発達障害者が運動が苦手な理由 脳の発達が追いついていないから?という仮説
発達障害の診断を受けている方のなかには、運動(体育)に対して苦手意識を持っている方が多いのではないでしょうか。
今回、なぜ発達障害者は運動が苦手になりがちなのか、ということについて、思うところがあったので、投稿させていただきました。
私は自閉症スペクトラム(アスペルガー)の診断を受けています。
もともと、とくに球技は苦手でした。
しかし、最近、運動が楽しいと思えるようになってきたのです。
それはおそらく、「脳が発達してきた」からではないかと仮説を立てたのです。
発達障害者は運動に苦手意識を持ちがち
自閉症スペクトラムやADHD、ADDなどの発達障害者の方は、運動に苦手意識を持っていることが多いのではないでしょうか。
私自身、とくに球技は苦手でした。
小学校の体力測定で、ソフトボール投げでは、男女合わせても最低レベル。
そのほかの体力には特段劣っていない部分もあるのに、とくに球技など、技巧が必要とされるスポーツは苦手でした。
鉄棒ができなかった、とか、跳び箱が苦手だった、とか、スポーツや体育が苦手だった経験を持つ方も多いのでは?
また、球技など技術が必要なスポーツが苦手でも、走ったり、登山をしたり、持久系の競技が得意だった、というのも発達障害者にありがちだと思います。
実際私も、高校生くらいから自転車を長くやっていました。
でも、サッカーや野球やテニス、バスケットボールといった、花形の球技はいまでもほとんどできません。
これは、なぜなのか。
発達障害者が運動が苦手な理由を考えてみたとき、最近たどり着いた仮説があります。
それが「脳の発達が追いついていないから」ということです。
脳の発達が追いつかない、とはどういうことでしょうか?
ここでは私自身の経験を例に挙げたいと思います。
私は今年(2019年)になってから急に「脳が発達した」と感じる出来事を立て続けに経験しました。
たとえば……
■小説を読んでいて「登場人物の気持ち」が急にわかるようになった。過去に同じ作品を読んだときは、まったくその描写に気がつかなかったのに。
■いままで興味がなかった、道ばたに生えている花の存在に気がつくようになった。
■コントローラーを「ガチャ押し」しているだけだったゲームの操作を覚えることができるようになった。
といったものです。
いままでわからなかったこと。
そもそも存在に気がつかなかったこと。
さまざまな概念が理解できるようになるのは、まさに、「脳が発達した」ということだと思います。
私はいま、30代前半です。
おそらく、定型発達の健常者よりも遅れて、その発達がやってきたのだと思います。
さて、そんな「脳の発達」が、スポーツ・運動でも起こっていることを感じたのです。
私はいま、精神病院に入院しながらこの文章を書いています。
病院では作業療法(OT)というものを行うのですが、そのなかには、スポーツや体操のプログラムもありました。
内容は、年齢や障害の度合いにあわせて誰でもできるような、身体の健康を保つための体操を行うというもの。
……ときくと、NHKの健康体操の番組のようで詰まらなさそう、と感じるかもしれません。
ところが、これが楽しかったのです。
理由は、「自分の筋肉の動きがわかって楽しい」から。
体操で身体を動かすと、筋肉が延びたり縮んだりします。
負荷がかかると、筋肉が疲れてくるのもわかります。
そんな当たり前の感覚を、いままで身体を動かしているとき、理解することはありませんでした。
ところが最近急に、身体を動かすときに、筋肉が動いて、固くなったり柔らかくなったりすることがわかるようになったのです。
筋肉が動く感覚が楽しい。
これはまさに、「脳が発達した」からこそわかるようになったことだと思います。
しかも、「ボールを投げる動作」のときに、身体がどうやって動くのか意識できるようにもなりました。
なぜ野球選手が、あんなに身体をひねるのか、足を大きく踏み出すのかということが、自分の身体でわかるようになったのです。
いままで、見よう見まねではうまく投げられなかったボールが、ずっと上手く投げられるようになりました。
筋肉の動きがわかる。
筋肉を動かすと気持ちよい。
筋肉が動くのが楽しい。
そういう感覚を体験して思ったことがあります。
それが「定型発達の人間(健常者)は、子供の頃からこの感覚があるのではないか?」ということでした。
私は発達障害と診断されています。
発達障害とは、脳のはたらきのなかで、特定の部分の発達が遅いという障害。
ということは、私の場合、「筋肉の動きを感じる」というはたらきの発達が、遅かっただけなのではないか、と思ったのです。
私は最近、ほかのことでも「脳が発達した」ということを感じた、と書きました。
おそらく、私の場合は30代前半という年齢になって、さまざまな分野の脳の発達が、やっと追いついてきたのではないかと思います。
同様に、人によって異なりますが、いままで「運動が苦手」だと思っていた発達障害者の方も、年齢を経て脳の発達が追いついてくるにつれて、運動が楽しいという瞬間が来るのではないかと思うのです。
子供の頃、運動が苦手だった理由。
それはきっと、筋肉の動きを感じる脳の部分の発達が、ほかの子供に比べて遅かったからにほかなりません。
もし、いままた運動をする機会があったら、腕や足やお腹や背中の筋肉が、伸びたり縮んだりする感覚に、注目してみると楽しいかもしれませんよ。
ただ、脳の発達が遅れてやってくるということについて、少し残念にも思います。
私は30代。
ということは肉体的な能力の全盛期はすでに過ぎています。
定型発達の方だったら、20歳前後までの、もっとも肉体能力が高い時期までに、すでに脳が発達している。
もしその状態でいまの脳を使えたら、どんなに楽しかったことか、とも感じるのです。
でもそれを言ってもはじまりません。
これからは、さらに身体を動かすことを楽しみたいと思います。
もちろん、対人関係などの心理的理解や、仕事の方法や、学問など、どの分野でも、これから脳が発達して、さまざまなことがわかってくると思います。
一生のうちに理解できることがらは少ないとはいえ、これから、どんどんものごとがわかってくるのが楽しみです。
いま、人の心がわからなかったり、仕事がテキパキとこなせないという発達障害者の方も、きっと脳の発達が追いついてくる時期がやってきます。
いますぐに絶望せず、そんな未来に希望を抱いて生きるのもよいのでは、そんなふうにも思ってしまうのです。
【執筆者】
広尾蘭 さん
【プロフィール】
自閉症スペクトラムの診断を受けています。 文章を書いたり、何かを作ることが好きです。 江戸時代に生まれたら村一番の鍛冶屋になっていたと思います。
今回、なぜ発達障害者は運動が苦手になりがちなのか、ということについて、思うところがあったので、投稿させていただきました。
私は自閉症スペクトラム(アスペルガー)の診断を受けています。
もともと、とくに球技は苦手でした。
しかし、最近、運動が楽しいと思えるようになってきたのです。
それはおそらく、「脳が発達してきた」からではないかと仮説を立てたのです。
発達障害者は運動に苦手意識を持ちがち
自閉症スペクトラムやADHD、ADDなどの発達障害者の方は、運動に苦手意識を持っていることが多いのではないでしょうか。
私自身、とくに球技は苦手でした。
小学校の体力測定で、ソフトボール投げでは、男女合わせても最低レベル。
そのほかの体力には特段劣っていない部分もあるのに、とくに球技など、技巧が必要とされるスポーツは苦手でした。
鉄棒ができなかった、とか、跳び箱が苦手だった、とか、スポーツや体育が苦手だった経験を持つ方も多いのでは?
また、球技など技術が必要なスポーツが苦手でも、走ったり、登山をしたり、持久系の競技が得意だった、というのも発達障害者にありがちだと思います。
実際私も、高校生くらいから自転車を長くやっていました。
でも、サッカーや野球やテニス、バスケットボールといった、花形の球技はいまでもほとんどできません。
これは、なぜなのか。
発達障害者が運動が苦手な理由を考えてみたとき、最近たどり着いた仮説があります。
それが「脳の発達が追いついていないから」ということです。
脳が発達してきた私
脳の発達が追いつかない、とはどういうことでしょうか?
ここでは私自身の経験を例に挙げたいと思います。
私は今年(2019年)になってから急に「脳が発達した」と感じる出来事を立て続けに経験しました。
たとえば……
■小説を読んでいて「登場人物の気持ち」が急にわかるようになった。過去に同じ作品を読んだときは、まったくその描写に気がつかなかったのに。
■いままで興味がなかった、道ばたに生えている花の存在に気がつくようになった。
■コントローラーを「ガチャ押し」しているだけだったゲームの操作を覚えることができるようになった。
といったものです。
いままでわからなかったこと。
そもそも存在に気がつかなかったこと。
さまざまな概念が理解できるようになるのは、まさに、「脳が発達した」ということだと思います。
私はいま、30代前半です。
おそらく、定型発達の健常者よりも遅れて、その発達がやってきたのだと思います。
さて、そんな「脳の発達」が、スポーツ・運動でも起こっていることを感じたのです。
脳が発達するとスポーツが楽しくなる
私はいま、精神病院に入院しながらこの文章を書いています。
病院では作業療法(OT)というものを行うのですが、そのなかには、スポーツや体操のプログラムもありました。
内容は、年齢や障害の度合いにあわせて誰でもできるような、身体の健康を保つための体操を行うというもの。
……ときくと、NHKの健康体操の番組のようで詰まらなさそう、と感じるかもしれません。
ところが、これが楽しかったのです。
理由は、「自分の筋肉の動きがわかって楽しい」から。
体操で身体を動かすと、筋肉が延びたり縮んだりします。
負荷がかかると、筋肉が疲れてくるのもわかります。
そんな当たり前の感覚を、いままで身体を動かしているとき、理解することはありませんでした。
ところが最近急に、身体を動かすときに、筋肉が動いて、固くなったり柔らかくなったりすることがわかるようになったのです。
筋肉が動く感覚が楽しい。
これはまさに、「脳が発達した」からこそわかるようになったことだと思います。
しかも、「ボールを投げる動作」のときに、身体がどうやって動くのか意識できるようにもなりました。
なぜ野球選手が、あんなに身体をひねるのか、足を大きく踏み出すのかということが、自分の身体でわかるようになったのです。
いままで、見よう見まねではうまく投げられなかったボールが、ずっと上手く投げられるようになりました。
定型発達の人は子供の頃から身体の動きを感じている?
筋肉の動きがわかる。
筋肉を動かすと気持ちよい。
筋肉が動くのが楽しい。
そういう感覚を体験して思ったことがあります。
それが「定型発達の人間(健常者)は、子供の頃からこの感覚があるのではないか?」ということでした。
私は発達障害と診断されています。
発達障害とは、脳のはたらきのなかで、特定の部分の発達が遅いという障害。
ということは、私の場合、「筋肉の動きを感じる」というはたらきの発達が、遅かっただけなのではないか、と思ったのです。
私は最近、ほかのことでも「脳が発達した」ということを感じた、と書きました。
おそらく、私の場合は30代前半という年齢になって、さまざまな分野の脳の発達が、やっと追いついてきたのではないかと思います。
同様に、人によって異なりますが、いままで「運動が苦手」だと思っていた発達障害者の方も、年齢を経て脳の発達が追いついてくるにつれて、運動が楽しいという瞬間が来るのではないかと思うのです。
子供の頃、運動が苦手だった理由。
それはきっと、筋肉の動きを感じる脳の部分の発達が、ほかの子供に比べて遅かったからにほかなりません。
もし、いままた運動をする機会があったら、腕や足やお腹や背中の筋肉が、伸びたり縮んだりする感覚に、注目してみると楽しいかもしれませんよ。
少し残念なこと
ただ、脳の発達が遅れてやってくるということについて、少し残念にも思います。
私は30代。
ということは肉体的な能力の全盛期はすでに過ぎています。
定型発達の方だったら、20歳前後までの、もっとも肉体能力が高い時期までに、すでに脳が発達している。
もしその状態でいまの脳を使えたら、どんなに楽しかったことか、とも感じるのです。
でもそれを言ってもはじまりません。
これからは、さらに身体を動かすことを楽しみたいと思います。
もちろん、対人関係などの心理的理解や、仕事の方法や、学問など、どの分野でも、これから脳が発達して、さまざまなことがわかってくると思います。
一生のうちに理解できることがらは少ないとはいえ、これから、どんどんものごとがわかってくるのが楽しみです。
いま、人の心がわからなかったり、仕事がテキパキとこなせないという発達障害者の方も、きっと脳の発達が追いついてくる時期がやってきます。
いますぐに絶望せず、そんな未来に希望を抱いて生きるのもよいのでは、そんなふうにも思ってしまうのです。
【執筆者】
広尾蘭 さん
【プロフィール】
自閉症スペクトラムの診断を受けています。 文章を書いたり、何かを作ることが好きです。 江戸時代に生まれたら村一番の鍛冶屋になっていたと思います。
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