「いい子」の呪縛から逃れられない 自分を追い詰めてしまった原因は、幼いころの家族との関係にあった

コラム 休学 機能不全家族 ひびきす

第一志望の某国立大学に現役合格。最初の2年間は塾講師のアルバイトに勤しみ、友人と遊び、たまに講義を休むなどしていた、普通の大学生だった。

転機が訪れたのは、大学3年生の時。

ゼミの授業が始まり、毎週発表準備に追われ、文献を読み漁る日々が始まった。それに加え、秋から1年間の海外留学が決まり、留学準備を開始。

今までサボっていた分、何とか巻き返そうと焦っていた私。大学をストレートで卒業できるように、1日の授業をフルで受講し始めた。

塾講師のアルバイトは前年と同じペースで続け、帰宅が23時を回ることもあった。母校の定期演奏会のDVD作成や、バンド活動も同時並行で行なっていた当時の手帳は真っ黒。何もない日は1日もなかった。

 

7月。その日は突然やってきた。母がパートに出かけた後、部屋でぼーっと晴れた空を見ながら、ふと思った。

「あ、この天気なら死ねそう」

そういえば、講義を休みがちになっていた。
そういえば、アルバイトも休みがちになっていた。
そういえば、休日に誰とも会いたくなくなっていた。

いつからだろう、母にバレないように、大学へ行ったふりをして適当に外で時間を潰して、頃合いを見計らって帰宅するようになったのは。

当時所属していたSNSのコミュニティに相談したところ、心療内科への受診を勧められ、1人で受診。「うつ状態」との診断だった。

留学は取り止め。バイトも辞め、大学は休学することになった。

なぜ、私はここまで自分を追いつめてしまったのだろう。
なぜ、家族に相談できなかったのだろう。

それは、幼かった私と家族との関係にあった。

 

「台所は男の入る場所ではない」。これは父の口癖だった。

父は典型的な亭主関白タイプ、母は、そんな父に口答えができずにいた。幼心に母がかわいそうだと思い、父に対して口答えをすると、家から追い出されそうになった。ときには激しい夫婦喧嘩もあり、「離婚しないで」と泣いて止めることもあった。

そんな家庭の中、私は「いい子」で育った。運動こそできなかったものの、勉強はよくできており、クラス委員も積極的にやるような子だった。しかし、テストでいくら良い点数を取っても、両親から褒められることはなかった。

「次も頑張ろうね」。その一言に、いつしか「良い点数を取らなければ、この家にいられないんだ」と思うようになっていたのかもしれない。家へ帰ると、自分の部屋で勉強をするようになった。

父は、母に対しては相変わらず厳しい態度を取っていたが、子どもたちには何でも買ってくれていた。

そんな父は好きだったが、母への態度が許せなかった私は、相変わらず口答えをしては父と喧嘩をしていた。家から追い出されそうになることはなくなったが、一方的に機嫌が悪くなり、誰とも口をきかなくなった。

母は母で、父の態度に苦しんでいた。そして、当時専業主婦だった母の愚痴を聞く相手は私だった。

「こんなにやっているのに、誰も見向きもしてくれないのね」。

どうすることもできないもどかしさを感じた私は、「余計な心配をかけないようにしよう」と、心の中で誓った。

 

その頃から、私は学校での出来事を家庭で話せなくなった。いじめにあっていたことも話せなかった。余計な心配をかけたくなかったから。

「いい子」のまま、中学校へ進学。高校の進路は親に相談せず、自分で決め、報告だけで済ませた。高校へ進学後、一番両親との仲が険悪になり、一切言葉を交わさない日もあった。父の態度は改まらず、母の愚痴も止まらなかった。家へ帰りたくなかった。

でも、自活するほどのお金はなく、「出ていけ」と言われても出ていく場所がなかったため、帰宅後は自室にこもる時間が増えた。そのおかげか、成績は上位をキープすることができ、国立大学へ合格することができた。

まだ、「いい子」でいなければならないと思っていた私は、その行動を一気に加速させることになる。そして、「うつ状態」との診断に至った。

私にとっての「いい子」とは、「世間体のいい子」だった。そして、「世間体」には「家族」も含まれていた。私にとって「家族」とは、一番心を許せない存在になっていたのだ。

「うつ状態」と診断された私を、家族は当初受け入れることができなかったようだ。

特に父は、ものすごい拒否反応を示した。「それは病気じゃない。甘えだ」とも言われた。今でこそようやく理解されているが、私が「うつ状態」で大学を休学していたことは、親戚は誰も知らない。「世間体の問題」らしい。

 

この、「いい子」の呪縛はなかなか解けず、「うつ状態」が寛解した後も、忘れた頃に顔を覗かせ、自分を追い込み、今も苦しい時がある。

「いい子」ではなく、常に自分の気持ちに正直に生きられるようになりたいと、強く思う。


【執筆者】
ひびきす さん

【プロフィール】
20代女/会社員/2度うつ状態の経験あり/音楽好き


【募集】
メンヘラ.jpでは、体験談・エッセイなどの読者投稿を募集しています。
応募はこちらから

この記事のカテゴリ・タグ

コラム 休学 機能不全家族 ひびきす
このエントリーをはてなブックマークに追加

0件のコメント

コメントを残す

返信をキャンセル
返信先コメント