わせであったとしても、最終的には「かわいい」に全て回収されるということは注意しなければならないだろう。
さて、このように、単なる愛らしさだけではない何者かを掛け合わせる手法によって生み出された「かわいい」トレンド群には名前がある。それが「アンチかわいい」だ。
本記事で参照する「病みかわいい」も、その「アンチかわいい」の中の一ジャンルとして存在する。「病みかわいい」はその名の通り、「病み」と「かわいい」が掛け合わされたものではあるが、突然生まれた訳ではなく、その背景にはいくつかのトレンドがある。

https://shop-list.com/women/acdcrag/ko-908-u/
一つ目は「グロかわいい」だ。病みかわいいによく見られるイメージに絆創膏、ドクロ、ガスマスク、流血した傷口などがあるが、似たイメージは「グロかわいい」の中にも存在していた。ただ、「怖かわいい」と大きく違うのはその色合いで、傷口や血が全てパステルカラーで表現することで差別化が図られている。

ttps://www.lafary.net/culture/8892/
また、パステルな色合いには「フェアリー系」の影響があるとも言われる。
フェアリー系はユニコーン、リボン、キャンディ、そしてキキララ、セーラームーンなどのアニメキャラクターなどのイメージが用いられるファッションスタイルだ。そしてそれらのイメージをパステルカラーで色彩的に取りまとめることで、メルヘンちっくな印象を生み出している。
「病みかわいい」にはそのパステルな色彩感覚に加え「魔法少女」といったイメージが用いられがちなことも考えると、フェアリー系の影響は強くあると言える。

http://www.fumi23.com/sorena/beauty/4203
そして、病みかわいいを語る際に必ず登場する「ゆめかわいい」というジャンルもある。
ゆめかわいいはファッションモデルのamoが生み出した「かわいい」で、元より多くの人気を集めていたが、ゆめかわバンド「ストロベリー症候群」の苺りなはむが「メルヘン+病み=ゆめかわいい」と定義したことで加速度的に広がっていった。
苺りなはむによる定義を鑑みる「病みかわいい」と「ゆめかわいい」の区別はなにかという疑問が生じる。それも当然で、「病みかわいい」は「ゆめかわいい」が発展して行く流れの中で傍流的に生まれたという背景があるからだ。そのため両者の区別はひどく曖昧で、最終的には個々人の印象に委ねることになる。しかし、あえて分けるとすれば、「ゆめかわいい」の中の「病み」要素の比重を重くしたものを特に「病みかわいい」と言うことができるだろう。
まとめると、フェアリー系とグロかわいい、二つのかわいいの影響を受けてまず生まれたのが「ゆめかわいい」である。その際に、両者へのカウンターとしてミックスされたのが「病み」の要素であり、そしてその「病み」要素が濃いものが「病みかわいい」と呼ばれている。
しかし、原宿のショップ店員たちにこれらの言葉を駆使して調査を行った際、イマイチ意思の疎通がうまくいかず落ち込んでしまったという経験が著者にはある。その時、miliklimの店員に言われたことは印象的であった。
「私たちは私たちがかわいいと思うものを着ているだけで、そういう名前は外の人が勝手につけてるだけなんですよね」。
さて、ここまで「かわいい」文化について言及してきたが「メンヘラ」という言葉はついぞ出てこなかった。出てきたのはあくまで「病み」である。しかし上でまだ述べていないことがある。「ゆめかわいい」の中で、「病みかわいい」というジャンルが生まれたきっかけについてだ。そのきっかけとは、江崎びす子によるキャラクター「メンヘラチャン」の登場である。

https://www.ttrinity.jp/product/2125954
「メンヘラチャン」は江崎びす子がpixivで連載中の漫画「リスカ変身サブカル✡メンヘラ」に登場するキャラクターだ。カッターナイフで手首を切ることで正義のヒロインに変身することができるという設定を持っている。
「ゆめかわいい」がファッションモデルのamoや、アイドルの苺りなはむを通じて広がっていったように、メンヘラチャンは「病みかわいい」のファッションアイコンとして、作者の江崎ビスコとともに大変な人気を集めている。
江崎によればメンヘラチャンは「病みかわいい」をテーマとしたキャラクターを作る際に、「病み」と「メンヘラ」に通ずるものを感じ生み出されたのだという。つまりここで初めて、直接的に「かわいい」と「メンヘラ」はミックスされたのである。
このメンヘラチャンの登場は当たり前のことながら、「メンヘラ」と「かわいい」のつながりを直接的なものとした。その影響に関しては次の記事で詳しく述べるが、ここで特に注目しておきたいのは、メンヘラチャンの登場によりメンヘラであるかないかの判断基準において外面イメージの影響が強くなったという点である。
ここで外面イメージとは見た目や行為といった視覚可能な外見面での特徴を指し、逆に内面イメージとは視覚不能の精神面での特徴を指す。どういうことか。次の画像を見て欲しい。

https://www.amazon.co.jp/%E3%83%A1%E3%83%B3%E3%83%98%E3%83%A9%E3%81%A1%E3%82%83%E3%82%93-%E4%B8%8A-%E7%90%B4%E8%91%89%E3%81%A8%E3%81%93/dp/4781608248
これは、江崎びす子によって生み出されたキャラクターと奇しくも同名の、琴葉とこにによる漫画「メンヘラちゃん」の主人公メンヘラちゃんである。「メンヘラちゃん」は2008年からweb上で連載されたのち出版された。
このキャラクターが示す通り、ゼロ年代のメンヘラの外見イメージは、黒髪ロング、黒目がち、服薬といった外面イメージであった。
またそれ以上にメンヘラちゃんを特徴づけていたのは、死にたがり、人と接するのが苦手といった、メンヘラあるある的な内面イメージだった。
しかし一方で江崎びす子による「メンヘラチャン」を見ると、そのイメージはまるで正反対である。ピンク色の髪、セーラー服、腕に巻かれた包帯、リストカットといった強烈な外面イメージ。そして作品そのものが「魔法少女」的なテンプレを援用しており、内面が描かれづらいということもあり、内面イメージは希薄化している。
しかし、それも当然で、なぜならば「かわいい文化」の中ではキャラクターがどのような性格なのかということより、一目見て「かわいい」かどうかが重視されるからだ。
このような外見イメージが強調されたメンヘラを「かわいい化されたメンヘラ」と呼ぼう。
「かわいい化されたメンヘラ」は、それまでにメンヘラという言葉を主に用いていたネットユーザーとはまた違った層へと広がっていく。そして、彼らがまたその言葉を用いることで、ネズミ算式にメンヘラという言葉は広く一般に知られるようになる。
だがその中で、メンヘラのイメージの差は、メンヘラの意味にも影響を与え、そしてそのことはメンヘラであるかないかの判断基準にも影響を与えることとなる。その差が最初に顕在化したのが「リスカバングル事件」だ。
今回の記事では、メンヘラと「かわいい」がなぜ結びついたのかを見て行き、別の文化の中にメンヘラが持ち込まれることで生じた印象の差に触れた。次回「リスカバングル事件」から考えるメンヘラのファッション化では、その差が引き起こした問題を「リスカバングル事件」を軸として考察する。では次回。
【関連記事】
メンヘラとは何か 意味、語源、キャラクター化、当事者性など
「リスカバングル事件」から考えるメンヘラのファッション化
【参考】
・原点は東京オリンピック!? Kawaiiカルチャーを生んだ原宿にある3つの要素
・日本のカワイイ文化の特質・来歴とその国際的発信について
・「病みかわいい」とメンヘラの関係
・「ゆめかわいい」はなぜ文化となったのか? メディアを横断して得た市民権
【執筆者】
日和下駄 さん
【プロフィール】
普段は大学生をやったり、演劇をやったりしています。
twitter : @getateg
原宿で「病みかわいい」について調査をしている中でそう言われたことがある。この言葉はそれまでに持っていた「メンヘラ」に対するイメージを揺るがすものだった。
次の画像を見て欲しい。

https://tokyo.cawaii.media/tokyo-cawaii/39926
これは「病みかわいい」と呼ばれるファッショントレンドのイメージがイラスト化されたものである。「かわいい」が語られる際に、「メンヘラ」が語られることが——あるいはその逆も——あるが、その結びつきはもとより存在していたものではない。ある時点で「発明」されたものである。
しかし、その両者は、なぜ、またどのようにして結びついたのだろうか。そしてその結びつきは何を引き起こしたのだろうか。「メンヘラとかわいい」と題したこの記事ではその問いを解き明かして行く。
記事は二つに分かれている。一つ目の本記事、
「病みかわいい」が生まれるまで メンヘラとKawaii文化
では原宿発祥のかわいい文化が発展して行く中で、どのようにして「病みかわいい」が生まれ、メンヘラが参照されたか見ていく。またその登場が「メンヘラ文化」に与えた影響についても軽く触れる。
続く、二つ目の記事、
「リスカバングル事件」から考えるメンヘラのファッション化
では、「リスカバングル事件」を取り上げ、病みかわいいがメンヘラ文化にどのような影響を与えたのかを見ていき、現在までに至るメンヘラのファッション化の中で、メンヘラを取り巻く状況がどのように変わっていったのかを考察する。
少し長い記事となるが最後までお付き合いいただければと思う。
かわいい文化
メンヘラと共に語られる「かわいい」は、単純に愛らしい物を見た時に湧き上がる感情を指すわけではなく、ある特定の文化を表している。それは海外においても「kawaii」として人気を集める、原宿発祥のポップカルチャー「かわいい」だ。この記事内ではその文化を「かわいい文化」と呼ぶ。
かわいい文化とは、原宿が若者ファッションを生み出す街として発展して行く中で生まれた様々なトレンドを「かわいい」という言葉でパッケージングしカルチャー化したものだ。その特徴は複数あるが、ここではカウンター性とミックス性を取り上げたい。
カウンター性とは、かわいい文化が海外で人気を集めた所以でもあるのだが、既存の規範からの逸脱を軽やかに行う傾向を表す。その代表例は、今ではかわいい文化を代表するファッションとなった「ゴスロリ」だ。
ゴシック調ファッションとヴィクトリアンファッションという、西洋の伝統的なファッションに存在するドレスコードを軽やかに無視し、独自解釈することでゴスロリは生み出された。
かわいい文化の持つカウンター性は、かわいい文化外の規範に対してだけではなく、かわいい文化内の規範に対しても向けられる。つまり、トレンドが生まれる中で形成される「これが『かわいい』である」という価値基準を否定することで、かわいい文化はアップデートされ、豊かさを増して行く。
そして多くの場合、そのアップデートは別の文化を参照してそのイメージを借用し、新たなイメージを生み出すことで行われる。そのような文化と文化、イメージとイメージを掛け合わせることで、新しいものを生み出して行く傾向が、二つ目の特徴、ミックス性である。
その代表例は「キモかわいい」だ。「キモい」と「かわいい」という真逆のイメージを絶妙なバランス感覚で混ぜ合わせることで、キモいのにかわいい、キモいからかわいい、というような新たな境地を切り開いた。
ただし、どのような掛け合わせであったとしても、最終的には「かわいい」に全て回収されるということは注意しなければならないだろう。
病みかわいい
さて、このように、単なる愛らしさだけではない何者かを掛け合わせる手法によって生み出された「かわいい」トレンド群には名前がある。それが「アンチかわいい」だ。
本記事で参照する「病みかわいい」も、その「アンチかわいい」の中の一ジャンルとして存在する。「病みかわいい」はその名の通り、「病み」と「かわいい」が掛け合わされたものではあるが、突然生まれた訳ではなく、その背景にはいくつかのトレンドがある。

https://shop-list.com/women/acdcrag/ko-908-u/
一つ目は「グロかわいい」だ。病みかわいいによく見られるイメージに絆創膏、ドクロ、ガスマスク、流血した傷口などがあるが、似たイメージは「グロかわいい」の中にも存在していた。ただ、「怖かわいい」と大きく違うのはその色合いで、傷口や血が全てパステルカラーで表現することで差別化が図られている。

ttps://www.lafary.net/culture/8892/
また、パステルな色合いには「フェアリー系」の影響があるとも言われる。
フェアリー系はユニコーン、リボン、キャンディ、そしてキキララ、セーラームーンなどのアニメキャラクターなどのイメージが用いられるファッションスタイルだ。そしてそれらのイメージをパステルカラーで色彩的に取りまとめることで、メルヘンちっくな印象を生み出している。
「病みかわいい」にはそのパステルな色彩感覚に加え「魔法少女」といったイメージが用いられがちなことも考えると、フェアリー系の影響は強くあると言える。

http://www.fumi23.com/sorena/beauty/4203
そして、病みかわいいを語る際に必ず登場する「ゆめかわいい」というジャンルもある。
ゆめかわいいはファッションモデルのamoが生み出した「かわいい」で、元より多くの人気を集めていたが、ゆめかわバンド「ストロベリー症候群」の苺りなはむが「メルヘン+病み=ゆめかわいい」と定義したことで加速度的に広がっていった。
苺りなはむによる定義を鑑みる「病みかわいい」と「ゆめかわいい」の区別はなにかという疑問が生じる。それも当然で、「病みかわいい」は「ゆめかわいい」が発展して行く流れの中で傍流的に生まれたという背景があるからだ。そのため両者の区別はひどく曖昧で、最終的には個々人の印象に委ねることになる。しかし、あえて分けるとすれば、「ゆめかわいい」の中の「病み」要素の比重を重くしたものを特に「病みかわいい」と言うことができるだろう。
まとめると、フェアリー系とグロかわいい、二つのかわいいの影響を受けてまず生まれたのが「ゆめかわいい」である。その際に、両者へのカウンターとしてミックスされたのが「病み」の要素であり、そしてその「病み」要素が濃いものが「病みかわいい」と呼ばれている。
しかし、原宿のショップ店員たちにこれらの言葉を駆使して調査を行った際、イマイチ意思の疎通がうまくいかず落ち込んでしまったという経験が著者にはある。その時、miliklimの店員に言われたことは印象的であった。
「私たちは私たちがかわいいと思うものを着ているだけで、そういう名前は外の人が勝手につけてるだけなんですよね」。
「メンヘラチャン」の登場
さて、ここまで「かわいい」文化について言及してきたが「メンヘラ」という言葉はついぞ出てこなかった。出てきたのはあくまで「病み」である。しかし上でまだ述べていないことがある。「ゆめかわいい」の中で、「病みかわいい」というジャンルが生まれたきっかけについてだ。そのきっかけとは、江崎びす子によるキャラクター「メンヘラチャン」の登場である。

https://www.ttrinity.jp/product/2125954
「メンヘラチャン」は江崎びす子がpixivで連載中の漫画「リスカ変身サブカル✡メンヘラ」に登場するキャラクターだ。カッターナイフで手首を切ることで正義のヒロインに変身することができるという設定を持っている。
「ゆめかわいい」がファッションモデルのamoや、アイドルの苺りなはむを通じて広がっていったように、メンヘラチャンは「病みかわいい」のファッションアイコンとして、作者の江崎ビスコとともに大変な人気を集めている。
江崎によればメンヘラチャンは「病みかわいい」をテーマとしたキャラクターを作る際に、「病み」と「メンヘラ」に通ずるものを感じ生み出されたのだという。つまりここで初めて、直接的に「かわいい」と「メンヘラ」はミックスされたのである。
このメンヘラチャンの登場は当たり前のことながら、「メンヘラ」と「かわいい」のつながりを直接的なものとした。その影響に関しては次の記事で詳しく述べるが、ここで特に注目しておきたいのは、メンヘラチャンの登場によりメンヘラであるかないかの判断基準において外面イメージの影響が強くなったという点である。
ここで外面イメージとは見た目や行為といった視覚可能な外見面での特徴を指し、逆に内面イメージとは視覚不能の精神面での特徴を指す。どういうことか。次の画像を見て欲しい。

https://www.amazon.co.jp/%E3%83%A1%E3%83%B3%E3%83%98%E3%83%A9%E3%81%A1%E3%82%83%E3%82%93-%E4%B8%8A-%E7%90%B4%E8%91%89%E3%81%A8%E3%81%93/dp/4781608248
これは、江崎びす子によって生み出されたキャラクターと奇しくも同名の、琴葉とこにによる漫画「メンヘラちゃん」の主人公メンヘラちゃんである。「メンヘラちゃん」は2008年からweb上で連載されたのち出版された。
このキャラクターが示す通り、ゼロ年代のメンヘラの外見イメージは、黒髪ロング、黒目がち、服薬といった外面イメージであった。
またそれ以上にメンヘラちゃんを特徴づけていたのは、死にたがり、人と接するのが苦手といった、メンヘラあるある的な内面イメージだった。
しかし一方で江崎びす子による「メンヘラチャン」を見ると、そのイメージはまるで正反対である。ピンク色の髪、セーラー服、腕に巻かれた包帯、リストカットといった強烈な外面イメージ。そして作品そのものが「魔法少女」的なテンプレを援用しており、内面が描かれづらいということもあり、内面イメージは希薄化している。
しかし、それも当然で、なぜならば「かわいい文化」の中ではキャラクターがどのような性格なのかということより、一目見て「かわいい」かどうかが重視されるからだ。
このような外見イメージが強調されたメンヘラを「かわいい化されたメンヘラ」と呼ぼう。
「かわいい化されたメンヘラ」は、それまでにメンヘラという言葉を主に用いていたネットユーザーとはまた違った層へと広がっていく。そして、彼らがまたその言葉を用いることで、ネズミ算式にメンヘラという言葉は広く一般に知られるようになる。
だがその中で、メンヘラのイメージの差は、メンヘラの意味にも影響を与え、そしてそのことはメンヘラであるかないかの判断基準にも影響を与えることとなる。その差が最初に顕在化したのが「リスカバングル事件」だ。
今回の記事では、メンヘラと「かわいい」がなぜ結びついたのかを見て行き、別の文化の中にメンヘラが持ち込まれることで生じた印象の差に触れた。次回「リスカバングル事件」から考えるメンヘラのファッション化では、その差が引き起こした問題を「リスカバングル事件」を軸として考察する。では次回。
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メンヘラとは何か 意味、語源、キャラクター化、当事者性など
「リスカバングル事件」から考えるメンヘラのファッション化
【参考】
・原点は東京オリンピック!? Kawaiiカルチャーを生んだ原宿にある3つの要素
・日本のカワイイ文化の特質・来歴とその国際的発信について
・「病みかわいい」とメンヘラの関係
・「ゆめかわいい」はなぜ文化となったのか? メディアを横断して得た市民権
【執筆者】
日和下駄 さん
【プロフィール】
普段は大学生をやったり、演劇をやったりしています。
twitter : @getateg
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