当事者から感じる「半分、青い」への不安、そして期待。

コラム 柚季 流行性耳下腺炎 難聴

「半分だけ聞こえるのって面白い」。

そんな言葉が目を引いて、ドラマを観ようと思った。

観て思った。面白いも何も、それが普通のことだから。5歳から片耳が聞こえない自分にとっては。

流行性耳下腺炎による左耳難聴。簡単に言うと、おたふくかぜによる難聴。
1,000人に一人の割合と言われているみたいだから、決して少なくない。そう、主人公と同じ。

片耳難聴の場合は障がい者として認定はされていない。
でも不便さは感じるので、私は障がい者と健聴者の間のグレーゾーンの存在だと思っている。
自分の対応で不便さを気にしないようにできるけれど、当然、全く気にならない訳ではない。

まず、聞こえないことは時に危うい。左耳に神経を集中しても何も感じない。無が広がる。
左の斜め後ろから近寄られると、直前まで気が付けないのでヒヤッとするときがある。駅のホームやエスカレーターで止まっている時も、左後ろから追い抜かれるときはドキッとする。左側に人がいる時は、無視しないように常に意識は一部左に集中させている。

一番の難問は対人関係で誤解が生じないようにすることだと思う。会話を拒否しているわけでないことははっきりと示す。座席等、聞こえやすい位置にしてもらえるようにお願いしたり、イヤホンや、電話をしている時は周囲の会話が全く聞こえなくなる時があることを、上司身近な同僚には説明している。

結果、仕事においては普段はあまり意識されないと思う。職場内でも知らない人もいる。私は今事務職で、普段は静かなオフィスなので困らないが、職場の飲み会は少ししんどい。

 

大人になった今では、ようやく経験から自分の動きやすいように環境を作れるようになった。けれども子どもはそうはいかない。やっぱり雑談の流れを止めるわけにはいかないし(聞き返すわけにもいかない)、私はいじめられるんじゃないかと怖くて友達には言えなかった。

幼馴染には聞き返して怒られた。なんとなく親には自分の耳のことを聞けないし、気にしていないふりをした。自分だけ盛り上がっている場の話についていけなくて、ただただ愛想笑いしている状況は辛い。事実、大学まで隠していたので中高の友達はそのことを知らないし、親でさえもどちらが悪かったっけと聞かれたこともある。就活でも最終面接で、普通に会話をして、日常生活にさほど支障ないアピールをしてから打ち明けた。履歴書に記載する欄はないから。

親や教師から聞こえないことへのメンタル面での配慮はなかった。(今と違ってネットがない時代であったので仕方ないと思っている。)メンタル面への影響は、正直今、自分でもわからない。私は人の感情を理解し、場の空気を読むことは今でも苦手だ。親しくなれば嫌われる気がして、中学卒業以来、3年以上同じ場所にいたことがない。基本的にネガティブでもある。

聞こえる方がそりゃ間違いなくいい。もちろん聞こえないからこそ感じることはある。カフェに入った際に、友達がさりげなく私が聞こえやすい位置に座ってくれたりすると、ありがたいと思うし、優しさに嬉しくなる。寝る時は聞こえないほうを上にすれば静かに眠れるとか。けどもちろん私にはわからないけど、聞こえるからこそ感じることもあるんだろうと思う。

 

「半分だけ聞こえるのって面白い」

この言葉が独り歩きして、受け入れられない渦中の人に無理やり押し付けられることにならなければいいと思う。

同じ難聴者でも、環境によって感じてきたことは十人十色。この言葉をかけられても、なんの解決にもならない(脚本家の方が片耳難聴で体験の上の言葉なのは知っています)。そういうものと受け入れるしかない。脚本家の人にとっては、発想の原点となったかもしれない(これがレアケースだと思う)。

実際にはデメリットだらけ。私自身は「障害を面白いと個性に思って生きていこう」も違うし(そりゃ無ければ無い方がいい)、「障害があるからダメ」と卑屈になるのも違うと思う(気にならない時もある)。自分の性質や癖みたいなものと思うのが今の心境。

聞くのが苦手なだけ。体力が無くて重たいものを持てないのや、高い所に手が届かないのと同じようなもの。少し気にしておいてもらえば嬉しいことの一つ。そう思っている。

 

これからこのドラマに期待することは、二つだけ。流行性耳下腺炎による難聴の知識が広がり、予防接種で難聴になる人が減ること。耳を大切にする人が増えること。

最後に、親には感謝している。残った耳が悪くならないように小学校小中学年、二週間に一度は土曜日に耳鼻科に行っている(両親とも働きながらよく連れて行ってくれていたと思う)。

けれども、会話をしていて感じる。親にとっては過去のことになっているようだが、私にとっては現在進行形のできごと。

当事者だからドラマが少し怖い。だからこそ最後まで見て、しっかりと考えてみようと思う。


【執筆者】
柚季 さん

【プロフィール】
今年30歳になる予定。生きづらさを抱え、1年間の休学や過食嘔吐(約10年)、ナルコレプシーの診断や経験があり。朝ドラと同じムンプス難聴(左)。


※アイキャッチ画像は公式サイト(https://www.nhk.or.jp/hanbunaoi/)より


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