「ひきこもり合コン」に参加した話
先日、ひきこもりUXフェス(2018年2月25に開催)にて「ひきこもり合コン!?」がおこなわれた。本稿は、その合コンに参加したという「さとう学」さん(わたしです)へのセルフインタビューを記事化したものである。
わたし
やあ、ひさしぶりに会えて嬉しいよ。今回はよろしく。
さとう学
ひさしぶり。こちらこそよろしく。
わたし
この間、「ひきこもり合コン」に参加したみたいだけど、どうだった?
さとう学
うん、課題も見つかったし緊張もしたけど面白かったよ。
わたし
ところで、学は今まで合コンに参加したことはあるかい?
さとう学
大学で誘われたことはあったね。
わたし
参加したのかい?
さとう学
いや、参加しなかった。主催者がさ、みんなに電話番号を聞いてくるんだ。周りはケータイの番号を書いているのに僕だけ固定電話の番号を書いた。主催者に「何かごめんな」と言われたよ。だから、合コンには出ていない。
わたし
そうか……。それはきつかったな。じゃあ、合コンの経験はないんだね?
さとう学
いや、そのあとのひきこもっていた時期になぜか高校時代のヤンキーが合コンに誘ってくれたんだ。
わたし
へぇ~。でも、何でヤンキーが学を合コンに誘ったんだろう。で、合コンには参加したのかい?
さとう学
ああ、参加したよ。何も経験せずに合コンなんてくだらないと言いたくなかったからね。僕も成長したんだ。何でもいいから外に出たいと思ったし。それがひきこもりとは対極にある合コンだとしてもね。
わたし
すごい。さすがオレらの学だ。行動力があるし勇気があるね。
さとう学
ありがとう。でも、良い思い出ではなかったな。
わたし
どんな合コンだったんだい?
さとう学
男性はオレ以外ほぼヤンキーだった。右も左もヤンキーだらけ。女性はナースが多かったと思う。
わたし
へえー、学がその中にいたというのが想像つかないな。
さとう学
男性がみんな喫煙者でさ。きつかった。僕はタバコの煙が苦手なんだ。ヤンキーたちは、女性には「タバコ吸ってもいいっスか?」と許可を取るんだ。女性たちも「いいですよ」と言うんだ。いや、そこは断れよと。
わたし
女性たちも断るのは難しいんだろうな。
さとう学
まあね。で、ヤンキーたちは女性たちに向かって煙を吐くわけには行かないだろ。僕に向かって左右から煙を浴びせるわけだよ。ぷはぁ~ってさ。僕にもタバコの許可を取れっつーの。断れないけどね。
わたし
それはきついな。
さとう学
ああ、地獄だった。何とか我慢したよ。そして、合コンの場所だった居酒屋を出たんだ。二次会の場所に移るためにね。そのとき、ヤンキーたちが店の前にタバコを投げ捨てたんだ。警備員のじいちゃんに怒られているのに「うぇ~い」とか言っちゃってさ。最悪だよ。
わたし
女性たちはどんな反応だった?
さとう学
どん引きだったと思う。二次会はカラオケだったんだけど、早く帰りたくて仕方がなかった。女性の中には用事ができたと言って先に帰った人もいた。
わたし
ふーむ。学にとって合コンはあまり良い思い出じゃなかったことはよくわかったよ。じゃあ、つぎは今回のひきこもりUXフェスでおこなわれた合コンについて聞きたいな。
わたし
さて、本題に入ろうと思うんだけど、ひきこもり合コンはどうだった?
我々の周りでも話題になっているんだ。
さとう学
はは、たしかにひきこもりと合コンなんて対極にあるものだからね。その気持ちはわかるよ。
わたし
参加者は集まったのかい?
さとう学
実はね、合コンが始まる直前までほとんど集まらなかったんだ。特に女性の参加者がゼロだった。男性は定員に達したんじゃないかな。
わたし
定員は男性10人女性10人だよね。
さとう学
ああ。僕はひきこもりUXフェスの開門時間とともに合コンの申込書にサインしたほどさ。
わたし
すごいやる気じゃないか。でも、女性が集まらなかったから合コンの開催が危ぶまれたみたいだね。
さとう学
そうなんだ。だけど、スタッフたちが頑張ってあちこちで声かけをしてくれたらしい。UXフェスでは同時間帯にいろんなイベントがあるんだ。そこに参加していた女性たちに合コンに参加しませんかと誘ったようなんだ。
わたし
そのおかげで合コンは中止することもなく開催されたんだね。
さとう学
うん、ホッとしたと同時に本当にやるのかという気持ちにもなったよ。
わたし
え? どうしてだい。嬉しくないのかい?
さとう学
嬉しくもあり恥ずかしくもあり。正直、逃げ出したかった。女性に何を話せばいいんだというんだい。話すことなんてないよ。
わたし
まあ、気持ちはわかるけど……。実際、合コンが始まってどうしたんだい。
さとう学
長机をはさんで女性と対面するんだ。三分ごとに男性が席を移動して別の女性と話す。その繰り返しだ。
わたし
主催者は何かゲームを用意していたと聞いたけど?
さとう学
うん、いきなりフリートークは難しいからね。ゲームのルールは簡単なんだ。たとえば、好きな動物をあげるんだ。犬とかね。お互い犬が好きだったら1ポイントが得られる。猫も好きだったらもう1ポイントゲット。そういう風にゲームを進めて、ポイントが多い人が勝つという仕組みさ。
わたし
へえ。面白そうだね。
さとう学
本当にゲームがあって助かったよ。だってさ、ゲームが始まる前、対面の女性と目を合わせられなかったんだ。
わたし
えー! 簡単なあいさつをすればいいじゃないか。どこから来たんですかとか。
さとう学
もう頭の中が真っ白でさ。自分の肩を揉んだり首を回したりして『凝ってる、凝ってる、これかなり凝っているわ』という雰囲気をかもし出していた。
わたし
そんな小芝居いらないから!!!
さとう学
だよね……。それは反省しているよ。
わたし
だけど、ゲームが始まったあとの学の活躍は我々のほうまで聞こえてきたよ。会場全体が盛り上がったみたいだね。
さとう学
まあね。だって、ゲームに勝ったらQUOカードをもらえるというんだぜ。俄然、やる気が出てきたね。だけどね、僕はとんでもない失敗をしてしまったんだ。合コンには魔物が住んでいると思ったものさ。
わたし
女性との会話は盛り上がったのかい?
さとう学
実は、ゲームに夢中になってしまって女性と会話することをすっかり忘れていたんだ。
わたし
おいおい、それはないよ。何のために合コンに参加したんだ。
さとう学
ああ、自分でもそう思うよ。目の前のQUOカードに目がくらんでしまったんだ。ただ、僕があまりにゲームに夢中になっているせいか、その様子が女性たちにウケたみたいだね。
わたし
災い転じてなんとやらだね。
さとう学
うん。そのおかげで当初の緊張感はなくなったけどね。
わたし
結果オーライではあったけど、下手すれば合コンが台無しになったかもしれないな。
さとう学
ああ。今回は上手くいったからよかったけど、女性を置いてけぼりにしかねなかった。それは反省してつぎに活かしたいと思っている。
わたし
他に何か反省点はあるかい?
さとう学
会場が人数のわりに狭かったんだ。声が小さい女性も中にはいる。周りの声に邪魔されて、女性の声がかき消されてしまうんだ。時々、女性の話していることが聞こえないことがあった。もちろん、聞き直すよ。でも、何を言っているのか聞き取れない。そのとき、どうすればいいか困ったな。
わたし
実際、そのときどうしたんだい。
さとう学
何度か聞き直したよ。でも、5回も6回も聞き直すわけにはいかないだろ。
わたし
まあ、そうだろうね。
さとう学
つい、聞こえているふりをしたこともあった。あのとき、どうすればよかったか今でもわからない。
わたし
もしかしたら、男性の中にも声が小さい人がいるかもしれないね。合コン会場を広いところにしたり、人数を制限すれば解決する問題ではあるとは思う。ひきこもり合コンなんて初めての試みだったからね。そこは運営側の反省点ではあるね。
さとう学
あー、あともう一つやばいことがあった。思い出すと奇声をあげたくなるよ!
わたし
どうしたどうした。
さとう学
合コンの中盤あたりから、女性と会話ができたのはよかったんだけど自分ばかり話をしていた。
わたし
いけないな。それはいけない。
さとう学
サッカーでたとえるならば、バルセロナのようにポゼッション率を高めるのは会話には向かない。リアクションサッカーを目指すべきだった。会話支配率を低めたほうがいい。
わたし
えーと、それは女性が話す時間を増やしたほうがいいということだよね。
さとう学
うん。個の力がある場合、たとえばイケメンや石油王なら会話支配率が高めでも大丈夫かもしれないけどね。わかっていてもできなかった。
わたし
経験が大事だよ。学には伸びしろがあると思う。まだまだ伸びる。
さとう学
ありがとう。今回は良い経験をさせてもらったよ。
わたし
ところで、女性とは連絡先を交換したのかい?
さとう学
ああ、連絡先をゲットしたよ。
わたし
おお! さっそくメールを送ったかい?
さとう学
いや、その、どういうメールを送ればいいのかわからなくて今にいたる……。
わたし
なんていうことだ。学、メールを送るまでが合コンだぞ。
さとう学
そうだな……。ただ、改善点が出たということをポジティブにとらえたい。ともかく、今回の合コンを通じていろいろ気づいたことがあったよ。
さとう学
女性と話すことを通じて自分の自信のなさを再認識したんだ。
わたし
ふーむ。
さとう学
これは合コンというより恋愛という広い意味でなんだけど、自分が恋愛していい人間かと思っちゃうんだ。
わたし
でも、彼女ができたことをきっかけにひきこもりから抜け出したという例も聞くよ。
さとう学
もちろん、それはわかる。自分は障害者枠で働いていたときがあったんだ。だけど、収入が低いから自信がなかった。働いていてもその気持ちが消えなかった。コンプレックスにさいなまれた。自分はキモくて金のないおっさんになって、そして死ぬ。まるで延命措置を受けているような気持ちになるんだ。それならよけいな希望なんてもたないほうがいいんじゃないか。
わたし
うーん……。
さとう学
好きな人ができたとしても、その人に好きって言えないつらさがあるんだ。それは収入だけの問題じゃないよ。自分の過去のことも含めてさ。ひきこもり同士のカップルであれば、後者はクリアできるかもしれないけどね。
わたし
上手く就労できたとしても、収入の低さゆえに学みたいに自尊感情のなさに苦しめられることもあるんだね。
さとう学
データとして、所得が低い男性ほど未婚率が高いというのがあるからね。あともう一つ重要な点がある。男女がカップルになる場合、同じ空間を長時間一緒にいるということが大事だと思うんだ。これはひきこもりにかぎらずね。
趣味のサークルでカップルが生まれることってよくあるだろ。それさ。ただ、ひきこもりの男女が一緒にずっと居られる場所ってなかなかないんだと思うんだ。
わたし
居場所の問題か……。
さとう学
メンヘラの場合、病院のデイケアや地域活動支援センターがその役割を担っている。実際、カップルが誕生している例を僕は知っている。もちろん、ひきこもりで精神疾患をもっている人は少なくないけど、そちらのほうにはいかないような気がするんだ。
わたし
なるほど。
さとう学
恋愛と就労と居場所。就労は、収入と言い替えたほうがわかりやすいかな。この三つは密接につながっているような気がする。
わたし
恋愛は恋愛だけと切り離せないというわけか。
さとう学
うん。でも、結局は難しいことを考えていても仕方がないから取りあえず動いてみようと思う。
わたし
行動が認知を変えるというわけか。
さとう学
Exactly.(そのとおりさ)
【執筆者】
さとう学 さん
【プロフィール】
小学生のときに不登校。中学で特殊学級に通うものの普通学級への編入をうながされて再び不登校。定時制高校に進学するが16才で大検(現在の高認)を取得したため、中退してひきこもる。
大学を一年で中退してしばらくひきこもる。障害者枠で働き始めるがパワハラをうけてひきこもる。2016年にひきこもり支援を訴えて埼玉県の入間市議選に立候補。落選して再びひきこもる。
現在、ひきこもり当事者メディア「ひきポス」に記事を書いているか寝ています。
鬱病・パニック障害・心因性頻尿・過敏性腸症候群の四天王に苦しめられています。
Twitter:@buriko555
amazonほしい物リスト:http://amzn.asia/3AepP9x
わたし
やあ、ひさしぶりに会えて嬉しいよ。今回はよろしく。
さとう学
ひさしぶり。こちらこそよろしく。
わたし
この間、「ひきこもり合コン」に参加したみたいだけど、どうだった?
さとう学
うん、課題も見つかったし緊張もしたけど面白かったよ。
わたし
ところで、学は今まで合コンに参加したことはあるかい?
さとう学
大学で誘われたことはあったね。
わたし
参加したのかい?
さとう学
いや、参加しなかった。主催者がさ、みんなに電話番号を聞いてくるんだ。周りはケータイの番号を書いているのに僕だけ固定電話の番号を書いた。主催者に「何かごめんな」と言われたよ。だから、合コンには出ていない。
わたし
そうか……。それはきつかったな。じゃあ、合コンの経験はないんだね?
ひきこもり、ヤンキー合コンに参加する
さとう学
いや、そのあとのひきこもっていた時期になぜか高校時代のヤンキーが合コンに誘ってくれたんだ。
わたし
へぇ~。でも、何でヤンキーが学を合コンに誘ったんだろう。で、合コンには参加したのかい?
さとう学
ああ、参加したよ。何も経験せずに合コンなんてくだらないと言いたくなかったからね。僕も成長したんだ。何でもいいから外に出たいと思ったし。それがひきこもりとは対極にある合コンだとしてもね。
わたし
すごい。さすがオレらの学だ。行動力があるし勇気があるね。
さとう学
ありがとう。でも、良い思い出ではなかったな。
わたし
どんな合コンだったんだい?
さとう学
男性はオレ以外ほぼヤンキーだった。右も左もヤンキーだらけ。女性はナースが多かったと思う。
わたし
へえー、学がその中にいたというのが想像つかないな。
さとう学
男性がみんな喫煙者でさ。きつかった。僕はタバコの煙が苦手なんだ。ヤンキーたちは、女性には「タバコ吸ってもいいっスか?」と許可を取るんだ。女性たちも「いいですよ」と言うんだ。いや、そこは断れよと。
わたし
女性たちも断るのは難しいんだろうな。
さとう学
まあね。で、ヤンキーたちは女性たちに向かって煙を吐くわけには行かないだろ。僕に向かって左右から煙を浴びせるわけだよ。ぷはぁ~ってさ。僕にもタバコの許可を取れっつーの。断れないけどね。
わたし
それはきついな。
さとう学
ああ、地獄だった。何とか我慢したよ。そして、合コンの場所だった居酒屋を出たんだ。二次会の場所に移るためにね。そのとき、ヤンキーたちが店の前にタバコを投げ捨てたんだ。警備員のじいちゃんに怒られているのに「うぇ~い」とか言っちゃってさ。最悪だよ。
わたし
女性たちはどんな反応だった?
さとう学
どん引きだったと思う。二次会はカラオケだったんだけど、早く帰りたくて仕方がなかった。女性の中には用事ができたと言って先に帰った人もいた。
わたし
ふーむ。学にとって合コンはあまり良い思い出じゃなかったことはよくわかったよ。じゃあ、つぎは今回のひきこもりUXフェスでおこなわれた合コンについて聞きたいな。
ひきこもり合コンとはなにか
わたし
さて、本題に入ろうと思うんだけど、ひきこもり合コンはどうだった?
我々の周りでも話題になっているんだ。
さとう学
はは、たしかにひきこもりと合コンなんて対極にあるものだからね。その気持ちはわかるよ。
わたし
参加者は集まったのかい?
さとう学
実はね、合コンが始まる直前までほとんど集まらなかったんだ。特に女性の参加者がゼロだった。男性は定員に達したんじゃないかな。
わたし
定員は男性10人女性10人だよね。
さとう学
ああ。僕はひきこもりUXフェスの開門時間とともに合コンの申込書にサインしたほどさ。
わたし
すごいやる気じゃないか。でも、女性が集まらなかったから合コンの開催が危ぶまれたみたいだね。
さとう学
そうなんだ。だけど、スタッフたちが頑張ってあちこちで声かけをしてくれたらしい。UXフェスでは同時間帯にいろんなイベントがあるんだ。そこに参加していた女性たちに合コンに参加しませんかと誘ったようなんだ。
わたし
そのおかげで合コンは中止することもなく開催されたんだね。
さとう学
うん、ホッとしたと同時に本当にやるのかという気持ちにもなったよ。
わたし
え? どうしてだい。嬉しくないのかい?
さとう学
嬉しくもあり恥ずかしくもあり。正直、逃げ出したかった。女性に何を話せばいいんだというんだい。話すことなんてないよ。
わたし
まあ、気持ちはわかるけど……。実際、合コンが始まってどうしたんだい。
さとう学
長机をはさんで女性と対面するんだ。三分ごとに男性が席を移動して別の女性と話す。その繰り返しだ。
わたし
主催者は何かゲームを用意していたと聞いたけど?
さとう学
うん、いきなりフリートークは難しいからね。ゲームのルールは簡単なんだ。たとえば、好きな動物をあげるんだ。犬とかね。お互い犬が好きだったら1ポイントが得られる。猫も好きだったらもう1ポイントゲット。そういう風にゲームを進めて、ポイントが多い人が勝つという仕組みさ。
わたし
へえ。面白そうだね。
さとう学
本当にゲームがあって助かったよ。だってさ、ゲームが始まる前、対面の女性と目を合わせられなかったんだ。
わたし
えー! 簡単なあいさつをすればいいじゃないか。どこから来たんですかとか。
さとう学
もう頭の中が真っ白でさ。自分の肩を揉んだり首を回したりして『凝ってる、凝ってる、これかなり凝っているわ』という雰囲気をかもし出していた。
わたし
そんな小芝居いらないから!!!
さとう学
だよね……。それは反省しているよ。
わたし
だけど、ゲームが始まったあとの学の活躍は我々のほうまで聞こえてきたよ。会場全体が盛り上がったみたいだね。
さとう学
まあね。だって、ゲームに勝ったらQUOカードをもらえるというんだぜ。俄然、やる気が出てきたね。だけどね、僕はとんでもない失敗をしてしまったんだ。合コンには魔物が住んでいると思ったものさ。
女性との会話は難しい
わたし
女性との会話は盛り上がったのかい?
さとう学
実は、ゲームに夢中になってしまって女性と会話することをすっかり忘れていたんだ。
わたし
おいおい、それはないよ。何のために合コンに参加したんだ。
さとう学
ああ、自分でもそう思うよ。目の前のQUOカードに目がくらんでしまったんだ。ただ、僕があまりにゲームに夢中になっているせいか、その様子が女性たちにウケたみたいだね。
わたし
災い転じてなんとやらだね。
さとう学
うん。そのおかげで当初の緊張感はなくなったけどね。
わたし
結果オーライではあったけど、下手すれば合コンが台無しになったかもしれないな。
さとう学
ああ。今回は上手くいったからよかったけど、女性を置いてけぼりにしかねなかった。それは反省してつぎに活かしたいと思っている。
ひきこもり合コンの反省点
わたし
他に何か反省点はあるかい?
さとう学
会場が人数のわりに狭かったんだ。声が小さい女性も中にはいる。周りの声に邪魔されて、女性の声がかき消されてしまうんだ。時々、女性の話していることが聞こえないことがあった。もちろん、聞き直すよ。でも、何を言っているのか聞き取れない。そのとき、どうすればいいか困ったな。
わたし
実際、そのときどうしたんだい。
さとう学
何度か聞き直したよ。でも、5回も6回も聞き直すわけにはいかないだろ。
わたし
まあ、そうだろうね。
さとう学
つい、聞こえているふりをしたこともあった。あのとき、どうすればよかったか今でもわからない。
わたし
もしかしたら、男性の中にも声が小さい人がいるかもしれないね。合コン会場を広いところにしたり、人数を制限すれば解決する問題ではあるとは思う。ひきこもり合コンなんて初めての試みだったからね。そこは運営側の反省点ではあるね。
さとう学
あー、あともう一つやばいことがあった。思い出すと奇声をあげたくなるよ!
わたし
どうしたどうした。
さとう学
合コンの中盤あたりから、女性と会話ができたのはよかったんだけど自分ばかり話をしていた。
わたし
いけないな。それはいけない。
個人プレーは合コンには向かない
さとう学
サッカーでたとえるならば、バルセロナのようにポゼッション率を高めるのは会話には向かない。リアクションサッカーを目指すべきだった。会話支配率を低めたほうがいい。
わたし
えーと、それは女性が話す時間を増やしたほうがいいということだよね。
さとう学
うん。個の力がある場合、たとえばイケメンや石油王なら会話支配率が高めでも大丈夫かもしれないけどね。わかっていてもできなかった。
わたし
経験が大事だよ。学には伸びしろがあると思う。まだまだ伸びる。
さとう学
ありがとう。今回は良い経験をさせてもらったよ。
わたし
ところで、女性とは連絡先を交換したのかい?
さとう学
ああ、連絡先をゲットしたよ。
わたし
おお! さっそくメールを送ったかい?
さとう学
いや、その、どういうメールを送ればいいのかわからなくて今にいたる……。
わたし
なんていうことだ。学、メールを送るまでが合コンだぞ。
さとう学
そうだな……。ただ、改善点が出たということをポジティブにとらえたい。ともかく、今回の合コンを通じていろいろ気づいたことがあったよ。
ひきこもり合コンを通じて気づいたこと
さとう学
女性と話すことを通じて自分の自信のなさを再認識したんだ。
わたし
ふーむ。
さとう学
これは合コンというより恋愛という広い意味でなんだけど、自分が恋愛していい人間かと思っちゃうんだ。
わたし
でも、彼女ができたことをきっかけにひきこもりから抜け出したという例も聞くよ。
さとう学
もちろん、それはわかる。自分は障害者枠で働いていたときがあったんだ。だけど、収入が低いから自信がなかった。働いていてもその気持ちが消えなかった。コンプレックスにさいなまれた。自分はキモくて金のないおっさんになって、そして死ぬ。まるで延命措置を受けているような気持ちになるんだ。それならよけいな希望なんてもたないほうがいいんじゃないか。
わたし
うーん……。
さとう学
好きな人ができたとしても、その人に好きって言えないつらさがあるんだ。それは収入だけの問題じゃないよ。自分の過去のことも含めてさ。ひきこもり同士のカップルであれば、後者はクリアできるかもしれないけどね。
わたし
上手く就労できたとしても、収入の低さゆえに学みたいに自尊感情のなさに苦しめられることもあるんだね。
さとう学
データとして、所得が低い男性ほど未婚率が高いというのがあるからね。あともう一つ重要な点がある。男女がカップルになる場合、同じ空間を長時間一緒にいるということが大事だと思うんだ。これはひきこもりにかぎらずね。
趣味のサークルでカップルが生まれることってよくあるだろ。それさ。ただ、ひきこもりの男女が一緒にずっと居られる場所ってなかなかないんだと思うんだ。
わたし
居場所の問題か……。
さとう学
メンヘラの場合、病院のデイケアや地域活動支援センターがその役割を担っている。実際、カップルが誕生している例を僕は知っている。もちろん、ひきこもりで精神疾患をもっている人は少なくないけど、そちらのほうにはいかないような気がするんだ。
わたし
なるほど。
さとう学
恋愛と就労と居場所。就労は、収入と言い替えたほうがわかりやすいかな。この三つは密接につながっているような気がする。
わたし
恋愛は恋愛だけと切り離せないというわけか。
さとう学
うん。でも、結局は難しいことを考えていても仕方がないから取りあえず動いてみようと思う。
わたし
行動が認知を変えるというわけか。
さとう学
Exactly.(そのとおりさ)
【執筆者】
さとう学 さん
【プロフィール】
小学生のときに不登校。中学で特殊学級に通うものの普通学級への編入をうながされて再び不登校。定時制高校に進学するが16才で大検(現在の高認)を取得したため、中退してひきこもる。
大学を一年で中退してしばらくひきこもる。障害者枠で働き始めるがパワハラをうけてひきこもる。2016年にひきこもり支援を訴えて埼玉県の入間市議選に立候補。落選して再びひきこもる。
現在、ひきこもり当事者メディア「ひきポス」に記事を書いているか寝ています。
鬱病・パニック障害・心因性頻尿・過敏性腸症候群の四天王に苦しめられています。
Twitter:@buriko555
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