介護職員に向けられる暴力と「公正世界仮説」について

コラム カス子 介護

こんにちは、カス子です。皆様いかがお過ごしですか?私は駄目です。

私は自分自身も精神科にかかりながら、精神科のターミナルケア病棟で介護士として日々働いてお金を稼いでいます。

今回は、そこでのお話を通して「福祉職として」と「公正世界仮説」について考える機会を設けさせていただければと思います。

 

先日、私の職場で患者に対する暴行事件が起こりました。職員が患者さんに手ひどい暴行を加え、大きな跡が残ってしまいました。職場では連日会議が行われ、管理職による防犯カメラのチェックなどが行われます。大きな問題となりました。しかし、このことは家族に伝えられることもなく、病院内でもみ消されてしまいました。

驚くかもしれませんが、正直に言ってしまうとこういうことは珍しいことではありません。何かしらの問題が起こっても病院内でもみ消されてしまうことは多くあることです。それ以前に、「死ぬまで連絡してこないでくれ」と家族に言われてしまうことも多いという現状もあります。

これ自体が凄く大きな問題なのですが、こういった現状を世間に知って欲しいと思ったからこそ今回筆を執らせていただいたという理由もあります。そして皆さんに知っていただき、私自身が助けて欲しいと思ったこと。

皆さんは、逆に、患者から職員に対する暴行はどれほどあると思いますか?

職員から患者に対する暴行は稀ではあります。ですが、職員に対する患者からの暴行は、皆さんの想像を遙かに超えた件数が発生しています。

私は現在の職場で働き始めて半年ほどになりますが、腕は抓られ青あざだらけ、手にはひっかき傷がちりばめられ、思いっきり突き飛ばされ、噛みつかれ、時には顔面につかみかかられて眼鏡が真っ二つに割れたこともありました。

そして今現在、私の左腕は患者にぼこぼこに殴られ上手く動きません。どれもこれも、表沙汰にはなりません。すべてがもみ消され、かろうじて眼鏡は病院からの補助で新しく買えたものの、眼鏡を割った患者の家族すらその事実は未だに知りません。傷などに関しては全て自己責任として処理されます。

 

前置きが長くなり、すみません。皆さんにはあまり馴染みがない終末期入院病棟の中では、こういったことが日々起きており、職員全体が疲弊している状態です。しかし、こういった中で職員に共通して言われている言葉があります。

「でも、この仕事選んでるんだから仕方ないでしょう?」
「でも、仕事が出来ないからそうされるんだよ、自己責任でしょ?」

…おかしな話だと思いませんか?相手は病気なんだし、介護士だったら殴られて当然?居酒屋で働いていたら酔っ払った客に殴られても仕方ないと言えますか?その居酒屋の職員がうまく客をあしらえなかったから自己責任?そんな話がありますか?

ここで、冒頭にも書かせていただいた「世界公正仮説」について解説させていただきたいとおもいます。

簡単に言ってしまうと、「世界は自分がした行いに応じて結果が帰ってくる」と思われてしまうことです。上記した「自己責任でしょう」が、その一例になります。

つまり、「仕事で辛い思いをしているのは、それなりのプロとして振る舞えなかったからだ」というものです。

夕方のニュースを見て暴漢に襲われた女性を「そんな服装でいたから」「そんな時間帯に一人で歩いていたから」と被害者を責める風潮が一部で必ずありますね。「自業自得」というとなじみ深くてわかりやすいかと思います。更に詳しくてわかりやすい解説は心理学ミュージアム様にて解説されていますのでご参照ください(参考リンク:人はなぜ被害者を責めるのか?公正世界仮説がもたらすもの)。

日本のどこでも当たり前に見られる光景ですが、介護の世界では殊更この風潮が強いのでは、と思います。まして、病院内という閉鎖的な空間では。でもこれは絶対に許せないことだと私は思うのです。自身が障害を持ちながら、精神に病を抱えた人達を相手にしていて強く思うのです。

この仮説を支持してしまうと、「そもそも精神疾患なんて根性がなかったから」「入院するのはきちんと治そうとしなかったから」「職員に暴行されるのは精神疾患だから」なんてことまでまかり通ってしまいませんか?そして「職員は暴行されても仕方ない」「声かけが下手だから殴られても自業自得」となってしまいます。こんな、職員も患者様も苦しい世界、そして全ての人が苦しい世界があってたまるか、と私は思うわけです。

 

こんな簡単なことを言うためだけに長々と申し訳ありません。

ただ、この文章を読んだ全ての人に、私は助けて欲しいのです。お願いです、こういった体制を崩す為にも、そして世界がもっと生きやすい世の中になるために、自業自得だなんて言葉にどうか打ち勝って欲しい。

皆さん一人一人が、自業自得なんてことない、と感じるだけでもいいのです。お悩み相談を見ていると、ここの読者の方々には「自分が駄目だから」と自分を責めてしまうような生活をしていることも多いのではと感じます。

しかし、お願いです。自分自身を責めないでください。それが自分の世界を変え、周りを変えていく手がかりになります。一人一人が、自業自得なんて言葉を捨てるだけで、世界は大きく変わると私は信じています。どうか、自分も他人も責めずに。それだけが、私の願いです。

長文を読んでくださりありがとうございました。とりあえず私はまた殴られて眼鏡が歪んだので修理に行こうと思います。

それでは、さようなら。皆さんが自分を責めることなく穏やかに過ごせますように。


【執筆者】
カス子 さん

【プロフィール】
青春をなんとか埋葬中です。仕事が辛い。
Twitter:@gomikasu0202


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5件のコメント

まめ 返信

ほんとうにそうですね。

自他を責めるために用いるエネルギーを状況を分析し対処する行動を起こす勇気に振り向けられるといいのに…って、思います。。。

よしつね 返信

私は現在入院中ですが、私の病院ではそのような噂もなく、看護士さんも怪我などのあとは見られません。ですのでカスコさんの記事を読んで非常に驚いてます。

暴力的な患者さんは、カスコさんが勤めているような病院が専門に扱うようになっているのかなぁ、と想像します。

ただ自分が入院した病院がそういった所だったらと思うとゾッとしますね。

これは興味からですが、出来れば患者の男女比を知りたいです。

カス子 返信

こんにちは、そのような実態のない病院もあると知れて安心しました。ステキな病院を選ばれましたね。
患者の男女比はほぼ半々です。暴力行為に関しても半々といったところです。
入院生活大変かと思いますがどうかご自愛ください。

mynameisSecret 返信

カス子さん以外に隕石でも落ちてしまえ!と思いました。私は、患者間の暴行の被害者です。とても辛いことがあったのに、医師から警察に届けても受理されないと思うよと言われました。ほかの医療従事者にもそうだんしたんですが、ほとんどが「よくあること」「なんで逃げなかったの」といった口調でした。

精神科病棟は社会から閉鎖された空間です。医療従事者達のモラルは風通しの良くない場所でどんどん腐っていくでしょう。だから私は、精神科病棟きらいなんですよね。カス子さんのことは好きですよ。

カス子 返信

こんにちは。患者さま間の暴力行為も稀に見られますが、お辛い経験でしたね。やはり従事者の中の「仕方ない」といった意識を変えていきたい!と強く思いました。私もおかげですっかり精神科病棟アレルギーです笑
お優しい言葉をありがとうございます。

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